vol.227(since07/01/07~)

23/12/25

 

国税庁は10月、ホームページに「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」を掲載しました。
そして令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得したこれらの財産は、この通達により評価することとされました。
 

「居住用の区分所有財産」(いわゆる分譲マンション)の評価が変わりました(国税庁)

 

更にこの通達の肝である、「区分所有補正率」の計算明細書をエクセルで掲載しました。必要事項を入力すると補正率が自動計算されるようになっています。

 

とまあ、国税庁にしては大変丁寧な対応に思えるのですが、そもそもなぜこのような通達が新設されたのでしょうか?

 

通達の趣旨には近年の区分所有財産の取引実態等を踏まえ、居住用の区分所有財産の評価方法を定めたものである。」とあります。
区分所有財産」とはいわゆる「マンション」を指し、「居住用の区分所有財産」とは「居住用マンション」を指すことになります。

 

つまり近年の「マンションの取引実態等」(=マンションの取引価額が相続税評価額と乖離している実態)を踏まえ、居住用マンションの評価方法を定めたことになります。

 

典型例がいわゆる「タワーマンション=タワマン」で、タワマン(特に高層階)の「取引価額」と従来の評価方法による「相続税評価額」との乖離が、戸建(家屋及びその敷地)のそれに比べてかなり大きいため、戸建の乖離率(60%程度)に近づけるよう評価方法を定めた、ということです。

 

注意点は、この評価方法の適用を受けるのがタワマンだけではなく、基本的に「居住用マンション」すべてに適用される、ということです。

 

上記パンフレットには、この個別通達の適用がないものとして、


・事業用のテナント物件
・区分所有登記がされていないマンション
・総階数2以下の集合住宅
・いわゆる2世帯住宅
・借地権付分譲マンションの敷地


などが挙げられていますが、逆に言うとこれ以外の「居住用マンション」はすべてこの通達の適用を受けることになります。

 

さて評価方法ですが、計算式はシンプルです。
マンションを家屋(区分所有権)部分と土地(敷地利用権)部分に区分して従来通りそれぞれ評価を行った後、

 

従来の評価方法による評価額×区分所有補正率

 

となっていて、この「区分所有補正率」を計算するのが上記の計算明細書、というわけです。

 

この計算明細書に必要なデータは、マンションの「築年数」「総階数」「所在階」「専有部分の面積」などで、いずれもマンションの登記事項証明書(登記簿謄本)により確認できます。

 

区分所有補正率自体の説明は省きますが、これにより評価額が従来の評価額に比べて①低くなる②変わらない③高くなる、いずれのケースもあり得ます。

 

この区分所有補正率を、当事務所の関与先が所有している居住用マンションでシミュレーションしたところ、

 

①横浜市内のマンション(築20年、7階建のうち6階居住) 1.23
②東京都内のマンション(築25年、9階建のうち2階居住) 1.25

 

となりました。

 

またタワマンを想定して、①のマンションを築5年、33階建のうち33階居住と置き換えてシミュレーションしたところ、その区分所有補正率は1.94となりました。
 

なお上記のとおり、この通達は令和6年1月1日以後相続または贈与により取得した財産に適用されますが、非上場会社が居住用マンションを所有している場合、その自社株式を同日以後に相続・贈与・譲渡したことにより評価する際の純資産価額の計算にも影響するので注意が必要です。

 

 

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vol.226(since07/01/07~)
23/10/31

 

前回の記事で、①暦年贈与②精算課税の有利不利について

 

・贈与開始から7年以内に相続が発生した場合、②精算課税が有利

 

・贈与開始から7年超に相続が発生した場合、有利不利はその贈与財産の総額及び贈与期間による

 

・年110万円以下の贈与の場合、常に②精算課税が有利

 

と書きました。

 

結論は以上なのですが、これに続けて

 

なお①暦年贈与②精算課税を選択するにあたり、他にもいくつか注意点があります。これは次回の記事で述べます。

 

とも書きました。
今回はその「注意点」について列挙します(4以外は、改正前からある規定の再確認です)。

 

1 ①暦年課税において生前贈与加算の規定の適用を受けるのは、「相続又は遺贈により財産を取得した者」が、「3年以内(→改正で、7年以内)」に贈与を受けていた場合に限られます。(過去の記事参照

 

 つまり、「贈与を受けた者」が「相続又は遺贈により財産を取得した者」でなければ、その贈与財産については被相続人の相続財産への加算の適用がないことになります。

 

「相続又は遺贈により財産を取得した者」でない者とは、具体的には

 

 ・そもそも相続人でない者(孫、甥や姪など)
 ・
相続人(配偶者や、子)だが、相続又は遺贈により財産を一切取得しなかった者

 

となります。

 

 上記に関連して、相続開始年に贈与を受けた財産については、その受贈者が「相続又は遺贈により財産を取得した者」かどうかにより、相続税及び贈与税の取り扱いが異なります。

 

相続又は遺贈により財産を取得した者    →相続税の課税価格に加算、贈与税は非課税
相続又は遺贈により財産を取得した者でない者→贈与税の課税価格に算入

 

2 ②精算課税の選択ができるのは、下記の贈与に限定されます(過去の記事参照)。


 贈与者:贈与を行った年の1月1日における年齢が60歳以上
 受贈者:贈与を受けた年の1月1日における年齢が20歳以上(→民法改正により、18歳以上)の推定相続人(子や養子)及び孫

 
 従って、贈与者や受贈者の年齢がこれを満たさない場合は①暦年課税しか適用できません。

 

3 暦年課税生前贈与加算の規定の適用を受けた贈与財産について、各贈与年において贈与税を支払っていた場合、その贈与税額はその受贈者の相続税額から控除されます(贈与税額控除)。
 しかし、仮に控除されるべき贈与税額が相続税額より大きい場合であっても、その贈与税額(=控除不足額)の還付を受けることはできません。

 

 他方②精算課税においても、贈与財産の価額が特別控除額(2500万円)を超えたことにより贈与税額を支払っていた場合、その贈与税額はその適用対象者の相続税額から控除されます。
 しかし①暦年課税の場合と異なり、相続税額から控除しきれない贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
 

4 ②精算課税を選択する場合は、相続時精算課税選択届出書を、その選択をした最初の年の贈与税申告書に添付して提出しなければならない、というのが従来の規定です。

 

 しかし改正で②精算課税にも110万円の基礎控除が創設され、基礎控除以下の金額の贈与の場合は贈与税申告書の提出が不要となりました。

 

 この場合いつから②精算課税を選択したのかわからなくなってしまうため、贈与税申告書の提出が不要な場合であっても、相続時精算課税選択届出書を単独で提出することになりました。

 

 

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vol.225(since07/01/07~)
23/09/04

 

前回の記事で、贈与税の改正について、

 

①暦年贈与

 

 相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前7年以内(改正前:3年以内)に被相続人から暦年贈与を受けていた場合、その財産の価額は相続税の課税価格に加算する(基礎控除部分も加算するが、4~7年以内贈与財産からは計100万円控除)
※「3年以内」から「7年以内」に移行するまでの間に経過措置有

 

②相続時精算課税贈与

 

 基礎控除の創設
(年110万円 各年の贈与財産のうち基礎控除以下の部分は加算されない) 

 

①②いずれも令和6年1月1日以後の贈与から適用

 

と書きました。

 

今回はこの改正によって、制度を選択するにあたりどのような点に注意したらよいのかを、ケーススタディから考えます

 

<ケース1>

2024年から2030年まで7年間、毎年200万円を(推定)相続人に贈与(贈与総額1400万円)

相続開始日 2031年1月1日、とします。

 

そうすると、この贈与が

 ①暦年贈与の場合 200万円×7年-100万円=1300万円を持ち戻す

 ②精算課税の場合 (200万円-110万円)×7年=630万円を持ち戻す

 となり、②精算課税の方が加算する財産が少なくなります。

 つまり、「相続開始前7年間に贈与した場合、②精算課税が有利」となります。

 

しかし、相続はいつ開始するかわかりません。
②精算課税を選択するためには届出が必要ですが、ではいつから②精算課税に切り替えればよいのでしょうか?


その答えに正解はありません。贈与開始から相続開始までの期間が何年間になるか(なったか)は、あくまでも結果論です。次のケースを見てみましょう。

 

<ケース2>

2024年から2043年まで20年間、毎年200万円を(推定)相続人に贈与(贈与総額4000万円)

相続開始日 2044年1月1日、とします。

 

そうすると、この贈与が

 ①暦年贈与の場合 200万円×7年-100万円=1300万円を持ち戻す

 ②精算課税の場合 (200万円-110万円)×20年=1800万円を持ち戻す

 となり、①暦年贈与の方が加算する財産が少なくなります。

 この有利不利の分岐点は、贈与財産の価額及び期間により異なります。従って「相続開始前7年超にわたって贈与した場合、有利不利はその贈与財産の総額及び贈与期間による」となります。

 

しかし贈与財産の価額によっては、贈与期間にかかわらず、常に②精算課税が有利になる場合があります。

 

<ケース3>

2024年から2043年まで20年間、毎年110万円を(推定)相続人に贈与(贈与総額2200万円)

相続開始日 2044年1月1日、とします。

 

そうすると、この贈与が

 ①暦年贈与の場合 110万円×7年-100万円=670万円を持ち戻す

 ②精算課税の場合 (110万円-110万円)×20年=0円(持ち戻しなし)

 となり、②精算課税の場合加算する財産はありません。

 つまり、「年110万円以下の贈与の場合、常に②精算課税が有利」となります。

 

整理すると、

・贈与開始から7年以内に相続が発生した場合、②精算課税が有利

・贈与開始から7年超に相続が発生した場合、有利不利はその贈与財産の総額及び贈与期間による

・年110万円以下の贈与の場合、常に②精算課税が有利

となります。

 

制度の仕組みから上記のように整理してみましたが、実際にどうしたらいいか?というとそう単純な話ではありません。

 

それは

・相続がいつ発生するかわからないこと

・贈与は①暦年贈与が原則であり、②精算課税を適用するには選択が必要で選択後は後戻りができないこと

によります。

 

ここでいう有利不利は、「財産に対する相続税額+贈与税額が多いか少ないか」というものです。そうするとそれは「相続がいつ発生したか」という結果論に帰結します。

 

前回の記事で述べたように、令和5年度改正の趣旨は「多くの資産を保有する「老年世代」から経済活動の中心である「若年世代」へ早期に資産を移転し、経済を活性化させたい」との国の思惑によるものです。
これを踏まえて、今回の改正を、生前贈与及びその方法を検討するきっかけとして考えればよいのではないでしょうか。

 

なお①暦年贈与②精算課税を選択するにあたり、他にもいくつか注意点があります。これは次回の記事で述べます。

 
 
 
 

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vol.224(since07/01/07~)
23/08/08

 

だいぶ前の記事ですが、

 

贈与には①暦年贈与②相続時精算課税贈与の2種類があること

 

①の方法(暦年贈与)では、

 

・贈与税額=(その年に贈与を受けた金額-基礎控除110万円)×10%~55%の累進税率

・基礎控除は年110万円で、贈与税は年単位で計算すること

・相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から暦年贈与を受けていた場合、その財産の価額は相続税の課税価格に加算すること(基礎控除部分も加算)過去の記事を参照

 

②の方法(相続時精算課税贈与)では、

 

