現金管理できなければ、経営の資格なし。

13/10/07

 先日、とあるクライアントの税務調査があったのですが、久しぶりの経験をしたので記事にUPします。

 調査の冒頭、調査官が「では、現金調査を行いますので、本日現在の現金出納帳と手持現金を見せてください」と言ったのです!!

 この「現金調査」、飲食店や小売店など、BtoCで現金商売を行っている会社であれば当然実施しますが、このクライアントはBtoBで、小口現金の動きはあまりありません。不意を突かれた感じで、ちょっと驚きました


 ちなみに、このクライアントは小口現金が2つあり(それぞれ別の担当者が管理)、前日まできちんと出納帳を記帳していました。担当者が調査官の目の前で現金在高を数えたところ、1つは出納帳の金額と一致しましたが、1つは差が生じていました。しかし差額は僅かで、その場で原因が判明したため、調査官も納得して現金調査は無事終了しました。

 担当者はさぞ緊張したことと思います。なぜなら調査官だけではなく、社長の目の前でお金を数えるのです。もし間違いがあったら・・・・・と想像すると、相当なプレッシャーではないでしょうか?

 さて、現金に関しては、経営の世界で鉄則があります。

 「現金管理できなければ、経営の資格なし。」

 調査云々に関わらず、経営の大原則です。

 事実、現金管理ができている会社は、社長がしっかりと会社の経営状況を把握しています。

 社長さんは、御社の現金がどこで、どのように管理されているか、知っていますか?

 残高はいくらくらいか、把握していますか?

 「ベテランの経理に任せてあるから大丈夫」実は、それが担当者へのプレッシャーになっていませんか?

 帳簿上、常に数十万円の現金がありますが、本当ですか?

 もし数十万円の現金が常にあったとしたら、セキュリティは大丈夫ですか?

 現金管理の基本は、

・残高を少なくする

・定期的に、複数の目でチェックする

 につきます。

 金種表があれば、なお可です。

 経営を見直そうと考えている社長さん、是非一度、現金実査を行ってみてください。

 きっと、御社のいろんな面が見えてきますよ。

「毎月の訪問、毎月の報告、毎月の安心」

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10/11/13

 ここのところ、「税務調査」に関連した記事を続けて掲載しました。というのも7月以降、上甲会計のお客さに対する税務調査が久しぶりに続いたからなのです(法人2件、相続1件)。そこで法人の方はもちろんのこと、個人の方にとってもどうしても避けることができない税務調査への「対処法」を、今後シリーズでまとめていきたいと思います。

 題して<税務調査はこうやって乗り切る!> 

 第1回目は<調査の連絡があったら・・・>編です。

 税務調査は通常の場合、税務署からの「税務調査に伺いたいのですが・・・・・」という1本の電話から始まります。(通常でない場合は、「マルサの女」のような強制捜査の場合です。)


 この連絡は、顧問税理士がいる場合(具体的には、申告書に「税務代理権限証書」が添付してある場合)は、必ずその税理士宛に入ります。また、申告書に税理士の「書面添付」がある場合は、調査の前にまず税理士への「意見聴取の連絡」という形になります。

 税務調査は、基本的に拒むことはできません。ただし、日時や場所の調整は可能です。調査への応対者(一般的には、社長や経理担当者)が出張や休暇等で不在の場合、また調査の場所が「納税地」では不適当な場合などは、調査官や税理士にその旨を伝え、話し合いをした上で日時及び場所を決めましょう。

 また、顧問税理士には税務調査に立会う権限があります。顧問税理士に調査の立会いを依頼する場合は、顧問税理士との日程調整も同時に行いましょう。

 では、ある日突然調査官が「××税務署の者ですが、税務調査に伺いました」と言って、予告なしに会社や自宅に来た場合はどうしたらよいでしょうか?

