vol.239(since07/01/07~)

25/07/01NEW!

 

前回の記事で、いわゆる「未分割申告」について、

 

申告期限までに財産の全部または一部が分割されていないときは、共同相続人が民法の規定による相続分の割合に従って財産を取得したものとして課税価格を計算し、期限内に申告することとされています。

 

ここで「民法の規定による相続分の割合」とありますが、具体的には何を指すのでしょうか?

 

と書きました。そして

 

①法定相続分

②代襲相続人の相続分

③遺言による指定相続分

④特別受益者の相続分

⑤相続分の譲渡に係る相続分

 

のうち、④特別受益者の相続分について述べました。
今回は、⑤相続分の譲渡に係る相続分について説明します。

 

まず「相続分の譲渡」とは、「積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する相続分の包括譲渡(最高裁判決① 昭和53年7月13日)」とされていて、遺産分割に代わる手法として、「遺産分割前」に他の「共同相続人」に対して行われる、のが通例です。
そして税務上は、ある相続人がその相続分を他の共同相続人に譲渡した場合、遺産分割と同様の課税関係が生じると解されています。

 

具体的には、相続税申告前に共同相続人間で相続分の譲渡があった場合は、その共同相続人各人の相続分は、その譲渡の結果を含めたところによる相続分になるとされていて、「譲渡人については法定相続分から譲渡した相続分を控除したものを、譲受人については法定相続分に譲り受けた相続分を加えたもの」という計算をすることになります(最高裁判決② 平成5年5月28日)。

 

事例で説明しましょう。

 

(事例1)被相続人A、被相続人の配偶者B、ABの長男C、及び次男D

     被相続人の相続開始時の財産の価額 10000万円

    イ相続分の譲渡がない場合の法定相続分

      B:10000万円×1/2=5000万円

      C:       ×1/4=2500万円

      D:       ×1/4=2500万円

    ロ被相続人の死後相続税の申告期限内に、BからCにすべての相続分の譲渡(無償譲渡)があったとします。

      B:10000万円   ×(1/2-1/2)      =   0万円

      C:          ×(1/4+1/2)       =7500万円

      D:          ×1/4                      =2500万円

 

実は「民法の規定による相続分の割合」に⑤相続分の譲渡に係る相続分が含まれるかどうかは、税務上明らかではありません(通達等に明示されていない)が、上記最高裁判決②においてこれに含まれるとの解釈が示されています。
未分割申告の場合、上記事例では、Bは相続分の譲渡によって納税義務者ではなくなり、Cは譲渡を受けたBの法定相続分を加えた3/4に、Dは法定相続分1/4に対応する課税価格に応じた相続税をそれぞれ申告・納付することになります。

 

そもそもなぜ「相続分の譲渡」が行われるのでしょうか?

 

例えば共同相続人間での遺産分割が長期に及ぶ場合、自己の相続分を早期に換金(有償譲渡)し、又は無償譲渡により煩わしい相続手続から離脱したい、と考える相続人がこの手続きを利用することが想定されます。
また、共同相続人間で争いがあるときに、特定の相続人に財産を取得させたくないという理由で別の相続人に相続分を譲渡する、というふうに利用されているようです。

 

この「相続分の譲渡」には、税務上、以下のような注意事項があります。

 

相続分の譲渡は民法上、共同相続人間だけではなく、第三者に対して行うことも可能とされています。しかしこの場合は上記「最高裁判決②」の取り扱いは適用されないとされています。
つまり相続分を第三者に無償譲渡した場合、その譲渡の効力は相続時に遡らず、譲渡人には相続分譲渡前の相続分に対して相続税が課税されると解されています(無償で譲り受けた第三者には贈与税が課される)。

 

相続分の譲渡は「無償譲渡」「有償譲渡」いずれかで行うことが可能です。
税務上、「共同相続人間」での「無償譲渡」の場合は前述「最高裁判決②」のとおり取り扱われます。
一方「共同相続人間」での「有償譲渡」の場合は、「譲渡人」に対しては「取得対価相当額」に相続税が課税され、「譲受人」に対しては「譲り受けた相続分」から「支払対価相当額」を控除した価額に対して相続税が課されます。

 

 

→カテゴリ:相続&贈与

 

 

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