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vol.225(since07/01/07~)
23/09/04
前回の記事で、贈与税の改正について、
①暦年贈与
相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前7年以内(改正前:3年以内)に被相続人から暦年贈与を受けていた場合、その財産の価額は相続税の課税価格に加算する(基礎控除部分も加算するが、4~7年以内贈与財産からは計100万円控除)
※「3年以内」から「7年以内」に移行するまでの間に経過措置有
②相続時精算課税贈与
基礎控除の創設
(年110万円 各年の贈与財産のうち基礎控除以下の部分は加算されない)
①②いずれも令和6年1月1日以後の贈与から適用
と書きました。
今回はこの改正によって、制度を選択するにあたりどのような点に注意したらよいのかを、ケーススタディから考えます。
<ケース1>
2024年から2030年まで7年間、毎年200万円を(推定)相続人に贈与(贈与総額1400万円)
相続開始日 2031年1月1日、とします。
そうすると、この贈与が
①暦年贈与の場合 200万円×7年-100万円=1300万円を持ち戻す
②精算課税の場合 (200万円-110万円)×7年=630万円を持ち戻す
となり、②精算課税の方が加算する財産が少なくなります。
つまり、「相続開始前7年間に贈与した場合、②精算課税が有利」となります。
しかし、相続はいつ開始するかわかりません。
②精算課税を選択するためには届出が必要ですが、ではいつから②精算課税に切り替えればよいのでしょうか?
その答えに正解はありません。贈与開始から相続開始までの期間が何年間になるか(なったか)は、あくまでも結果論です。次のケースを見てみましょう。
<ケース2>
2024年から2043年まで20年間、毎年200万円を(推定)相続人に贈与(贈与総額4000万円)
相続開始日 2044年1月1日、とします。
そうすると、この贈与が
①暦年贈与の場合 200万円×7年-100万円=1300万円を持ち戻す
②精算課税の場合 (200万円-110万円)×20年=1800万円を持ち戻す
となり、①暦年贈与の方が加算する財産が少なくなります。
この有利不利の分岐点は、贈与財産の価額及び期間により異なります。従って「相続開始前7年超にわたって贈与した場合、有利不利はその贈与財産の総額及び贈与期間による」となります。
しかし贈与財産の価額によっては、贈与期間にかかわらず、常に②精算課税が有利になる場合があります。
<ケース3>
2024年から2043年まで20年間、毎年110万円を(推定)相続人に贈与(贈与総額2200万円)
相続開始日 2044年1月1日、とします。
そうすると、この贈与が
①暦年贈与の場合 110万円×7年-100万円=670万円を持ち戻す
②精算課税の場合 (110万円-110万円)×20年=0円(持ち戻しなし)
となり、②精算課税の場合加算する財産はありません。
つまり、「年110万円以下の贈与の場合、常に②精算課税が有利」となります。
整理すると、
・贈与開始から7年以内に相続が発生した場合、②精算課税が有利
・贈与開始から7年超に相続が発生した場合、有利不利はその贈与財産の総額及び贈与期間による
・年110万円以下の贈与の場合、常に②精算課税が有利
となります。
制度の仕組みから上記のように整理してみましたが、実際にどうしたらいいか?というとそう単純な話ではありません。
それは
・相続がいつ発生するかわからないこと
・贈与は①暦年贈与が原則であり、②精算課税を適用するには選択が必要で選択後は後戻りができないこと
によります。
ここでいう有利不利は、「財産に対する相続税額+贈与税額が多いか少ないか」というものです。そうするとそれは「相続がいつ発生したか」という結果論に帰結します。
前回の記事で述べたように、令和5年度改正の趣旨は「多くの資産を保有する「老年世代」から経済活動の中心である「若年世代」へ早期に資産を移転し、経済を活性化させたい」との国の思惑によるものです。
これを踏まえて、今回の改正を、生前贈与及びその方法を検討するきっかけとして考えればよいのではないでしょうか。
なお①暦年贈与②精算課税を選択するにあたり、他にもいくつか注意点があります。これは次回の記事で述べます。
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