 この場合の対応はただひとつです。調査官に「今顧問税理士に連絡を取りますのでお待ちください」と告げ、そのまま待ってもらい、直ちに顧問税理士に連絡して指示を仰いでください。特に「書面添付」を行っている場合、現地調査の前に必ず税理士からの「意見聴取」を行うこととなっています。無予告で調査を行うには、それ相応の理由がなければなりません。


 調査の日時場所が決まったら、次は調査の準備に入ります。

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11/02/06

 さて、税務調査の日時・場所が決まりました。では調査当日までにどのような準備をすればよいでしょうか?


 結論から言うと、税務調査だからといって何か特別なものを準備をする必要はありません。日頃から作成・保存している「書類」を用意しておけばよいのです。

 では、具体的にどのような「書類」を用意しておけばいいのでしょうか?それは概ね以下のようなものになります。


1 会計帳簿 (総勘定元帳、会計伝票、手形記入帳、得意先元帳、仕入先元帳など)

2 売上関係資料(納品書控、請求書控、領収書控など)

3 仕入・経費関係資料(棚卸表、納品書、請求書、領収書など)

4 人件費関係(賃金台帳、源泉徴収簿、タイムカードなど)

5 社内規程(就業規則、役員退職金規程、旅費規程など) 

6 契約書関係(売買契約書、賃貸借契約書、保険証券など) 

7 議事録(株主総会議事録・取締役会議事録など)

 通常の税務調査は、直近1年分の決算に係る帳簿書類を調査し、その中で疑問点が生じた場合、ポイントを絞ってそれ以前の書類の提示を求める、といった方法により行われます。
 そこで調査の際は、直近1年分の決算に係る帳簿書類は予め調査の会場に用意しておき、それ以前の書類は提示を求められた時にすぐに提示できるよう準備しておきましょう。

 ポイントは、「書類を求められた時にすぐに提示できる状態にしておくこと」です。調査官も人の子です。適時に対応することにより印象が良くなりますし、何よりも調査時間の短縮につながります。

 さて、いよいよ調査当日。次回は調査当日の対応についてお話しします。

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11/06/17

 昨年末より、<税務調査はこうやって乗り切る!>というシリーズでこのブログに記事を書いてきましたが、大震災でしばらく中断してしまいました。そこで前回の記事に続き、「現地調査(心構え編)」からシリーズを復活させようと思います。

 いよいよ税務調査当日です。百戦錬磨の社長さんならいざ知らず、調査官と直接やりとりをする経理担当者はとても緊張するものです。何年も前の会計処理のことを聞かれても、すぐには思い出せないこともあるでしょう。また経営者の場合、事実は覚えていても細かい会計処理については知らない事の方が多いかもしれません。

 ここで大切なのは、調査官の質問に対しイエスorノーをはっきりと答える、ということです。知らないことは「知らない」、わからないことは「わからない」と、はっきり返答しましょう。また税務調査では様々な資料の提示を要求されますが、これらの資料について「今用意できるもの」「後日用意することが可能なもの」「用意できないもの」 に区別して、その旨きちんと伝えましょう。

 調査が進む中で、調査官は会社側の処理に対して様々な質問や指摘を行います。その指摘に対し、納得できない場合は会社側の考え方や意見をしっかりと主張しましょう。一方で、会社側の会計処理・税務処理の明らかなミスが発見されることがあります。その場合、ミスと判断したらその場で認める勇気も大切です。

 調査の現場で大切なのは、調査のポイント一つ一つの「是々非々」をはっきりさせることです。調査官も人の子です。会社の対応の仕方から調査官が得る「心象」は、調査の結果を左右する重要なファクターとなります。調査官が御社の調査に費やす時間は限られているのです。調査官の問いに対し「黒」「白」「グレー」と明確に仕分けしながら対応することが、調査の早期終了につながります。

 調査の心構えについては以上のとおりですが、御社に顧問税理士がいる場合は全て顧問税理士がフォローします。事前に顧問税理士と打ち合わせを行い、不安な点は解消しておきましょう。