・贈与税額=(その年までに贈与を受けた金額の累計額-特別控除2500万円)×20% 

・贈与した財産は、贈与者の相続の時に、相続財産として相続税の課税対象とすること

・この方法により贈与しても相続税は減らないので、基本的には相続「税」対策にはならないこと

 

と書きました。

 

さて当時の記事「一般的には贈与税の申告は①の方法(=暦年贈与)により行われています」と書きましたが、国税庁の報道発表資料によると、令和4年分の贈与税の申告人員は49万人、うち暦年課税45万人、精算課税4万人とされていて、状況はあまり変わっていないようです。

 

課税庁側はこの状況をずっと問題視していました。なぜなら「贈与税は相続税の補完税」という基本的な考え方があるからです。

 

相続税は個人の所有する(していた)財産に課される税ですが、生前贈与により相続財産を減少させれば相続税は減少します。そこで税制では、生前贈与財産に対し贈与税を課すことで「課税の公平」を図っているのです。

 

しかし暦年贈与には「基礎控除110万円」があります。
仮に贈与者が受贈者に対し100万円の暦年贈与を10年間行うと、贈与者の相続財産は
100万円×10年=1000万円減少します。これにより、贈与者は贈与税を支払うことなく相続財産及び相続税を減少させることができます。
課税庁側からするとこの状況は「課税の公平に反する」というわけです。

 

ところが国には、生前贈与を促さなければならない理由があるのです。
それは多くの資産を保有する「老年世代」から経済活動の中心である「若年世代」へ早期に資産を移転し、経済を活性化させたいとの思惑です。


そこで登場したのが相続時精算課税贈与で、贈与時に贈与税を課さない(又は、低率で課す)代わりに相続時に相続財産として持ち戻して相続税として課税する、という方法です(支払った贈与税は相続税額から控除)。
この方法によれば、「課税の公平」という見地からみた場合に暦年贈与で生じるような問題はなく、かつ国の資産移転促進という目的にも合致するのです。

 

しかし上記の通りこれが普及しません。その理由は明らかで、暦年課税には基礎控除があるのに対し、相続時精算課税にはそれがないからです。

 

そこで令和5年度の税制改正で、国税庁は①暦年贈与②相続時精算課税贈与双方に手を加えることにより、生前贈与によって相続税が減少することを防ぎつつ、生前贈与をすること自体は引き続き促す、といった方策に出たのです。

 

前置きが長くなりました。以下改正の概要のみ記載し、テーマである「新制度ではどちらが有利?」は次回以降に記します。①②いずれも令和6年1月1日以後の贈与から適用)

 

①暦年贈与

 

 相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前7年以内(改正前:3年以内)に被相続人から暦年贈与を受けていた場合、その財産の価額は相続税の課税価格に加算する(基礎控除部分も加算するが、4~7年以内贈与財産からは計100万円控除)
※「3年以内」から「7年以内」に移行するまでの間に経過措置有

 

②相続時精算課税贈与

 

 基礎控除の創設
(年110万円 各年の贈与財産のうち基礎控除以下の部分は加算されない) 

 

 

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贈与税:期限後申告書は、何年前まで提出?

vol.217(since07/01/07~)
22/10/14

 

税理士が行う相続税申告業務のうち、主なものに預金調査があります。                       被相続人の預金通帳を相続発生日から遡って7-10年分収集し、金銭の異動を確認するものです。

 

→過去の記事「相続税:預金通帳を捨てないで!」を参照

 

この記事でも書きましたが、被相続人の預金を調査した結果、

 

・子や孫名義の通帳に振り込みを行っていた履歴があり、
・子や孫の通帳にも被相続人からの入金が確認され、                       
・子や孫に聞き取りした結果、被相続人から贈与を受けていたことが判明した
・贈与税の申告はしていない

 

ということがあります。

 

このようなケースで、贈与の日が

 

・相続開始前3年以内の場合、その財産の価格は相続税の課税価格に加算する
暦年贈与過去の記事参照
・その時期にかかわらず、その財産の価格は相続税の課税価格に加算する
相続時精算課税過去の記事参照

 

となりますが、この被相続人の相続税申告書への調整のほかに、子や孫の贈与税の申告は別途必要で、期限後申告書を提出し贈与税を納める必要があります暦年贈与で基礎控除110万円以下の場合は不要)。なお、支払った贈与税は贈与税額控除として相続人が支払う相続税から控除されます。

 

ところで、贈与税の期限後申告書は何年前まで提出しなければならないのでしょうか?

 

これに関しては、相続税法に「税務署長は贈与税の更正決定を贈与税申告書の提出期限から6年を経過する日まですることができる」と定められています。

 

例えば、①平成27年1月1日と②平成28年1月1日に、それそれ200万円ずつ贈与(暦年贈与)していたことを、令和4年9月1日に気付いたとすると、

 

①平成27年分の贈与税申告書の提出期限=平成28年3月15日
→その6年経過日:令和4年3月15日
②平成28年分の贈与税申告書の提出期限=平成29年3月15日
→その6年経過日:令和5年3月15日

 

となり、①については気付いた時点で既に更正決定の期限を過ぎているため、申告書を提出する必要はありません(仮に提出しても受け付けてもらえず、取下書の提出を求められます。また税金を納付しても誤納金として還付の対象となります)。

 

ただし、以下の点に注意が必要です。

 

・税務署長の更正決定の期間制限は原則6年ですが、「偽りその他不正の行為により税を免れた場合は7年」とされています。つまり上記②のように、贈与税の期限後申告書を提出できる状態にもかかわらず故意に提出せず、課税庁が何らかの形でその事実を把握した場合は、更正決定の期間が1年間延長される(→令和6年3月15日)ことになります。

 

・更正決定の期限を徒過してから期限後申告書を提出しても課税庁は受理しませんが、その時点でその財産を被相続人の相続財産に加算して相続税の修正申告書を提出するよう慫慂することがあります(その贈与した財産については贈与は行われておらず、被相続人の貸付金等であるとの意)。相続税の調査をした結果慫慂を行うのであれば理解できますが、取下書を提出した時点では何ら事実関係を確認していないわけですから、これに従う必要はないものと考えます。

 

 

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vol.216(since 07/01/07〜) 

22/08/11

以前の記事「相続税:未分割の場合の特例不適用」で、

申告期限までに未分割の場合、相続税の特例のうち適用できないものがあります。
主なものは、以下の2つです。


① 配偶者の相続税額の軽減

② 小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例


と書きました。そして



分割されていない財産を

・申告書の提出期限から3年以内に遺産を分割し、かつ

分割の日の翌日から4か月以内に、上記①②の特例を適用して相続税額を再計算した更正の請求書を提出する

場合に限り、納め過ぎの税金(=特例を適用しないで計算した相続税額−特例を適用して計算した相続税額)の還付を受けることができます。



ただしこの適用を受けるためには、「申告期限後3年以内の分割見込書」を、当初申告書に添付して提出することが必要です。つまり、後日遺産が分割された際にこれらの特例の適用を受けることを予め申告しておかないといけないのです。


と書きました。

さて、この更正の請求書」はいつまでに提出すればよいのでしょうか?
それは上記の通り分割の日の翌日から4月以内なのですが、これらの規定は①は相続税法、②は租税特別措置法(①の相続税法の読替え規定)に定められています

他方、国税通則法では、

「当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときは、法定申告期限から5年以内に限り更正の請求をすることができる



とされています。
ではこの分割の日の翌日から4月以内法定申告期限から5年以内とは、どちらが優先されるのでしょうか?

まず「国税通則法」と「相続税法」及び「租税特別措置法」は、「一般法」と「特別法」の関係に当たります。
そして「特別法は一般法に優先する」という考え方から、基本的には「相続税法」及び「租税特別措置法」「国税通則法」の規定に優先することになります。
具体例で考えてみましょう。

令和4年  1月  1日  相続開始

令和4年11月  1日    期限内申告を提出申告期限において全部未分割、3年以内の分割見込書を提出)

令和7年10月31日    遺産分割協議成立(全部分割)

上記の場合、更正の請求期限は

令和8年  2月28日  相続税法、租税特別措置法上の更正の請求期限(分割の日の翌日から4月以内)

令和9年11月  1日    国税通則法上の更正の請求期限(法定申告期限から5年以内)


となります。
そうすると、前述の「特別法は一般法に優先する」との考え方から、このケースでは「特別法」である「相続税法」「租税特別措置法」が優先され、①②の提出期限は「令和8年2月28日」となりそうです。

ところが①配偶者の税額軽減については、通達で更正の請求の期限は、『分割が行われた日の翌日から4月を経過する日』と『申告書の提出期限から5年を経過する日』のいずれか遅い日」と明確に記されています。
そうすると上記のケースでは、①配偶者の税額軽減についてはその提出期限は「令和9年11月1日」となります。


他方、②小規模宅地等の特例については通達等においてこのような定めがありません。そうすると②小規模宅地の特例については「特別法は一般法に優先する」との考え方に従うこととなり、上記ケースの提出期限は「令和8年2月28日」と考えられています(ただし①配偶者の税額軽減と同様であるとの考え方もあります)。



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vol.209(since 07/01/07〜) 

21/11/10

相続の遺産分割が完了する前にその相続人が亡くなってしまうことを、一般的に「数次相続」といいます(登記実務上は、相続人が相続登記をする前に死亡することを指す用語とのことです)。
例えば、以下のようなケースです。



・相続関係者:父A、母B、長男C、長女D、長男の妻E、長男の子F

・令和3年1月1日 父A死亡 父Aの相続人は母B、長男C、長女Dの3人です。

・令和3年6月1日 長男C死亡 長男Cの相続人は長男の妻E、長男の子Fの2人です。

・長男C死亡時において、父Aの遺産分割は完了しておらず、父Aの相続税申告書は提出されていないものとします。



この場合、父A、長男Cの相続税申告上の取扱いはそれぞれ以下のようになります。



①父Aの相続税申告(第1次相続)



 納税義務者 母B、長男C(実際は、長男Cの妻E、長男Cの子F)、長女D

 申告期限  令和3年11月1日(母B、長女D)

       令和4年  4月1日(長男Cの妻E、長男Cの子F


長男Cは父Aの遺産分割協議が完了する前に死亡しましたが、死亡により父Aの相続人としての地位を失うわけではありません。長男Cの父Aの相続人としての地位は長男Cの相続人E、Fに継承され、父Aの遺産分割協議には長男Cの相続人としてE、Fが加わることになります。


また相続税の申告期限は「相続の開始があったことを知った日から10月以内」であり、このケースでは父Aの相続税の申告期限は令和3年11月1日となります。
しかし、第1次相続に係る相続人が、相続税申告書の提出期限前にその申告書を提出しないで死亡した場合には、その死亡した者の相続人は、第2次相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に、第1次相続に係る相続税の申告書を提出しなければなりません。
よってこのケースでは、父Aの相続税の申告期限は、長男Cの相続人E、Fに限り、令和4年4月1日(=長男Cの死亡日令和3年6月1日の翌日から10月以内)となります。

つまり数次相続」の状態となった場合、

・第1次相続の遺産分割に、本来相続人ではなかった第2次相続の相続人が参加することになる

・第1次相続の相続税の申告期限は、第1次相続の本来の相続人と第2次相続の相続人とでは異なる



となります。


②長男Cの相続税申告(第2次相続)



