10/08/08
さて、事業を承継するにあたって、税務上はどのような点に注意すればよいのでしょうか?
事業承継に関する税務といえば、平成21年度の税制改正で「鳴り物入り」で登場した、いわゆる事業承継税制(相続税・贈与税の納税猶予)を思い出される方も多いと思います。
以前にも書きましたが、中小企業の事業承継を阻害する大きな要因として、オーナー経営者が所有する「自社株式」の処分があります。つまり、換金性のない「自社株式」の評価額が高いため、生前に譲渡しようとすると後継者に多額の取得資金が必要となり、また贈与すれば多額の贈与税が発生する。また相続まで持ち越すと、相続財産として後継者に相続税の負担が生じるばかりでなく、他の相続人との分割協議をうまくまとめなければならない。この「自社株式」の処分がうまくいかないために、やむなく廃業する会社もあるほどです。
このような状況に対応して、国が制定したのがいわゆる「経営承継円滑化法」です。この法律は3本柱 (@遺留分の民法特例A金融支援B相続税・贈与税の納税猶予)から成っていて、Bがいわゆる「事業承継税制」と呼ばれるものです。
この税制の要点を簡単にまとめると、
1 オーナー経営者が所有する自社株式を、贈与や相続によって親族である後継者に承継する場合、一定の税額(贈与税・相続税)の納税を猶予する。
2 この制度を活用するためには、経済産業大臣の「事前認定」と「事後確認」の手続きが必要である。
3 あくまでも納税を「猶予」する制度であり、「免除」する制度ではない。従って、要件を満たさなくなった場合は後で猶予税額を納税しなければならない。
となっています。
そして制度施行から1年以上経過し、先日中小企業庁の「中小企業白書」で平成21年度の制度の利用実績が発表されました。平成21年度の実績は、相続税に係る認定153件、贈与税に係る認定29件。共に「わずか」と言っていいでしょう。制度が複雑でわかりにくいことが一因となっているようです。
もう一つの問題は、納税猶予の「効果」です。猶予税額の計算が、これまた複雑でわかりにくくなっているため、オーナー経営者の財産の総額、財産全体に占める自社株式の割合、また後継者の相続割合などによっては、「せっかく手続きした割に猶予税額がそれほどでもなかった」ということもあり得るのです。
もちろん、会社の状況によっては、この制度が事業承継の「潤滑油」となる可能性はあります。この制度を利用するのに大切なことは、オーナー経営者の相続シミュレーション及び納税猶予シミュレーションを行い効果を測定すること、そして相続人みんなで相続に対するコンセンサスを得ることです。この制度の進展状況については、今後も随時レポートしていきます。
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