 次回は現地調査の具体的な流れをご説明します。

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2011/07/11

 さて、いよいよ調査開始です。現地調査は、おおよそこんな手順で進行します。

1 会社の概況確認
 会社の社歴、事業の内容、最近の業績、主要取引先の状況など、全般的な話から始まります。会社のパンフレットなどがあれば説明しやすいでしょう。なお、冒頭は社長が同席し、社長自らが説明しましょう。

2 社内体制の確認
 部署や支店等、会社の組織体制がどうなっているかを聞き取ります。組織図があれば提示しましょう。この際のポイントは、誰がどのような決済権限を持っているか、ということです。特に、会社の実印や銀行印は誰が持っているか(=最終意志決定権者は誰か)、の確認は重要なポイントになります。

3 現場の確認

 ひと通りの聞き取りを終えると、現場の確認となります。製造業の場合は工場、小売店の場合は店内、卸売業や倉庫業の場合は倉庫、などを実際に見学します。そこで主な機械の設置状況や、在庫の管理方法、製品や商品がどのように現場を動いて出荷に至るかなど、業務の実際の流れを確認します。

4 現金実査

 小売業や飲食店など現金商売の場合は、現金残高の確認を行います。具体的には、本日(または前日)現在のレジや金庫等の現金在り高と、現金出納帳の残高が合っているか、実際に現金を数えてチェックします。これが合っていないと、普段の現金管理及び現金出納帳の信用性を疑われることになります。

さて、会社の概況をつかんだ後は、帳簿書類に基づく調査に移ります。

5 売上

 売上を計上するにあたって、どのような書類に基づいて、どのタイミングで行っているか、受注書や納品書、請求書等から確認します。ここでのポイントは、当期末及び翌期首の売上が適正に計上されているかどうかです。いわゆる〆後売上(請求が翌期になっていても納品が当期になっているもの)がないかどうか、という点は入念にチェックします。

6 仕入・棚卸

 仕入についても売上と同様です。ポイントは、売上との対応です。当期末に仕入を行った商品で翌期に売上が計上されている場合は、当期の在庫として計上されているはずです。また在庫のうち、取引先等に預けてあるもの(社外在庫)がないかどうかも確認事項となります。さらに、棚卸資産の評価が適正であるかどうか(運送費等の関連費用を含めて単価計算をしているか)もチェックポイントです。

調査が2日間の場合、ここで一区切りというケースが多いです。2日目は経費科目の確認となります。 

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11/08/09

さて、税務調査は引き続き、経費項目の確認に移ります。


7 人件費

 経費の中で最も重点が置かれるのが、人件費です。人件費の調査にはいろいろな切り口があり、調査官によってもそれぞれの得意分野があるようです。組織図や賃金台帳、タイムカードなどを見ながら行います。以下、主なチェックポイントは以下の通りです。

・ 役員給与<定期同額要件を満たしているか、過大役員給与にあたらないか、賞与の支払いはないか、みなし役員に該当しないかなど>

・ 源泉所得税<外注費の中に給与が含まれていないか、乙欄適用者なのに甲欄を適用していないか、通勤費が非課税限度額をオーバーしていないかなど>

・ 架空人件費<勤務実体がない人に給与を支払っていないかなど>

8 交際費

 人件費に次いで調査重点項目となるのが、交際費です。社長の個人的な支出がないか、福利厚生費・会議費・広告宣伝費・諸会費などの中に、税務上の交際費がないかどうかなどの確認をします。税務の世界で言う交際費は、私たちが普通に考える交際費よりも範囲が広いため、会社側と税務署側との認識が一致しないことが多く、しばしば論点となります。


9 修繕費

 不動産賃貸業や倉庫業、製造業などのいわゆる「装置産業」は、建物や機械などの年数が経つに従い必ず改修費用が発生します。しかし「改修費」が全て「修繕費」になるとは限りません。改修費のうちに資産として計上すべきものがないかどうか、工事明細等からチェックします。