 納税義務者 長男Cの妻E、長男Cの子F

 申告期限  令和4年  4月1日



つまりE、Fからすると、Aの相続(第1次相続)及びCの相続(第2次相続)の相続税の申告期限は同日となります。



ところで父Aの遺産分割において、亡長男Cの相続人E、Fが遺産分割協議に参加し亡長男Cに父Aの財産を取得させた場合、その財産は父Aの相続税申告において課税財産とされ、同時に亡長男Cの遺産として、長男Cの相続税申告においても課税財産となります。
つまり亡長男Cに取得させた財産は、父Aの相続(第1次相続)及び長男Cの相続(第2次相続)において、それぞれ課税対象となることになります(もっとも相次相続控除等の規定の適用により、必ずしも同じ財産に2度相続税が課されるとは限りません)。

→カテゴリ:相続&贈与

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vol.208(since 07/01/07〜) 

21/10/07

ここ数回は、相続税に関するテーマで、

単独申告

未分割申告

未分割の場合の特例不適用

一部分割

期限前に相続不動産を売却する場合の注意点

と記事にしましたが、いずれもポイントになってくるのが「相続税の申告期限」です。
相続税の場合、申告期限までに遺産分割協議が完了しているかどうかにより、その申告内容や各人の相続税額が大きく異なります。
また申告期限から一定期間内に受けられる特例があることも前回述べました。

ところで相続税の申告期限は、法令上「相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内」とされています。
つまり「相続の開始があったことを知った日」の捉え方によって、相続税の申告期限が異なることになります。

実務上、「相続の開始があったことを知った日」とは、「自己のために相続の開始があったことを知った日」であり、具体的には

①被相続人の死亡という事実を知りかつ、②自己が被相続人の相続人であること

の双方を知った日、とされています。

自分が相続人となる場面で多いのは親が死亡するケース、次に兄弟が死亡するケースでしょう。
そして親や兄弟が死亡したことを知るのは、一般的には死亡当日であると思われます。
そうすると、「相続の開始があったことを知った日=相続の開始した日(死亡日)」となり、申告期限は「死亡日の翌日から10月以内」とするのが基本的な考え方です(死亡したことを知ったのが死亡後数日程度である場合は、実務上「知った日=死亡日」として申告するのが一般的です)。


しかし、例えば以下のようなケースでは、「知った日」が「死亡日」よりも相当遅れることがあります。

・いわゆる「孤独死」のケース 

被相続人が一人暮らしで自宅で死亡し、死後相当期間を経て発見されるようなケースです。 
このケースではまず「死亡日」自体が特定できないことが多く、警察の死体検案による「推定死亡日(又は、推定死亡期間)」に拠ることになります。
相続税上、このようなケースで「知った日」をいつにするかについて格別の規定はないので、例えば「警察から死体発見の連絡を受けた日」や、「警察が死体検案を行った日」などをもって「知った日」とするものと考えられます。


・相続人以外の者が「遺贈」により取得するケース 



被相続人が遺言書を作成していて、遺言で「相続人でない者(例えば、孫や甥、姪)」に財産を遺贈する旨記されているようなケースです。
このケースで、受遺者(=孫や甥、姪)が「自己のために相続の開始があったことを知った日」は、具体的には①被相続人の死亡という事実を知り、かつ、②自己が被相続人の「受遺者」であること、の双方を知った日となりますが、受遺者が生前に遺言の内容を知らされていない場合、「知った日」は死亡日よりも遅くなる可能性があります。
このケースでは、受遺者が「被相続人が生前に遺言書を作成していたこと」及び「遺言書中に受遺者に対し財産を遺贈する旨記載があること」を、相続人や遺言執行者から通知を受けた日が「知った日」になるものと思われます。


ところで上記のようなケースでは、同じ相続でも相続人によって「知った日」が異なる可能性があることになります。そうすると、一の相続について相続税の申告期限が相続人により異なることとなります。
例えば親が死亡した場合、同居している兄はその死亡を死亡日に知ったが、疎遠である弟は1月後に知った、ということがあり得ます。そうすると理論上、弟の申告期限は兄の申告期限の1月後になります(もっとも「知った日」がいつかについては、納税者の主張が否認された多くの裁決例や判決例があるので、「知った日」と死亡日が異なる場合は客観的に説明することができるよう十分に準備する必要があります)。

なお「知った日」が死亡日と異なる場合であっても、相続財産の評価は相続開始時(=死亡時)の価格によることとされています。

→カテゴリ:相続&贈与

 

 

 

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vol.207(since 07/01/07〜) 

21/09/03

前回は「相続税:一部分割」というテーマで、


ところで遺産分割については、その必要性から「被相続人の財産のうち一部を先行して分割する」という方法を採る場合があります。例えば、

・配偶者の生活資金を確保するため、預金を直ちに分割する必要がある

・相続税の納税資金とするため、不動産を早期に売却する必要がある

といったケースです。

と書きました。

このうち預金の分割は、預金に関する遺産分割協議書を作成し、金融機関で手続を行うことにより相続人が取得することになるので、その取得した相続人について税務上の問題は格別ありません。


これに対して不動産の売却は、取得した相続人の譲渡所得となります。
以下、注意点を挙げましょう。

1 納税資金は「税引き後の金額」で考える 

被相続人の不動産を売却するのは、その不動産を相続により取得した相続人です。
そうすると、その相続人の不動産売却に係る手取り額は



譲渡代金−譲渡費用−譲渡所得税・住民税※

 ※譲渡所得税・住民税=(譲渡代金-取得費-譲渡費用)×20.315%(被相続人の取得日〜相続人の譲渡年の1月1日までの所有期間が5年を超え、かつ特例の適用がない場合)



となります。 

譲渡代金を相続税の納税資金に充てる場合は、税引き後の「手取り額」で考える必要があります。



2 相続税の取得費加算の特例 



相続により財産を取得した人が、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までにその財産を譲渡した場合、支払った相続税のうち一定額をその譲渡所得の金額の計算上「取得費」に加算できるというものです。
申告期限前に売却する場合は当然にこの要件を満たします。多額の相続税を支払うようなケースでは、譲渡所得の圧縮が期待できるので忘れないようにしましょう。



3 共有者間の意思統一

不動産の売却資金を相続税の納税資金とするためには、まず不動産を先行して遺産分割する必要がありますが、この時点ではまだ全体の協議がまとまっていないことが多いです。そうすると、不動産は「とりあえず」法定相続分により、相続人全員が共有で取得することが多くなります。
この共有不動産を売却するためには共有者全員が売買契約書に署名押印することになりますが、相続人間の考え方や生活環境等の違いにより、不動産の売却価格やタイミングなどなかなかまとまらないことがあります。その結果、期限までに売却できなかったり、相場より低い価格で売却してしまったりすることがあり得ます。
不動産を共有で取得、売却する場合は、まず①納税に必要な「手取り額」はいくらなのか②そのためには最低いくらで売却すればよいのか③申告期限までに現金化するためにはいつまでに売却すればよいのか、を予め決めておき、スムースに手続きが進行するよう相続人間で事前に意思統一しておくことが重要です。

→カテゴリ:相続&贈与

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vol.206(since 07/01/07〜) 

21/08/05

前回は「相続税:未分割の場合の特例不適用」というテーマで、


ところで申告期限までに未分割の場合、相続税の特例のうち適用できないものがあります。主なものは、以下の2つです。

として、

① 配偶者の相続税額の軽減

② 小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例

を紹介しました。
そして、これらの特例を適用するためには「申告期限分割要件」があり、

①配偶者が財産を取得する場合には税制上の大きなメリットとなりますが、申告期限までに分割されて配偶者が取得した財産のみに適用されます。 

②平米当たりの評価額が高い宅地等に適用することにより大きな節税メリットが得られますが、申告期限までに分割されていない宅地等には適用されません。

と書きました。

ところで遺産分割については、その必要性から「被相続人の財産のうち一部を先行して分割する」という方法を採る場合があります。

例えば、



・配偶者の生活資金を確保するため、預金を直ちに分割する必要がある

・相続税の納税資金とするため、不動産を早期に売却する必要がある



といったケースです。



このように被相続人の財産の一部を分割した場合、その一部財産は相続税の申告期限までに分割されているが、その他の財産は期限までに未分割である、といったケースがあり得ます。
この場合、上記①②の特例はどのように適用されるのでしょうか?



規定では、上記①②のように「申告期限までに分割されて配偶者が取得した財産のみに適用されます。」「申告期限までに分割されていない宅地等には適用されません。」となっています。
つまり申告期限までにすべての財産が分割されていなくても、一部財産が分割されていれば、その分割された財産には特例の適用がある、ということになります(もっとも小規模宅地の特例の場合、その多くには申告期限所有継続要件があります。この要件を満たす必要がある場合は、分割した財産を申告期限までに売却すると特例の適用はありません)。

相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10月以内」です。相続人は通常、その期限内に遺産分割を完了することを目標に手続きを進めますが、相続人間の調整が難航するなどの理由で申告期限内に分割が間に合わない場合があります。その場合であっても、一部財産について分割に合意しているときは、その一部財産について期限内に分割手続きを完了することにより相続税の上記特例の適用を受けることが可能です。

→カテゴリ:相続&贈与

 

 

 

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vol.205(since 07/01/07〜) 

21/07/05

前回は「相続税:未分割申告」というテーマで、


申告期限までに財産の全部または一部が分割されていないときは、共同相続人が民法の規定による相続分の割合に従って財産を取得したものとして課税価格を計算し、期限内に申告することとされています。
そして上記申告後財産の分割があり、実際に取得した財産の課税価格が上記申告の課税価格と異なるときは、修正申告による追加納付又は更正の請求による還付(更正の請求書の提出期限は、異なることを知った日の翌日から4月以内)を受けることができます。

と書きました。

ところで申告期限までに未分割の場合、相続税の特例のうち適用できないものがあります。
主なものは、以下の2つです。

① 配偶者の相続税額の軽減



  被相続人の配偶者が相続又は遺贈により財産を取得した場合、

   イ 課税価格×法定相続分

   ロ 1億6千万円

  の大きい方の金額に対応する相続税は軽減されます。



  配偶者が財産を取得する場合には税制上の大きなメリットとなりますが、申告期限までに分割されて配偶者が取得した財産のみに適用されます。 



② 小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例



  被相続人の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で、相続人等が取得したもののうち一定の要件を充足するとして選択したものについては、通常の評価額の20%又は50%で評価します。

  限度面積及び減額割合は、以下の通りです。

   イ 特定事業用宅地等     限度面積400㎡、減額割合80%

   ロ 特定同族会社事業用宅地等     400㎡     80%

   ハ 特定居住用宅地等         330㎡     80%

   ニ 貸付事業用宅地等         200㎡     50%



  平米当たりの評価額が高い宅地等に適用することにより大きな節税メリットが得られますが、申告期限までに分割されていない宅地等には適用されません。



ところで、これらの特例は当初申告時に未分割の場合適用できないのですが、後日分割された後に改めて適用できる場合があります。


具体的には、分割されていない財産を

・申告書の提出期限から3年以内に遺産を分割し、かつ

・分割の日の翌日から4か月以内に、上記①②の特例を適用して相続税額を再計算した更正の請求書を提出する

場合に限り、納め過ぎの税金(=特例を適用しないで計算した相続税額−特例を適用して計算した相続税額)の還付を受けることができます。



ただしこの適用を受けるためには、「申告期限後3年以内の分割見込書」を、当初申告書に添付して提出することが必要です。つまり、後日遺産が分割された際にこれらの特例の適用を受けることを予め申告しておかないといけないのです。



では申告期限から3年以内に遺産が分割できない場合はどうなるのでしょう?


分割できなかったことにつきやむを得ない事情がある場合に限り、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を、その提出期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に提出し、承認を受ける必要があります。この申請が承認された場合、財産の分割が出来ることとなった日として定められた日の翌日から4月以内に分割された場合に特例適用を受けることができます。

 

 

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vol.204(since 07/01/07〜) 

21/06/07

前回は「相続税:単独申告」というテーマで、


共同申告とならないのは、相続人等の間の意見が一致しない場合で、具体的には遺産分割協議がまとまらない、といったケースがほとんどです。

と書きました。また、


相続税の申告期限及び納期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内」です。この期限は遺産分割協議成立の有無を問わないので、期限までに協議が成立しない場合は相続人全員が「未分割」として申告書を提出し、納税することになります。

と書きました。


では、未分割の場合はどのように税額を計算するのでしょうか?


申告期限までに財産の全部または一部が分割されていないときは、共同相続人が民法の規定による相続分の割合に従って財産を取得したものとして課税価格を計算し、期限内に申告することとされています。
そして上記申告後財産の分割があり、実際に取得した財産の課税価格が上記申告の課税価格と異なるときは、修正申告による追加納付又は更正の請求による還付(更正の請求書の提出期限は、異なることを知った日の翌日から4月以内)を受けることができます。

例を挙げて説明しましょう。

被相続人A(父)、相続人B(長男)、相続人C(二男)、Aの課税価格が1億円とします。
Aに遺言はなく、BとCの間で遺産分割協議がまとまらないまま申告期限を迎えました。
BとCの法定相続分は各2分の1なので、BとCは各5000万円の課税価格の財産及び債務を取得したものとして相続税を計算し、申告納税します。



この場合、BとCが納付すべき相続税額は、



課税遺産総額 1億円-(基礎控除額3000万円+600万円×2)=5800万円

相続税の総額 (5800万円÷2×15%-50万円)×2=770万円

各相続人の納税額 770万円×法定相続分2分の1=385万円

となります。

申告期限の1年後、遺産分割協議が成立しました。
協議の結果、課税価格ベースでBは7000万円、Cは3000万円の財産及び債務を取得しました。


ここでBとCが納付すべき相続税額を再計算すると、



課税遺産総額 5800万円(変更なし)

相続税の総額 770万円(変更なし)

各相続人が納付すべき納税額 B 770万円×あん分割合0.7=539万円

              C 770万円×あん分割合0.3=231万円

そうすると、法定相続分で既に納税している金額と差が生じます。

B 539万円-385万円=154万円(不足)

C 231万円-385万円=△154万円(超過)

よって、Bは修正申告書を提出し、不足額を納付します。
また、Cはその課税価格が異なることを知った日(=通常、遺産分割協議成立の日)の翌日から4月以内に更正の請求書を提出し、納め過ぎた税額の還付を受けます。



なお、以下の点に留意が必要です。



・Bが提出すべき修正申告書の提出期限は特に定められていません。しかしCが更正の請求書を提出することにより、税務署はAの相続について課税価格が異動したことを知ることになるので、税務署長は職権によりBの課税価格を更正し、不足税額を納付させることになります。(更正の場合過少申告加算税等が課されますが、自主的な修正申告の場合は通常課されません)。


課税価格が異動した場合に、相続税額の再調整(Bは修正申告書を提出し、Cは更正の請求書を提出する)をするかどうかは納税者の選択に委ねられています。つまりBとCが合意すれば、共に上記申告書を提出する必要はない、ということです(税務署からすると、Aの相続税の総額770万円が正しく納税されればよく、その内訳をBCがどのような割合で負担しようが構わない)。
 しかし普通、Cはこのままでは納得できないでしょう。そして、遺産分割によって生じた相続税の差額相当額154万円をBに支払うよう要求します。ここでCがBに154万円を支払った場合、CはBから贈与を受けたものとして贈与税が課されます。相続税の差額相当額についてBC間に贈与税の課税が生じないようにするためには、上記の申告書及び請求書の提出により税務署を通じて精算する必要があります。

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vol.203(since 07/01/07〜) 

21/05/11

被相続人の課税価格が基礎控除額を超える場合、相続又は遺贈によって「財産を取得した人」は、相続税申告書の提出と相続税の納税義務を負います。
そして「財産を取得した人」が2人以上いる場合、それぞれの相続人等がこれらの義務を負うわけですが、一般的に「相続税申告書の提出」は相続人等が共同で行います。
つまり、

①全相続人等は共同して一人の税理士に申告書の作成を依頼

           ↓

②税理士は相続人等から資料を入手、ヒアリングし、相続税申告書を作成

           ↓

③全相続人等は同一の申告書に署名押印

           ↓

④税理士は全相続人等に納付書を交付し、相続人等はそれぞれ相続税を納付

となります。


ところが、上記「全相続人等は共同して一人の税理士に申告書の作成を依頼」とならないケースがあります。



例えば「母は亡父が生前世話になっていたA税理士に依頼したいが、長男は自分の知り合いであるB税理士に依頼したい」といった場合です。
しかしこのようなケースでは、母と長男が話し合ってA税理士又はB税理士いずれか一人に依頼する、というのが一般的です。
共同申告とならないのは、相続人等の間の意見が一致しない場合で、具体的には遺産分割協議がまとまらない、といったケースがほとんどです。

相続税の申告期限及び納期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内」です。この期限は遺産分割協議成立の有無を問わないので、期限までに協議が成立しない場合は相続人全員が未分割として申告書を提出し、納税することになります。
たとえ未分割であっても、相続人全員が共同で一人の税理士に依頼すればそれは「共同申告」となります。
しかしそもそも「まとまっていない」のですから、相続人全員が共同で一人の税理士に依頼せず、それぞれ別の税理士に申告を依頼する可能性があります。その場合、相続税申告は各相続人がそれぞれ「単独」で行うことになり、それは相続税法上も可能です。

しかし「単独申告」の場合、以下のような問題があります。



・相続人により「申告する」「申告しない」の判断が分かれる可能性がある 

 相続税の申告納税義務があるかどうかは、各相続人がそれぞれ判断することになります。そうすると、本来相続人全員に申告納税義務があるにもかかわらず、ある相続人は自分にはないと判断し手続きをなにもしない、ということがあり得ます。
 


・相続人毎に被相続人の「課税価格」が異なる可能性がある 

 たとえ相続人全員が申告したとしても、被相続人の有していた財産債務をすべての相続人が把握しているわけではありません。また事実関係の認識の相違から、依頼する税理士によって財産債務の評価が異なることがあり得ます。その結果税務署には、一人の被相続人の申告書であるにもかかわらず、複数の相続人から課税価格の異なる申告書が提出されることになります。


 上記いずれの場合も後日税務調査の対象となる可能性が高く、調査によってあるべき課税価格と納税額が算出されたうえで税額が是正されます。そして申告していなかったり納税額が不足している相続人は、本来納付すべき税額のほか、無申告加算税、過少申告加算税、延滞税等が課されます。



以上のことから、相続税申告は「共同申告」が望ましいと考えます。
しかしやむを得ず「単独申告」とする場合は、上記のようなリスクがあることを相続人全員で共有しておくことが肝要です。



→カテゴリ:相続&贈与

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vol.176(since 07/01/07〜) 

19/02/12

確定申告の季節になりました。と同時に、贈与税の申告も始まりました。
確定申告(所得税)の提出期間は2月16日(2019年は2月18日)〜3月15日、贈与税は2月1日〜3月15日。贈与税の申告は、一足早く受付が始まっています。

その流れで、今回は「未成年者への贈与」について触れます。

そもそも「贈与」とは、民法上、

「当事者の一方が、自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる行為」

とされています。

つまり贈与が成立するためには、贈与者(あげる側)だけではなく、受贈者(もらう側)の意思も必要なのです。

そうすると、「『もらう』という意思表示ができない乳幼児などの未成年者は、贈与を受けることができないのでは?」との疑問が浮かびます。

裁決では、未成年者が受贈者(もらう側)の場合、「親権者が受諾すれば、未成年者の子が贈与の事実を知っていたかどうかにかかわらず贈与契約は成立する」とされています。つまり、乳幼児を含む未成年者への贈与は、親権者の同意があれば可能、ということになります。

しかし未成年者への贈与を巡っては、相続税の税務調査等でしばしば争いの種になります。「未成年者の子や孫に贈与したことにして、自分の財産ではないように見せかけているのではないか?」といって疑われるのです。


上述したように、贈与は原則としてあげる側・もらう側双方の意思が必要です。そこで贈与があったことを明確にするために、未成年者へ贈与を行う場合、特に以下の点に留意しましょう。

贈与契約書の作成

贈与は口頭のみでも有効です。しかしこの方法では記録が残りません。ましてや乳幼児など意思表示ができない未成年者への贈与の場合、贈与の事実を証明するのはとても難しくなります。そこで贈与を実行した際は、贈与契約書を作成しておきましょう。

そして、未成年者への贈与の場合の重要なポイントは、受贈者の代わりに、未成年者の親権者(法定代理人=両親)が署名押印することです。もちろん、受贈者が署名できる場合は本人の署名押印も行います。

②受贈財産の管理

贈与された財産は、当然、受贈者(もらった人)のものです。ところが受贈者が未成年者、特に乳幼児の場合、本人が自分の意思でその財産を使用することはできません。そうすると、親権者が管理することになります。


大切なのは、親権者がその財産を自分で使用してはいけない、という点です。例えば未成年者の孫が祖父から預金の贈与を受けたが、その親がその預金を自由に使ってしまうようなことがあれば、孫への贈与は認められないこととなるでしょう。

未成年者への贈与の目的は、将来の生活資金の移転や事業承継など様々あると思います。贈与財産の種類も、預金や自社株式など目的に応じたものになるでしょう。
上で述べたとおり、未成年者の贈与は親権者の同意がある限り有効です。しかし贈与が実際にあったかどうかを巡って、民事上、又は税務上のトラブルになることが多いのも事実です。未成年者への贈与を行う場合は、上記①②に充分注意しましょう。そして、贈与税の申告を忘れずに! 