10 保険料

 近年は節税対策として、会社が契約者(=保険料負担者)及び保険金受取人、被保険者を社長、役員、従業員とする保険に加入するケースが増えていますが、保険加入の目的を説明できるようにしておきましょう。また契約形態により、全額損金やハーフタックスなど経理処理も異なります。調査では、保険証券により契約内容及び経理処理を確認することとなります。


11 同族関係者との取引

 例えば、社長の自宅を会社に賃貸し、会社が社長に家賃を支払っている場合、契約書はあるか、社長は確定申告をしているかなど、書類上のチェックを行います。また会社が社長に金銭の貸付を行っている場合、合理的な理由があるか、利息を計上しているかなどを確認します。親族に対する給与も要注意項目です。

12 臨時多額の取引

 例えば、「貸倒損失」や「役員退職金」を税務上の損金とするためには、形式要件(「債権放棄通知を行っている」「株主総会議事録の決議がある」)及び実質要件(「相手先は事実上の倒産状態にある」「退職の事実がある」)の両方を満たすことが必要な場合があります。イレギュラーな取引は必ず確認事項になります。


13 消費税

 法人税の調査と併せて、消費税の調査も行われます。特に輸出業等で毎年還付申告となる会社は、消費税の確認が調査の目的であるケースがあります。消費税の計算明細や、インボイスなど輸出入に関係する資料などを提示できるよう準備しておきましょう。

 以上で現地調査は終了です。以前の記事でも触れましたが、最後に調査のポイントを確認(黒・白・グレーの区別)するのを忘れないようにしましょう。

 調査の対応、どうもお疲れ様でした。ほっと一息、と言いたいところですが、実はまだ調査は終わっていません。むしろここからが勝負どころです。次回は、現地調査後の対応についてお話します。

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11/09/06


 さて、現地調査が終了して数日後、取引先(仕入先)のA社長からこんな電話がかかってきました。

A   「社長、調査入ったの?」
社長 「うん、どうして知ってるの?」
A   「実はさっき税務署の調査官がうちの会社に来て、社長の会社への売上伝票や納品書を見せて欲しいって言ってね。うちも別に隠すものはないから見せたら、わかりましたって言って帰ったよ。それにしても、社長、大変だね。」
社長 「・・・・・。」

 これがいわゆる<反面調査>です。

 現地調査で資料の確認ができなかった場合や、会社側が提出した資料(例えば、仕入先からの納品書)の<ウラ>を取りたい場合に、その資料を発行した会社(=仕入先)へ調査官が直接出向き、資料の確認を行うことがあります。そしてこの場合、調査官が調査を受けている会社に対し、「◎月◎日、A社に反面調査に行きますよ」と、事前に知らせることは通常ありません。


 ところで、調査官が会社に予告なくして<反面調査>を行うことは許されるのでしょうか?調査官は<質問検査権>という権限に基づいて調査を行うため、反面調査はその権限の範囲内である、というのが税務署側の言い分です。そのため、反面調査先が取引先であろうと、銀行であろうと、基本的には調査官の資料開示請求に<協力>することが求められます。


 しかし、反面調査先はちょっと驚くのではないでしょうか。自分が逆の立場になった場合を考えてみてください。反面調査先での調査官の応対の仕方によっては、「あの会社、何か悪いことでもしてるんじゃないだろうか?」と相手に思われないとも限りません。万が一、調査によって取引先との関係に影響が出たとしたら、一体だれが責任をとってくれるのでしょうか?


 反面調査に関しては、<質問検査の必要があり、かつ、社会通念上相当な程度にとどまる限り>実施することに問題はない、というのが通説になっています。以前とは違い、最近の調査官は上で述べたような<誤解>を与えるようなやり方の調査はしないとは思いますが、反面調査が入った場合は取引先に対しこちら側からも十分に事情を説明しておきましょう。そして、もしそのやり方に問題があるようであれば、調査官に対し毅然とした態度で臨むことも必要です。もちろん、顧問税理士がいる場合は、税理士を通して対応しましょう。

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11/10/19

 さて、現地調査が終了し、税務署側で資料整理が終わると、税務署から連絡があって通常は税務署に出向くことになります。顧問税理士がいる場合、ここから先は税理士と税務署側との<交渉>となりますが、そうでない場合は会社が直接対応することになります。


 さあ、調査もいよいよヤマ場です。最も理想的なのは、<修正事項なし→調査終了>というパターンです。これを<是認>といいます。是認の場合、税務署からいわゆる<是認通知書>という書類が交付されるか、又は口頭の連絡のみで調査終了となります。


 次に、税務署側から修正申告を求められるケースです(実際は、このパターンが最も多いでしょう)。その<求め>に対し、どのように応じるかによって調査の着地点は大きく異なることになります。

 ここで、私たちが知っておかなければならないポイントがあります。それは、<修正申告をしたら、後で取り消しを求めることはできない>ということです。修正申告は、納税者が自らの「誤り」を認め、自分の意思で「正しい」申告をし直すという手続きなのです。仮に税務署側で作成した修正<案>を提示されたとしても、それはあくまで<案>に過ぎません。その<案>に従った修正申告書を提出するかどうかは納税者が決めることなのです。


 では、税務署が提示した修正<案>に納得できない場合はどうすればよいのでしょうか?

 まずは税務署側の修正の根拠を聞き、こちら側の主張を伝えて、税務署側と<交渉>することになります。そのうえで修正<案>に納得すれば、修正申告書を提出することになります。また、<交渉>の結果、税務署側が新たな修正<案>を提示することもあります。いずれにせよ、修正内容に同意した段階で、修正申告書を提出するのが一つの方法です。

 その一方で、<交渉>したけれども税務署側の修正<案>にどうしても納得できないケースもあります。修正申告は<自らの意思で提出する>ものなので、修正の意思がなければ修正申告書を提出しなくてもかまいません。しかしその場合、今度は税務署側が<更正>という処分により税額を決定し、追徴することになります。

 「なんだ、結局は<修正>と同じじゃないか!」結果だけみれば、その通りとなるケースが多いでしょう。しかし<修正>が納税者側の自主的な「申告」であるのに対し、<更正>は税務署側の「処分」であるというのが根本的に異なる点です。ということは、この「処分」に不服であれば、「異議申立て」「審査請求」、さらには「訴訟」への道が開かれることになり、最後には司法の判断を仰ぐことができるのです。


 では、少しでも納得できない場合はこちらからは<修正>せず、税務署の<更正>を待ったほうがよいのかと言うと、現実はそう甘くはありません。税務署側の<更正>を不服として異議申立て等を行ったとしても、納税者側がその処分をひっくり返す確率は極めて低いのが現状なのです。加えて、この手続きが終わるまでには長い時間と膨大な手間・費用が生じます。中小企業がこの作業に費やす労力は並大抵のものではありません。

 <修正>と<更正>の違いにこだわって書きましたが、これはあくまでも「手続き」の話に過ぎません。話をまとめましょう。私たちが調査を気持ちよく終わらせるためには、税務署側が示す修正<案>のポイントをひとつひとつ確認し、これらが納得できるものであるかどうかを個別に判断して税務署側に伝えるべきでしょう。安易な妥協はしないけれど、受け容れるものは受け容れる、といった姿勢で<交渉>すれば、着地点が見えてくるはずです。

 さあ、税務調査は決着しました。後は、事後処理になります。

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11/11/07


 さて、税務署側との<交渉>の結果、修正案が固まりました。ここからは、修正申告を行うという前提で話を進めます。

 税務調査は、修正申告書の提出をもって終了します。修正内容にもよりますが、提出する申告書は通常<法人税><消費税><法人県民税><法人市民税>になります。内容が固ったら提出前に調査官に数字を確認し、OKが出たら速やかに提出しましょう。