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vol.158(since 07/01/07〜) 

17/08/08

以前の記事で触れたとおり、贈与の方法には

①暦年贈与
相続時精算課税贈与

の2種類があります。

また通常、贈与は①の方法で行われており、②の贈与は

・選択するためには届出書の提出が必要
・いったん選択したら、以後の贈与は全てこの制度を適用

などの注意点があります。

この②の贈与を選択したにもかかわらず、選択後何年も後に①の贈与で申告してしまい、税務署から指摘を受けて修正申告する、というケースが増えています

例えば、こんなケースです。


・母Aは平成20年、長男Bに現金2500万円を贈与した。

・同年の贈与税申告において、AとBは相続時精算課税制度選択届出書贈与税申告書を期限内に提出した

・その結果、平成20年のBの贈与税の課税価格は贈与財産の価額2500万円−特別控除額2500万円=0円となり、贈与税は0円だった。

・平成25年、BはC生命保険会社と生命保険契約を締結した。保険料は年100万円(年払)だったが、C社の社員が「年110万円までなら贈与税がかからないから、Aから毎年100万円贈与を受けて保険料を支払えばいい」と言われ、以後毎年贈与を受けて保険料を支払っていた

もうお分かりだと思いますが、AとBは相続時精算課税制度を選択しているのですから、以後AからBに対して行われる全ての贈与はこの制度が適用されます。

ところがBは、以前この制度を選択したこと、また2500万円の特別控除枠を使い切ったことを忘れてしまっていて、C社社員の言うことを鵜呑みにして保険に加入してしまったのです。

Bは後日税務署から誤りを指摘され、平成25年分から、1年当たり100万円×20%=20万円の贈与税+延滞税を納付することになりました

このようなことが起こってしまう原因は、

相続時精算課税制度の選択は贈与者側(A)の事情で行うことが多く、受贈者側(B)に制度を選択したという意識・感覚が乏しい
(事例の保険会社社員のような)第三者が、当事者の事情を確認せず、営業上の都合で贈与を勧めてくる

が考えられます。

なお、上記事例で、仮に平成20年の現金贈与の金額が2000万円だった場合はどうでしょうか?

特別控除枠は2500万円なので、この時点では控除枠がまだ500万円残っています。平成25年から毎年100万円ずつ贈与したとしても、5年間はこの枠が利用できるので贈与税は支払わなくて済むのではないか?と思いがちです。

しかし、結果は同じです。Bはやはり1年当たり100万円×20%=20万円の贈与税+延滞税を納付することになります。

なぜなら、特別控除を使用できるのは期限内申告が要件となっているからです。Bは平成25年分以後の贈与税の申告をしていません。つまり申告期限を過ぎてしまっているため、残っている500万円の特別控除枠を使用できないのです。

相続時精算課税制度を選択して贈与をした場合、以後の贈与は全てこの制度で申告する必要がある、ということを忘れないようにしましょう。

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vol.155(since 07/01/07〜) 

17/05/15

まずはケーススタディで確認しましょう。

被相続人A(父)は平成29年1月1日死亡しました。
相続人はB(長男)とC(二男)の2人。
Aの財産(=純資産価額)は4000万円、BとCは2分の1(=2000万円)ずつ財産を取得します。

この場合、課税遺産総額は

4000万円−基礎控除4200万円(3000万円+600万円×2)<0

となり、相続税は生じません

ところが、Aは平成26年5月1日に、BとCにそれぞれ500万円ずつ、計1000万円の現金を贈与していたことが判明しました。なお、BとCは贈与税の申告をしています。

そうすると、課税遺産総額は、

純資産価額4000万円+生前贈与加算1000万円−基礎控除4200万円=800万円

となり、相続税が生じることとなります

これは相続税法上、相続開始前3年以内に被相続人から贈与(=一般贈与)を受けていた場合、その財産の価額は相続税の課税価格に加算する」という規定があるためです。

このケースでは、Aはもともと5000万円あった財産のうち、生前にBとCに計1000万円を贈与したため、死亡時の財産は4000万円になりました。
しかしこの規定により、相続税申告上、Aの財産の価額は贈与前の5000万円として申告することになります。

もちろん、贈与そのものは有効です。
また、BとCが支払った贈与税は、それぞれ支払う相続税から控除されます。

ところで、平成26年5月1日に、AはBとCにではなく、D(Bの子=孫)とE(Cの子=孫)にそれぞれ500万円ずつ、計1000万円贈与していた場合、生前贈与加算の既定の適用はあるのでしょうか?

答えは「NO」です。
生前贈与加算の規定の適用を受けるのは、「相続又は遺贈により財産を取得した者が、3年以内に贈与を受けていた場合」に限られます。

このケースでは、DとEはAの相続により財産を取得していません。従って、DとEが贈与を受けた1000万円は生前贈与加算の対象外となり、Aの課税価格は4000万円のままです。結果として、相続税は生じないことになります。

贈与する相手によって、相続の際その贈与財産を加算するケースとしないケースがある、ということになります。 

人が亡くなる時期は事前にはわかりません。つまり生前贈与を行った時点では、その贈与財産が3年以内加算の対象となるかどうかはわからないのです。ただし、その贈与の相手が相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合、この規定の適用はないことになります。


 

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vol.154(since 07/01/07〜) 

17/04/10

中小企業のほとんどは、会社運営に必要な資金の一部を借入金に拠っています。

その借入先を大別すると

・金融機関からの借入金
・社長(又は親族)からの借入金

となります。

社長借入金が生じる原因は

・創業時の運転資金
・資金不足時の一時的な資金繰り

などによります。

この社長借入金が厄介なのは、殆どの場合、返済期限や返済条件を定めていないことですよく言われる「ある時払いの催促なし」の状態ですね。

社長からすると、会社に貸しっ放しで、大抵の場合時間の経過とともにその存在を忘れていきます。決算時に私たちが「社長、会社への貸付金がまだこれだけありますよ」と報告すると、「ええ、いつそんなに貸したの?」とびっくりされることもしばしばです。

さてこの社長借入金、社長が元気に、現役で社長業に携わっている間は大きな問題はありません。問題が生じるのは、この借入金を返済しないまま、社長に相続が発生した場合です。

相続税の計算上、この社長借入金(=同族会社への貸付金)は、基本的に相続財産として相続税の課税価格に算入されます。

私たちが遺族の方にこのことを説明しても、ピンと来ないケースがほとんどです。そもそも社長自身に「会社にお金を貸している」という感覚がないのですから、その遺族は貸付金の存在など知る由もないのが普通です。

しかし貸付金はまぎれもない「相続財産」であり、相続税の課税の対象となります。またこの貸付金は「相続財産」として遺産分割協議の対象となり、相続人の誰かが取得することとなります。この貸付金を取得した相続人は、会社に対する新たな「債権者」となり、会社に対し返済を求めることになります。

ところで、会社はこの新たな債権者に対し、借入金を返済することができるのでしょうか?

残念ながら、その可能性は低いでしょう。社長借入金は多くの場合「返済できないから貸しっ放し」の状態にあったのです。

また、借入を重ねることでその残高が多額になっているケースもあります。そうすると、ますます返済は困難です。いわば「不良債権」の状態です。

いつ、いくら返済されるかどうかもわからない「不良債権」の状態にある貸付金が相続税の対象となってしまう。これを避けるために、生前に採れる対策はあるのでしょうか?
以下のような方法が考えられます。

①相続発生前に、会社を解散する
②相続発生前に、借入金につき債務免除を受ける

①によれば、会社清算の過程で弁済を受けることとなり、また弁済不能であれば貸付金額のうち全部または一部の債権放棄をすることになります。しかし会社が継続する場合この方法は採用できません。

②によれば、貸付金額の全部または一部の債権放棄をすることになります。しかしこの方法は会社に債務免除益が生じ会社に課税されるだけではなく、他の株主に対する贈与税の課税関係が生じる場合があります。


これらの対策が有効かどうかは、社長や会社の財産状況により異なり、ケースバイケースで判断することになります。会社に多額の社長借入金や親族借入金がある場合、思わぬ税金がかからないよう事前のシミュレーションが重要です。

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vol.151(since 07/01/07〜) 

17/01/19

前回に引き続き債務控除の話です。

被相続人の財産と債務を誰が引き継ぐか?ということについては、

①遺言がある場合→遺言に従う

②遺言がない場合→相続人全員の遺産分割協議により定める

のが基本的な考え方です。

ところで相続税の計算上、一定の債務及び葬式費用は財産の価額から控除することができますが、これらの債務を誰が負担するかによって必ずしも控除できない場合があります。

例えば、

・被相続人A(父)
・相続人B(長男)、受遺者C(孫)

・遺言で、次の通り財産及び債務を相続・遺贈することとしている。
 B 財産2000万円(預金)、 債務等500万円
 C 財産2000万円(不動産)、債務等  0万円

この場合、相続税の計算は、

課税価格 B(2000万円ー500万円)+C(2000万円ー0円)=3500万円

基礎控除 3000万円+600万円=3600万円

∴課税価格3500万円−基礎控除3600万円<0万円となり、相続税は生じません。

ではAの遺言で、次の通り財産及び債務を相続・遺贈することとしていた場合はどうでしょう

 B 財産2000万円(預金) 、債務等  0万円
 C 財産2000万円(不動産)、債務等500万円

この場合、相続税の計算は、

課税価格 B(2000万円ー0万円)+C(2000万円ー0円)=4000万円

基礎控除 3000万円+600万円=3600万円

∴課税価格4000万円−基礎控除3600万円=400万円となり、相続税が生じてしまいます。

ポイントは、「相続人以外の者が支払った債務等は、相続税の計算上控除できない」ということにあります。

上記の例では、C(孫)は相続人ではありません。よってCが支払った被相続人の債務等500万円は、Cが遺贈により取得した財産の価額2000万円から控除することができないのです。

例外は、上記の遺言が民法上の「包括遺贈」に該当する場合、Cが支払った債務は債務控除ができることとなります。しかし実務上、日本では「包括遺贈」の遺言を目にすることはあまりありません。また、書かれた遺言が民法上の「包括遺贈」「特定遺贈」どちらに該当するのかを判断するのに難しいことがあります。

生前に遺言を準備するケースが増えています。それはとても望ましいことですが、相続人以外の孫などに財産を遺贈する場合は、事前に相続税法上の取り扱いに充分留意する必要があります。

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vol.150(since 07/01/07〜) 

16/12/09

相続税の額は、納税義務者全員が取得した財産の価額から、債務・葬式費用の額を控除(=課税価格)し、基礎控除をマイナスした金額に課されることになります。

例えば、


取得財産の価額 5000万円

債務・葬式費用 1000万円

相続人A、B2人が財産を均等に取得・負担

この場合、相続税の計算は、

課税価格

(相続人A2500万円ー500万円)+(相続人B2500万円ー500万円)=4000万円

基礎控除

 3000万円+600万円×2=4200万円

∴課税価格4000万円−基礎控除4200万円≦0となり、相続税はかからないことになります。

ところが財産の価額が同じであっても、財産の分け方や、誰が債務・葬式費用を負担するかによっては、相続税が生じてしまうことがあります

上記の例で、相続人A,Bが以下のように財産債務を取得・負担したとします。

A 取得財産ゼロ、債務・葬式費用1000万円を全額負担

B 取得財産5000万円、債務・葬式費用の負担なし

この場合、相続税の計算は、

課税価格

(相続人A0円)+(相続人B5000万円ー0円)=5000万円

基礎控除 

 3000万円+600万円×2=4200万円

∴課税価格5000万円−基礎控除4200万円=800万円となり、相続税が生じてしまいます

ポイントは、「債務控除は、各相続人が取得した財産の範囲でしかできない」という点にあります。


上記の場合、相続人Aは財産を取得していないので、Aが債務・葬式費用を支払ったとしても相続税の計算上控除できない、ということになります。

「全財産から借入金をマイナスすると基礎控除以下。だから、うちには相続税はかからない。」
この考え方は正確ではありません。財産の分け方や債務の負担方法によっては、相続税が課税されます。遺産分割協議の際は十分に留意する必要があります。

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vol.149(since 07/01/07〜) 