 提出とともに、修正申告に基づき追加納付する税金を金融機関で支払います。支払は、申告書の提出と同時に行うのがベターです。そして、申告書の提出及び税金の支払が終わったら、調査官にその旨連絡を入れてあげたほうがよいでしょう。(そうすれば、もう調査官から電話がかかってくることはありません。)


 さて、これで調査に関連する手続きは終了ですが、最後にもうひと仕事残っています。
 修正申告書を提出した後、しばらくすると税務署から税金の納付書が届きます。修正申告時に支払った税金を<本税>と呼ぶのに対し、この税金を<附帯税>といいます。附帯税の支払いをもって、税務調査は名実ともに終了することになります。

附帯税は、以下の2種類です。

1 過少申告加算税 

  原則、本税の10%

2 延滞税 

  申告期限から修正申告までの期間に応じ、原則本税の4.3%/年(平成23年の割合)

 たとえば申告期限から1年後の修正申告で、法人税の<本税>を併せて50万円を支払ったとすると、<付帯税>は

1 50万円×10%=5万円

2 50万円×4.3%×12/12=2.15万円

 となり、計71,500円となります。

 ここで注意しなければならないことがあります。修正内容について、当初の申告が意図的な<仮装経理>や<所得隠し>であると税務署側が判断した場合、<過少申告加算税>の代わりに<重加算税>という、文字通り重い税金が課せられてしまうのです。この税率は本税の35%であり、事実上の制裁金です。

 では、修正内容が<重加算税>の対象になるかどうかは、いつ、どこで決まるのでしょうか?本来であれば、税務署側との<交渉>時に、調査官がその理由と併せて伝えてくれるはずですが、実際はこのことに触れずに調査が終了してしまうこともままあります。そして修正申告書提出後、納付書が届いた時に初めて<重加算税>であることを知る、というケースもあるのです。その時に慌てて税務署に抗議しても、後の祭りです。 

 <過少申告加算税>と<重加算税>。同じ<附帯税>ですが、この違いは甚大です。なぜなら納税額が増えるだけでなく、その会社に対する税務署側の評価や、以後の税務調査の取り扱いにも影響するからです。そこで、調査終了前の最後のポイント。修正内容を最終的に確認する際、「この項目は重加算税の対象にはなりませんよね?」とあらかじめ税務署側に確認しましょう。そして、もし「対象になります」と言われた場合、その根拠は何なのか、納得のいくまで話を聞くようにしましょう。

 以上、シリーズで「法人税」の税務調査の流れをお伝えしました。税務調査は法人税に限りませんが、他の税金の調査も概ね同じ流れと考えてよいでしょう。
 次回は法人税以外の税務調査について、そのポイントをお知らせします。

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11/12/05

 相続税の税務調査の特徴は、2つあります。

 まず第一は、<当人がいない>ことです。全てを知っているはずの<当人>は既に亡くなっています。そのため、調査官は<当人>の関係者、すなわち<奥様>や<子>を相手に調査を進めることになります。ところが関係者が<当人>の生活や、財産の状況などを必ずしも全て知っているとは限らないのです。いや、知らない方が普通でしょう。


 2つめは、<帳簿がない>ということです。会社や、個人で事業を行っている人には「記帳義務」及び「帳簿保存義務」がありますが、相続税の場合<当人>が事業者とは限りません。自分の財産の一覧や、日々の入出金の記録などをしている人は稀ではないでしょうか?