16/11/11


 被相続人が亡くなって四九日を過ぎる頃から、遺族の方は遺品の整理を始めます。
 被相続人が几帳面な方の場合、過去の預金通帳を、解約済みのものを含め全て保管している、というケースもあります。

 遺族の方にとっては、これらの通帳は必要のないものです。最新の通帳は諸々の手続き上とっておく必要がありますが、他の通帳は不要な遺品と一緒に処分してしまおう、ということになります。


 しかし、もし被相続人の相続税申告が必要な場合、その通帳は捨てないでください
 実は、とても重要な資料なのです。

 相続税は、基本的に相続開始日=死亡日の所有財産に対して課されます。死亡日の財産目録を作成し、その一つ一つの財産を評価し、課税価格を計算することになります。


「預金」という財産の価額は、「相続開始日現在の預金残高」により評価します。よって過去の通帳がなくても、最新の通帳残高証明書があれば残高は把握できます。

 しかし、例えば以下のような情報は、残高証明書だけではわかりません。

1 死亡日前に、多額の現金を引き出した。


  亡くなる1カ月前の預金残高   1000万円
  亡くなる日までに引き出した金額 △800万円
  亡くなった日の預金残高      200万円

  この場合、「預金」という財産の価額は200万円です。
  しかし1か月間に引き出した800万円のうち、死亡日に手元に残っていた金額は、「現金」として、相続税の課税財産となります。

 
2 子や孫名義の通帳に「振込」を行っている。

 
  このような場合、生前に贈与を行っている可能性があります。「3年以内の生前贈与加算」の対象となるかどうか、また「贈与税申告」の必要の有無を判断することになります。


  また、振込先の通帳がいわゆる名義預金(=名義は異なるが、実質的には被相続人の預金)の可能性もあります。「名義預金」と判断されれば、被相続人の相続財産として取り扱うことになります。


このほか、


・多額な預金の入出金(他者に対する貸付金や借入金がないか)
・配当金の受取(株式を所有しているのではないか)

など、被相続人の預金履歴から推定される情報は数多くあるのです。

 「なぜ会計事務所はそんな細かい資料を要求するのか?」と思われるかもしれません。実は、税務調査があった場合、税務署は必ず被相続人の預金履歴の調査を行うからです。税務署は、金融機関から職権で被相続人の預金履歴を入手することができます。そして、入手した情報をもとに、上記のような事実がないかどうかを確認するのです。

 「預金履歴を見たって、被相続人がお金をどのように動かしていたかなんて知らないし、答えられない。」
 その通りです。知らないことは知らない、でいいのです。しかし、事前に預金履歴を入手して可能な限り検討を加えた、ということが申告書の信頼性を高めるのです。かつ、税理士が作成する書面添付にそのことが記載されていれば、調査省略の可能性も高まるでしょう。

 なお、過去の通帳がない場合は、相続人が各金融機関から預金履歴を取り寄せることになります。取り寄せるには手数料が生じます。金融機関によっては決して安くない金額がかかるようです。

 相続人の皆さま、相続税申告が終わるまでは、預金通帳は処分しないようお願いします。

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vol.144(since 07/01/07〜) 

16/06/14

 相続が発生して、被相続人が遺言を残していない場合、基本的には相続人全員で「遺産分割協議書」を作成し、誰がどの財産を取得するかを決定することになります。

そして、被相続人の主な遺産が「不動産」の場合、この「分割」が難しくなることがあります。

例えば、


被相続人=父
相続人   =子2人(長男二男 母は既に死亡)
財産      =土地建物(父の自宅 評価額5000万円)
     現金預金(1000万円)

とします。

この遺産を、子2人が法定相続分である2分の1ずつ取得します。

すると、その分割方法は、

<パターン1>
土地建物→共有持分各2分の1ずつ取得
現金預金→それぞれ500万円ずつ取得

となります。

この分け方のメリットは「公平に2分の1ずつ取得している」という点です。取得財産の割合については、兄弟どちらからもケチはつかないでしょう。

しかし「不動産の共有」は、後々問題を引き起こす可能性があります。

後日不動産を処分したいと考えた時に、兄弟2人の意見が一致するとは限りません。兄が「売却してキャッシュにしたい」と考えても、弟が「売却不要」と考えれば売却できません。


この状態が続き、将来兄や弟に相続が発生すると、もう手のつけようがありません。兄や弟の持ち分はそれぞれの「配偶者」や「子」のものとなり、不動産はますます細分化され、かつ縁が薄い人同士の共有状態となっていくのです。


こうして不動産は「塩漬け」となり、不良財産となっていきます。

このようになるのを避けるため「不動産は一方が単独相続する」という方法があります。


<パターン2>
土地建物→兄が取得
現金預金→弟が取得

このように分割すれば、パターン1のような懸念は避けられます。
しかしこの場合「取得財産の価額が違いすぎる」という問題が生じる可能性があります。上記の例では、兄が5000万円の財産を取得し、弟が1000万円しか取得しないのであれば、弟は納得でしないでしょう。

この問題を解決するのが「代償分割」という方法です。

代償分割とは、「現物財産を取得した相続人が、他の相続人に対して債務(=相続すべき財産の価額と現物財産の価額との差額)を負担する」分割の方法をいいます。

代償分割によった場合、以下のようになります。

<パターン3>
土地建物→兄が取得(5000万円)
     代わりに、弟に代償金を支払(現金△2000万円)
     (取得した財産の価額 5000万円ー2000万円=3000万円)
現金預金→弟が取得(1000万円)
     兄より代償金を受取(現金2000万円)
     (取得した財産の価額 1000万円+2000万円=3000万円)

一方が不動産を取得したいと考えているのに対し、もう一方は取得の意思がない場合、この方法は有効です。
この例では、兄は望み通り不動産を取得し、弟はその価格差に相当する現金を得ることができるのですから、お互いに文句はないでしょう。

ただし「代償分割」には、以下の点に注意が必要です。


1 遺産分割協議書に何の記載もなく兄から弟に現金を渡すと、単なる「贈与」となり多額の贈与税が発生します。この現金が代償分割に伴う「代償金」であることを証するため、代償金の金額、支払方法等を遺産分割協議書に記載する必要があります。

2 上記のケースでは、兄は代償金である2000万円を、自分が今持っている自分の財産、又は将来自分が稼ぎ出す財産の中から用意しなければなりません。つまり、現物財産を取得した人に支払能力がなければ代償分割はできないこととなります。

被相続人の主な遺産が「不動産」の場合、「代償分割」は相続を円満に解決する有効な方法のひとつです。ただし、ひとつ手続きを間違えると法務上・税務上大きな問題を生じることとなります。代償分割を検討するなら、弁護士・司法書士・税理士等の専門家に十分相談することをおすすめします。

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vol.143(since 07/01/07〜) 

16/05/18

平成27年の相続税増税以後、上甲会計には相続税申告に関するご相談・ご依頼が大変増えています。


その中で、「親が自宅で一人暮らしをしていて、亡くなった後空き家になっている」というケースがあります。これが、意外と多いのです。


「一人暮らしの親の自宅」は、通常、子が相続します。しかし子は既に自分の生活の本拠があるので、「親の自宅」は子の生活には必要のない財産になります。


必要がなければ売却してしまえばよいのですが、子には「親の自宅」を手放せない(又は、手放したくない)何らかの事情があったりします。そうすると、特に利用するわけでもなく、また特に処分を急ぐ必要もないのでそのままにしておく、ということになります。


これがいわゆる「空き家問題」です。

建物は、適切に管理しなければたちまち傷んでしまいます。庭はあっという間に雑草だらけ。空き家であることは近所にすぐにわかります。ゴミが投棄されたり、火災や盗難のリスクも増大し、そのまま放置することは大変危険です。
この「空き家問題」解消のために創設されたのが、この制度です。


以下の土地建物を譲渡した場合、譲渡所得から3000万円を控除する、というものです。

<対象財産>
・被相続人が一人暮らしをしていた家屋で、昭和56年5月31日以前に建築されたもの、及びその敷地

・家屋付きで譲渡する場合、家屋が耐震基準を満たす必要がある

・家屋が耐震基準を満たさない場合、耐震リフォームを行うか、更地にして譲渡する


<要件>
・相続開始から譲渡時まで空き家であったこと(=貸付・居住等を行っていない)

・譲渡対価が1億円以下であること

・相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したこと

 (EX.平成28年5月1日相続→平成31年12月31日までに譲渡)

なお、適用期限(譲渡期限)は平成31年12月31日、相続税の取得費加算制度との選択適用となっています。

譲渡所得税は、(譲渡代金ー取得費ー譲渡費用)×20.315%(長期譲渡の場合)で計算します。
自宅を親がずっと以前に購入した場合や、親が祖父から相続により取得した場合、一般的に「取得費」は極めて少額です。この「譲渡所得」から3000万円を控除できれば、税負担はかなり圧縮されます。


要件はいろいろあり、かつ、期間限定の制度ですが、該当する空き家を所有している方は処分するきっかけにしてもよいのではないでしょうか。

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新宿から御殿場線に乗り入れる、特急ロマンスカー「あさぎり」。

今となっては、レアな存在になりました。

vol.141(since 07/01/07〜) 

16/03/15


この数年、「国際相続」と呼ばれるジャンルの仕事に携わっています。


「国際相続」というと、


・日本在住の、外国人の相続
・外国在住の、日本人の相続

というイメージがあると思いますが、当事務所で取り組んでいるのは、

・外国在住の、外国人(ただし、元日本人)の相続

といった事案です。

つまり、

・両親は日本人で、日本で出生
・戦後、日本で外国人(米国人)と知り合い、結婚して渡米
・米国に帰化→終生米国に居住→米国で死去

という流れです。

この方々は、日本国籍を離脱して米国籍を取得しているのですから、「米国に居住する米国人」です。
相続や遺産分割、相続税申告などの手続きは、当然に米国法に従って行われます。

ところがこの方々には、日本在住の日本人の血縁者(兄弟など)が存在します。
そうすると、米国で行われる相続手続きの過程で、日本人の相続人(又は受遺者)が財産を取得することがあります。

そこで、日本人の相続人が取得した財産について、日本の相続税申告及び納税の可能性が生じるわけです。

ここで、様々な問題が生じます。

・そもそも、申告期限はいつなのか?
・納税義務者は誰なのか?
・課税価格はどのように計算するのか?
・法定相続人は誰で、何人なのか?etc

また、税の問題以前に、

・日本の相続税申告に当たり、どのような資料を収集すればいいのか?
・米国の資料収集を、誰に依頼すればいいのか?

といった問題があります。

例えば、米国には戸籍制度がありません。「被相続人に子がいるかどうか」といった基本的な事柄を確認しようとしても、公的な証明書類が存在しないため、別の方法や別の書類によらなければならないのです。

実は最大の問題は「資料が日本語ではない」ということだったりするのですが。

条文や通達などをあたっても、明確に定めている部分はほとんどありません。日本の相続税法は、このようなケースは想定していない、といっていいでしょう。法令解釈や、署との事前打合せで事務を進めていくほかありません。

もちろん当事務所も、単独で事務を進めていくことはできません。
翻訳のプロや、国際相続に強い司法書士等と連携しながら事務を進めていくことになります。

人と財産のボーダーレス化は、今後ますます進行します。
相続の在り方も、時代とともに変わっていく予兆を感じます。


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京急が、一足早い春を運んできました。

 vol.140(since 07/01/07〜) 

16/02/08

平成27年は、相続税の増税が行われた年でした。
基礎控除の引き下げによる課税ベース(=課税対象者)の拡大により、納税義務者は1.5倍になる
マスコミは大騒ぎでしたね。
でも、「大騒ぎするほどの影響が、本当にあるのかな?」と個人的には思っていました。

改正から1年を経て・・・・・やはり「影響あり」と言わざるを得ません。

昨年以降、上甲会計で相続税申告をお手伝いしたお客様の多くは、

「改正前であれば、基礎控除以下で申告不要」

という方々でした。

基礎控除40%減(改正前:5000万円+法定相続人の数×1000万円→改正後:3000万円+法定相続人の数×600万円)の影響をまともに受けてしまったことになります。

ところが、そのほとんどが

「税額は0円だが、申告は必要」

というケースでした。

つまり、


・相続税の二大特例である「配偶者の税額軽減」「小規模宅地(居住用)の評価減」を適用した結果、税額は0円になった。

・しかしこれらの特例を適用するためには、

①申告書を提出すること

 ②原則として、申告期限内(=相続開始日より10か月以内)に遺産が分割されていること

 が要件となるため、結果として期限内申告を行った。

というケースです。

「配偶者の税額軽減」「小規模宅地の評価減」の制度は、多くの方がご存知です。
そしてこれらの方々の多くは、
「特例を適用すれば、おそらく自分には相続税はかからない」
ということまで理解されています。

しかし、特例を適用するためには

「10か月以内の分割」と「0円申告書の提出」

が必要であることはまだまだ知られていません。

そのため、

司法書士に依頼し、遺産分割協議を進めて分割が確定した

→司法書士から、「相続税の申告が必要かもしれない」と告げられた

→申告期限直前に、相続税申告の依頼が来た

といったケースが上甲会計では増加しています

たとえ遺産分割が完了していたとしても、相続税申告書を作成するためには相当の時間を要します。
不動産の現地調査や、過去の預金取引状況の確認、特例の適用可否の判断など、税額の有無にかかわらず確認すべきことは多々あります。
資料を集めるだけでも、時間はあっという間にすぎてしまうのです。

まずは「遺産分割は10か月以内」ということを頭に入れてください。

そのうえで「もしかしたら、相続税の申告は必要だろうか?」と迷ったら、早めに税理士に相談することをお勧めします。

早めの相談が、安心の相続につながります。

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陸羽東線の愛称は「奥の細道ゆけむりライン」。

沿線には「温泉のデパート」の異名を持つ、鳴子温泉が控えます。

vol.136(since 07/01/07〜) 

15/10/06

前々回の記事で、

[近年、課税庁は「個人の財産」の把握に力を入れていて、特に「富裕層」に対する課税を強化しようとしています。
 「相続税の増税」「所得税の増税」「マイナンバー」・・・・・等々、全てこの流れに沿ったものといえます。]

として、「国外財産調書」「財産債務調書」の提出制度が創設されたことをお伝えしました。


今回のテーマである「国外転出時課税制度」も、そのど真ん中にある制度と言えます。

なお、制度は既に平成27年7月1日施行されています。

以下、制度の概要です。

1 国外転出時課税


 1億円以上の有価証券等を有している一定の居住者(=転出日前10年の間に、国内に5年超居住していたことがある者)が、国外転出をする場合、国外転出の時に、その有価証券等を譲渡したものとみなして、その「含み益」に所得税が課される。

2 国外転出(贈与)時課税
 

 1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が、非居住者である親族にその有価証券等の全部又は一部を贈与した場合、贈与の時に、その有価証券等を譲渡したものとみなして、その「含み益」に所得税が課される。

3 国外転出(相続)時課税

 1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が死亡し、非居住者である相続人がその有価証券等の全部又は一部を相続した場合、死亡の時に、被相続人がその有価証券等を譲渡したものとみなして、その「含み益」に所得税が課される。

あえて乱暴に言えば、

 「株をたくさん持っている人が、その株を国外に持ち出す場合は、売ってもないのに、売ったことにして税金をかける」

ということになります


なおこの制度には、

① 納税猶予(届出書の提出や担保提供などにより、5年間納税を延期する

② 減額(以下のようなケースでは、更正の請求により税金の還付を受ける

 ・5年以内に帰国した場合
 ・出国後、実際に売却した時に、出国時よりも価格が下落している場合
 ・納税猶予期間終了時に、出国時の時価が下落している場合
   


等の措置があり、必ずしも直ちに納税したり、払いすぎになったりするとは限りません。
しかしながら、これらの納税猶予や減額の措置を受けるためには、それぞれの提出期限までに繁雑な手続きを行う必要があります。

この制度創設の趣旨は、「富裕層が、国外に財産を持ち出すことにより相続税を節税する」ことへの防止策と思われます。
しかし、例えば国外でビジネスを展開しているような人が、たまたまこの制度に引っかかてしまう可能性はあるのです。

証券会社に口座を持ち、かつ海外との行き来をしているような方は、自分に出国税の適用がないかどうか、この機会に確かめてみましょう。

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vol.134(since 07/01/07〜) 

15/08/11

 近年、課税庁は「個人の財産」の把握に力を入れていて、特に「富裕層」に対する課税を強化しようとしています。
 「相続税の増税」「所得税の増税」「マイナンバー」・・・・・等々、全てこの流れに沿ったものといえます。


 そして、また新たな制度として「国外財産調書」「財産債務調書」の提出制度が創設されました。

国税庁HPリンクに、チラシが掲載されています。


「「財産債務調書」の提出制度が創設されました」

概要を記すと、

①国外財産調書

<提出義務者>
 居住者で、その年の12月31日において、計5000万円を超える国外財産を所有している人

<提出期限>
 翌年の3月15日

<適用開始年>
 平成26年より(既に開始されている!)

<優遇規定・罰則規定>
・期限内提出をした後、所得税・相続税等の申告漏れが生じたとき
加算税を5%軽減
・期限内提出をしなかった場合、又は財産の記載がない場合で所得税の申告漏れが生じたとき
加算税を5%加重
・期限内提出をしなかった場合、又は偽りの記載をした場合
1年以下の懲役又は50万円以下の罰金

②財産債務調書


<提出義務者>
 その年の合計所得金額が2000万円を超える人で、かつ、その年の12月31日において計3億円以上の財産(又は計1億円以上の国外転出特例対象財産)を所有している人

<提出期限>
 翌年の3月15日

<適用開始年>
 平成27年より(平成28年3月15日が最初の提出期限)

<優遇規定・罰則規定>
・期限内提出をした後、所得税・相続税等の申告漏れが生じたとき
加算税を5%軽減
・期限内提出をしなかった場合、又は財産の記載がない場合で所得税の申告漏れが生じたとき
加算税を5%加重

となります。

 大きな特徴は、「優遇規定・罰則規定」があることです。
 申告漏れがあった場合の「罰金」の金額をプラス・マイナスするという具体的なメリット・デメリットを設けるあたり、より多くの人の個人財産を把握したいという課税庁の意図を読み取ることができます。

 また、それぞれの記載方法を見ると、財産の一つ一つを詳細に記載するよう求められているのがわかります。
 そもそも「財産の価額」をどう計算するのか?
 具体的には、国税庁HP内にあるFAQなどを参照して計算することになりますが、煩わしい事務作業が増えるのには違いありません。

 なお、今まで合計所得金額が2000万円を超える人は「財産及び債務の明細書」の提出をする必要がありましたが、この制度は廃止され、「財産債務調書」制度に引き継がれることになります。

 課税庁のターゲットは、「所得のある人」から「財産のある人」に変化している、といえます。
 会社オーナーの方は、「自社株式」や「役員借入金」も財産になります。優遇規定や罰則規定がある以上、「知らなかった」ではすまされません。

 これらの調書の提出義務があるかどうか、確定申告時にあわてないよう今のうちに確認しておきましょう。

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北陸シリーズNO.3  「のと鉄道」 能登と横浜をつなぐ連ドラ「まれ」の舞台です。

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vol.125(since 07/01/07〜) 

14/10/16

 相続の相談が、急増(激増)しています

 ここ1,2カ月のことですが、クライアントを訪問すると、決まって話題になるのが「相続」に関する相談です。


 その理由は、平成27年からの増税です。税制改正(=基礎控除の引下げ)を受けて、雑誌やTVの特集、電車の車内広告に至るまで、巷では相続に関する情報があふれています。

 
 なぜここまで話題になるのでしょうか?

 国税庁の統計によると、1年間で亡くなる人は約100万人、うち相続税申告が必要な人は約4万人。
 これが改正後は、1.5倍の約6万人となると見込まれています
 しかもこれは全国平均なので、地価が高い首都圏に住む人は約2倍になる、とも言われています

 「もしかして、自分にも相続税がかかるのかしら?」ということで、世間の関心を集めているわけです。

 では、改正の概要を整理してみましょう。主な点は、以下の2つです。

①基礎控除の引下げ

 改正前:5000万円+1000万円×法定相続人の数

 改正後:3000万円+ 600万円×法定相続人の数

②最高税率の引上げ

 改正前:10%〜50%

 改正後:10%〜55%

 このうち、巷で騒がれる原因は①です。
 例えば、被相続人=父、相続人=母・長男・長女の3人、といったケースの場合の基礎控除は、
 

 改正前:8000万円→改正後:4800万円

 となり、相続時の(財産−債務・葬式費用>基礎控除の4800万円)の場合、相続税が課税されることになります

 例えば、横浜市内に1戸建の自宅を持ち、数千万円の預金がある場合、基礎控除が8000万円ならかからないが、4800万円だとどうでしょうか?ちょっと不安になりますよね。

 では、より身近になる相続税に、私たちはどう付き合ったらよいのでしょうか?

 
 私が相続の相談を受けた際、まず最初にクライアントに申し上げているのは相続対策相続「税」対策は、そもそも違うものだ、ということです。

 基礎控除が引き下げられたとはいえ、相続税申告が必要な人は全体の約6%。
 もちろん、シミュレーションや税理士への相談をしたうえで、相続税がかかる見込の人は、相続「税」対策が必要となります。

 ではシミュレーションの結果、「どうも相続税はかかりそうにない」といった場合はどうでしょうか?
 この場合でも、相続対策は必要となります。

 相続対策とは、あなたが受け継ぎ、育てた財産を、いかにスムースに次の世代に引き渡すか、ということです。
 

 その目的は、相続人間の、あなたの財産の分配に関するもめごと(=争族)を避けることにあります。

 具体的には、「遺言」や「贈与」、あるいは「生命保険金の活用」などにより、あなたの意志で、あなたが承継させたい財産を、あなたが承継させたい人に、譲り渡す方法を考えます。

 「相続対策」を何もしない場合、あなたの財産は相続人間の遺産分割協議により分割されることになります。協議に加わることができるのは相続人のみです。たとえあなたが相続人以外の人、例えば孫や、世話になった長男の嫁などに財産を分け与えたり、財産を寄付したいと考えていても、これらの人にその権利は基本的にはありません。

 自分の財産の行方は、自分の意志で決めてください。言い出しにくいことだとは思いますが、残される者の方からするとそれ以上に聞きにくいものです。次の世代への責任と考え、専門家に相談のうえで実行してみてはいかがでしょうか?