 この2つの特徴から、相続税の税務調査は、残されたありとあらゆる<記録>から、<当人>の財産の実体を<推定>し、<復元>する作業になります。<復元>するために調査する<記録>は、<当人>名義の通帳はもちろんのこと、家族名義の通帳や保険証券、メモ帳など、あらゆるものに及びます。預金口座や貸金庫の調査は当たり前で、実印の保管場所の確認、家族の筆跡確認、果てはたんすを開けるよう要請されたりと、相続税の調査においては個人のプライバシーはないのではないか、と感じられても不思議はありません。

 加えて、相続税の調査の当事者は<当人>の<奥様>や<子>であり、その多くは「専業主婦」や「サラリーマン」だったりと、普段税務署とは縁のない生活をしている方々です。そのため、どこまでが通常の調査の範囲なのか、いわば<勘所>がわからないため、調査官の言われるがままになってしまい不快な思いをする、ということも起きやすいと言えます。


 しかし、「マルサの女」で描かれているような強制捜査は別として、通常の税務調査はあくまでも<任意調査>です。調査だからといってなんでも許される、というわけではありません。調査の対象となった以上、税務調査は受けなければならないものですが、調査官の態度や要求、言動があまりにも「度を超えて」いるようなものであれば、それは許されるものではありません。


 相続税の調査を受けるのは、通常1人1回限りです。調査官は仕事だから慣れているでしょうが、受ける側は初めてなのです。初めてでは、わからない方が当たり前です。「なぜその資料が必要なのか」「何を知りたいのか」、納得できるまで聞きましょう。そして法人税と同様ですが、知らないことは<知らない>、違うことは<違う>と、はっきり言うことが大変重要になってきます。

 次回は、公益法人の税務調査についてお伝えします。

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11/12/20

 先日、あるクライアントで<源泉所得税>の調査がありました。

 このクライアントは<社会福祉法人>、つまり税法上の<公益法人等>に該当し、収益事業を行っていないため、法人税の申告納税義務はありません。(ただし消費税の課税事業者に該当するため、消費税の申告は毎年行っています。)


 設立10年目で初めての調査、しかも<源泉所得税>という、ちょっと変わった調査です。

 実地調査の内容はというと、給与台帳、源泉徴収簿、源泉税納付書などの書類から、適正に源泉徴収が行われ、かつ税額が納付されているかの確認が主なものでした。調査自体も1日弱で終了し、クライアントにも大きな負担はかかりませんでした


 景気低迷により国の税収が減少する中で、課税庁は今まで税務調査に縁が薄かった(と思われていた)社会福祉法人、NPO、社団・財団法人などの<公益法人>に対する税務調査を強化しています。そして、公益法人に対する調査の件数は今後増加することが予想されます。

 では、調査の内容はと言うと、

・行っている事業の中に、法人税法上の「収益事業」にあたるものがないか
・消費税の納税義務者に該当しないか
・印紙税や源泉所得税を正しく納めているか

 ということになるでしょう。

 それではこれらの調査に対して、何か特別な対策をとる必要はあるのでしょうか?

 印紙税・源泉所得税については、通常どおりの事務を行い、書類を保存しておけば特段問題はないでしょう。

 ただし、行っている事業が法人税法上の「収益事業」に該当するかどうか、また消費税の「課税事業者」に該当するかどうかについては、税法上の慎重な判断が必要になります。特に「収益事業」については、同じ事業を行っているのにもかかわらず所轄の税務署によって見解が異なることもあり、注意を要する分野です。公益法人の皆様には、自身の行う事業のうちに収益事業にあたるものがあるのかどうか、事前に税理士に相談することをおすすめします。

 以上で、税務調査に関する特集は終了します。昨年末より、全10回にわたっていろいろな角度から税務調査に関する情報をお伝えしてきました。税務調査は、事業を行っている以上残念ながら避けることはできません。しかし、誰でも受けるからこそ、委縮する必要はまったくないのです。「おかしい」と思ったら「おかしい」と言う、といった姿勢が調査の早期終了につながります。そして、税務調査で不安を感じたら、私たち税理士に早めにご相談ください。

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