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10月4日、我が南武線にE233系デビュー!

(マニアックなネタですみませんm(_)m)
 

vol.121(since 07/01/07〜) 

14/06/06

 前回は「贈与税が、安くなる???」と題して、贈与税の改正についてお伝えしました。
 それに関連して、贈与税の改正ネタをもうひとつ。

 具体的には、平成27年1月1日以後の贈与より

 贈与者:65歳以上→60歳以上

 受贈者:20歳以上の推定相続人→20歳以上の推定相続人及び孫

 と、精算課税がより使いやすくなったといえます。

 しかし、「そもそも、相続時精算課税って何?」と思っている方も多いと思います。
そこで、「第2の贈与の方法」である、相続時精算課税の概要について触れてみましょう。

 前回の記事でも触れた通り、贈与の方法には

① 暦年贈与
② 相続時精算課税贈与

 の2種類がありますが、一般的には贈与税の申告は①の方法により行われています。

①の方法では、

 贈与税額=(その年に贈与を受けた金額−基礎控除110万円)×10%〜50%(平成27年より55%)の累進税率

となります。基礎控除は年110万円で、贈与税は年単位で計算します。

他方、②の方法では、

 贈与税額=(その年までに贈与を受けた金額の累計額−特別控除2500万円)×20% 

となります。

 例えば、父と長男との間で②の方法を選択した場合、父から長男への贈与の金額の累計額が2500万円になるまでは無税で贈与が可能です。累計額が2500万円を超えた場合、超えた年から、越えた金額の20%の贈与税が課税されることになります。

 これだけだと、②の方が確実に有利ですよね。相続時精算課税の特徴は、その名の通り、「この制度を選択して贈与した財産は、贈与者の相続の時に、相続財産として相続税の課税対象とする」ことにあります。


 例えば、父から長男に、この制度を利用して生前に3000万円贈与したとします。贈与税は(3000万円−2500万円)×20%=100万円。父の相続発生時には、この3000万円は、長男が相続により取得したものとして、相続財産に加算して父の相続税の計算をすることになります(長男が支払った贈与税は、長男が父の相続時に支払う相続税額から控除されます)。


 つまり、この方法により贈与しても、相続税は減らないので、基本的には相続「」対策にはなりません。


 では、どのような場合にこの制度を選択すればよいのでしょうか?
 

 最も有効なのは、自分の特定の財産を、特定の子や孫に、自分の意思で生前にあらかじめ贈与したい、といったケースです。さらに言うと、相続税がかからないと見込まれる場合は確実に有利となります。

例えば、

・自分の経営している会社の自社株を、後継予定者に贈与する
・自宅の土地建物を、同居している長男に贈与する

などが考えられます。

 なお、この制度には、

・選択するためには届出書の提出が必要

・いったん選択したら以後変更できない

・特定の贈与者と受贈者毎に選択可能

・相続時に相続財産に加算される金額は、相続時の価額ではなく、贈与時の価額となる

などの注意点があります。

選択に関しては、充分に理解し、検討する必要があります。
そんな時は、どうぞお知り合いの税理士にご相談ください。

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vol.120(since 07/01/07〜)

14/05/08

 5月になりました。
 4月の消費税増税に際しては、思ったほどの混乱や、駆け込み需要の反動はなかったようです。
 私達のクライアントにも大きな影響はなかったようで、ホッとしています。

 さて、消費税の次は、相続税・贈与税の増税です
 もうご承知のことと思いますが、平成27年1月1日以後の相続・贈与より、相続税・贈与税が増税となります。
 

 主な改正点は、

  ・基礎控除の引下げ(相続税)
  ・最高税率の引上げ(相続税・贈与税)

 など、基本的には「増税」ですが、改正により若干緩和される部分もあります。
 今回は、「直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税率の緩和」についてスポットをあてます。

 贈与税には、

①暦年贈与
②相続時精算課税贈与

の2種類がありますが、一般的には贈与税の申告は①の方法により行われています。

①の方法によれば、

 贈与税額=(贈与を受けた金額−基礎控除110万円)×10%〜50%(平成27年より55%)の累進税率

となります。

 この「累進税率」が、平成27年1月1日以後の贈与より、

①直系尊属(親・祖父母)から20歳以上の者(子・孫)への贈与
②一般の贈与

の2種類に区分され、贈与する金額によっては、①の方が②より低い税率で贈与ができるようになりました

 仮に祖父が孫に現金を贈与した場合、平成26年と平成27年とではどのくらい税額が異なるのか、シミュレーションしてみましょう。

① 200万円を贈与した場合

  平成26年→9万円 
  平成27年→9万円(±0)

② 500万円を贈与した場合

  平成26年→53万円 
  平成27年→48.5万円(−4.5万円)

③ 1,000万円を贈与した場合 

  平成26年→231万円 
  平成27年→177万円(−54万円)

となります。

 以上の通り、親から20歳以上の子や、祖父母から20歳以上の孫に対し、財産(現金とは限りません)を贈与する場合、その価額が概ね500万円以上であれば、今年よりも来年に贈与した方が贈与税が少ないと言えます。


 贈与の目的は「生計の援助」「世代間の資産移転」「相続対策」などがありますが、そもそも非課税であるものや、教育資金・住宅取得資金の非課税制度を活用できるケースもあります。


 大事なのは「何のために贈与をするのか?」ということ。その目的に沿って、今回の改正を有効に使っていきましょう。

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ピアノ、始めました!

巷で話題の、教育資金贈与を考える。

13/07/01


 最近、クライアントへ巡回監査に訪問すると、かなりの確率でこの質問を受けます。

 「上甲さん、教育資金の贈与税の非課税って、どうなの?」


 信託銀行のコマーシャルや営業攻勢?もあって、皆様の関心の高さがうかがえます。

 制度の概要については、

 が詳しいので、リンクを参照してください。

 ここでは、私なりの視点で、この制度の特徴を考えてみたいと思います。

特徴1 そもそも「一括」でなければ非課税


 扶養義務者(=配偶者、直系血族、兄弟姉妹など)が、必要な都度、生活費又は教育費として贈与する財産は、もともと非課税とされています。

 例えば、孫の入学金を、入学時に祖父が直接支払った場合、贈与税は課税されません。
 ただし1年分の学費を、一括して孫の預金口座に振り込む、といった行為は課税対象となるので、この制度を利用すれば非課税、ということになります。 

特徴2 相続対策としての贈与


 相続税が発生する見込みのある人が、生前に財産を贈与すればその人の財産は減少し、相続税も少なくなります。

 しかし相続開始前3年以内に、「相続により財産を取得する者」が贈与により取得した財産は、相続財産に加算して相続税を計算する(ただし、支払った贈与税は控除できる)こととされているため、贈与後3年以内に贈与者が死亡した場合の相続財産は贈与前と同じ金額になり、節税効果は生じないことになります(生前贈与加算)。

 今回の制度を利用した場合、この生前贈与加算の適用はありません。
 
例えば、親が子に教育資金として500万円を一括贈与し、3年以内に贈与者が死亡しても、その500万円は親の相続財産に加算する必要はなく、贈与税もかからないことになります。

 ここで注意が必要なのは、生前贈与加算は「相続により財産を取得する者(=相続人及び遺言で財産を受ける人)」にのみ適用されるという点です。
 逆を言うと、もともと相続により財産を取得しない者(例えば、遺言のない孫やひ孫)には適用されません。

 例えば、祖父が孫に500万円の贈与を行い、3年以内に祖父が死亡しても、祖父の相続財産に孫の贈与財産を加算する必要はなく、孫は500万円に対する贈与税を支払えばよい、ということになります。
 

 まとめると、「相続により財産を取得しない者」への贈与は、
①今回の制度を利用した場合    生前贈与加算なし、贈与税非課税
②通常の贈与(暦年贈与)の場合  生前贈与加算なし、贈与税課税
となります。

特徴3 教育資金として払い出すかどうかは、金融機関が判断
 

 この制度は、金融機関と受贈者(又は贈与者)が「教育資金管理契約」を締結し、贈与した金銭を金融機関が管理する、という点に特徴があります。

受贈者は、

①学費等を一度立替払いし、領収書を金融機関に提出して口座から引き出す
②必要な都度口座から引出を行い、年に一度金融機関に領収書を提出して精算する

 の、どちらかの方法を選択します。

 非課税となる「教育資金」については、法令等で定められていますが、中には判断に迷う支出があると思われます。
 それが「教育資金」であるかどうかを判断するのは金融機関であり、場合によっては金融機関や支店によって対応が異なる、などということもあるかもしれません。
 

特徴4 30歳で、課税の可能性

 教育資金管理契約は、受贈者が30歳になった場合、又は口座の残高がゼロになった時に終了します。

この時点で、

 贈与を受けた金額−教育資金として使用した金額

がプラスになる場合贈与税が課税され、例えば、以下のようなケースが考えられます。

①30歳で、使い残しの金額がある場合
②残高はゼロになったけど、教育資金として使わなかった金額がある場合 

 つまり、「非課税」とは贈与時点での話であって、教育資金として使用しなかった分は後で贈与税を払う、ということになります。

 今回の制度は、「世代間でキャッシュを移転し、経済を活性化させる」という政府の方針のもと、鳴り物入りで創設されましたが、「教育資金」という縛りがあるため、実際にどの程度活用されるかは未知数です。

 ともあれ、「そろそろ孫に財産を」と考えていた方にとっては、魅力があるのも事実です。せっかく贈与をするのであれば、孫や子供たちに感謝されるよう、うまく制度を活用してみてはいかがでしょうか。

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10/04/12


 前回の記事でお知らせした通り、3月27日に積水ハウスのセミナーが行われました。

 当日は好天にも恵まれ、またロケーションが良い(山下公園の目の前 パスポートセンターの入っているあのビルです)こともあったせいか、多くのお客さまが来場されました。


 私のセミナーのテーマは「平成22年度税制改正に伴う資産継承の方法」だったのですが、会場はほぼ満席。皆様の熱心に話を聞く様子に私も熱が入り、あっという間に1時間が過ぎてしまいました。

 さて、このセミナーで私が一番伝えたかったこと、それは相続「税」対策ではなく、「相続対策」を行ってください、ということです。

 私が考える「望ましい相続=資産継承」とは、

1 亡くなった方の志(こころざし)を活かす
2 受け継いできた財産(土地、会社など)を、後を継ぐべき人に継いでもらう
3 相続人間で揉め事がない
4 相続税が、遺産の現金預金の範囲内である

 その結果、関係者みんなが「よかったね」と言い合える。そんな資産承継を行うために、生前に対策を講じるのが「相続対策」であると私は考えます。

  税制は毎年のように変わります。相続「税」対策として実行したことが、税制改正によって効果が全くないものになってしまう、というのは珍しいことではありません。相続「税」対策は重要ですが、あくまでも「相続対策」の一つとして考えるべきです。

 遺言や贈与を活用することなどにより、相続への対策は事前に充分に準備をすることができます。相続「税」対策にとらわれることなく、ぜひ「相続対策」をお考えください。

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横浜市営地下鉄 関内駅[1番出口]徒歩7分
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駐車場の有無
専用駐車スペース無し
(コインパーキングが近くに多数ございます)

営業時間

平日9:00-17:00