事業承継の実務・事業承継税制

 

 

 

 さて、事業を承継するにあたって、税務上はどのような点に注意すればよいのでしょうか?

 

 

 事業承継に関する税務といえば、平成21年度の税制改正で「鳴り物入り」で登場した、いわゆる事業承継税制(相続税・贈与税の納税猶予)を思い出される方も多いと思います。

 


 以前にも書きましたが、中小企業の事業承継を阻害する大きな要因として、オーナー経営者が所有する「自社株式」の処分があります。つまり、換金性のない「自社株式」の評価額が高いため、生前に譲渡しようとすると後継者に多額の取得資金が必要となり、また贈与すれば多額の贈与税が発生する。また相続まで持ち越すと、相続財産として後継者に相続税の負担が生じるばかりでなく、他の相続人との分割協議をうまくまとめなければならない。この「自社株式」の処分がうまくいかないために、やむなく廃業する会社もあるほどです。

 


 このような状況に対応して、国が制定したのがいわゆる「経営承継円滑化法」です。この法律は3本柱 (@遺留分の民法特例A金融支援B相続税・贈与税の納税猶予)から成っていて、Bがいわゆる「事業承継税制」と呼ばれるものです。

 


 この税制の要点を簡単にまとめると、

1 オーナー経営者が所有する自社株式を、贈与や相続によって親族である後継者に承継する場合、一定の税額(贈与税・相続税)の納税を猶予する。

2 この制度を活用するためには、経済産業大臣の「事前認定」と「事後確認」の手続きが必要である。

3 あくまでも納税を「猶予」する制度であり、「免除」する制度ではない。従って、要件を満たさなくなった場合は後で猶予税額を納税しなければならない。

となっています。

 

 

 そして制度施行から1年以上経過し、先日中小企業庁の「中小企業白書」で平成21年度の制度の利用実績が発表されました。平成21年度の実績は、相続税に係る認定153件、贈与税に係る認定29件。共に「わずか」と言っていいでしょう。制度が複雑でわかりにくいことが一因となっているようです。

 


 もう一つの問題は、納税猶予の「効果」です。猶予税額の計算が、これまた複雑でわかりにくくなっているため、オーナー経営者の財産の総額、財産全体に占める自社株式の割合、また後継者の相続割合などによっては、「せっかく手続きした割に猶予税額がそれほどでもなかった」ということもあり得るのです。

 


 もちろん、会社の状況によっては、この制度が事業承継の「潤滑油」となる可能性はあります。この制度を利用するのに大切なことは、オーナー経営者の相続シミュレーション及び納税猶予シミュレーションを行い効果を測定すること、そして相続人みんなで相続に対するコンセンサスを得ることです。この制度の進展状況については、今後も随時レポートしていきます。

 

 

 

 

 

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事業承継税制:使い勝手が良くなりそうです。

13/04/01

 

 

 先週、平成25年度の税制改正法案が参議院を通過しました。
 年度内成立が危ぶまれていましたが、なんとか間に合ったようです。

 

 

 さて、平成25年度の改正は、久しぶりに「大型」改正となりました。

 

 

 今回の特徴は、「相続税の基礎控除引き下げ」や「教育資金贈与の1500万円非課税」など、サラリーマンや退職者などの一般の方々にも身近な内容が多い点にあります。
 しかし当「事業承継サポートセンター」が最も注目したのは、いわゆる「事業承継税制」の見直しです。

 

 

 事業承継税制の以前の記事は→こちら

 

 

 上のリンクの記事に書いたとおり、この制度の今までの評判は「理念は良いが、使えない」といったものでした。中小企業のオーナーのニーズが高いにもかかわらず、要件が厳しくかつ手続が複雑なため、実際に利用した人は極めて少なかったのです。

 


 さすがに国もこれではいけないと思ったのでしょう。今回の改正で大幅な条件緩和に踏み切ったようです。

 

 

現在わかっている範囲では、

 

1 経済産業大臣による「事前確認制度」の廃止
  →相続が発生した後でも使える可能性が出てきた

2 経営承継相続人の「親族」要件の撤廃
  →後継者が「第三者」、つまり従業員や「番頭さん」の場合でも使える可能性が出てきた

3 認定後5年間の「常時使用従業員数80%要件」の緩和
  →5年間の「平均」となるため、一時的に80%を下回っても要件を満たすことになった

 

などが挙げられています。

 

 

なお、適用は「平成27年1月1日」以後の相続又は贈与からとされています。

 

 

 改正の詳細はもう少し時間が経たないとわかりませんが、制度の適用を受ける際の「ハードル」がかなり低くなったのは間違いありません。中小企業オーナーの相続対策を考える場合、今後は必ず「事業承継税制」の適用が可能かどうかを検討することになるでしょう。

 

 

 そこで今まで以上に大切になってくるのが、「計画的な事業承継」と「事前のシミュレーション」です。

 

 

 今回の改正により、事業承継税制の適用は相続開始後でも間に合うようになりました。とはいえ、僅かな期間で制度を適用するかどうかのシミュレーションを行い、関係者の同意を得て、数多くの書類を作成し、期限までに申請をするのは大変な作業です。

 

 

 充分な時間の余裕を持って後継者を選び、シミュレーションを実施して、「贈与税の納税猶予」の適用を含めて検討することがベストの選択をする近道です。

 

 

 当「事業承継サポートセンター」では、円滑な事業承継を行うために今回の改正をうまく活用できるよう、今後も最新の情報に基づくサービスを提供して参ります。

 

 

 

 

 

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特例事業承継税制(1)〜キーワードは期日!「2023年3月31日&2027年12月31日」〜

vol.168(since 07/01/07〜) 

18/06/07

 

 

事業承継税制については、以前の記事で、

 

 

「使い勝手が悪く、利用件数が伸びない」

 

 

と書きました。

 

 

その後の記事で、改正で要件が緩和されたと書きましたが、抜本的なものではなく、利用状況に大きな変化はありませんでした。

 

 

「このままでは、日本の中小企業がなくなってしまう」。

その危機感から、平成30年度税制改正で創設されたのが「特例事業承継税制」です。

 

 

とても複雑な制度なので、今後数回に分けて説明しますが、まずは2つの重要な「期日」から押さえていきましょう。

 

 

1 2023年3月31日までに「特例承継計画」を提出

 

 

 この制度の適用を受けるためには、2023年(平成35年)3月31日までに、都道府県に「特例承継計画」を提出する必要があります。この計画は、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて会社が作成し、計画に支援機関の所見を記載しなければなりません。
 

 

 経営革新等支援機関には、4月現在全国で約28000件が認定されています。その多くは税理士や公認会計士で、当事務所も認定を受けています。この承継計画は、実務的には認定支援機関である顧問税理士の支援の下で作成・提出することになります。

 


 中小企業庁HPに掲載された申請書の記載例を見ると、後継者の氏名、承継時までの経営見通し、承継後の経営計画等を記載するようになっていて、全4〜5ページと比較的書きやすいものとなっています。 

 

 

2 2027年12月31日までの「贈与・相続」が対象

 


 この制度の基本的な仕組みは、先代経営者が、その所有する自社株式を、2027年(平成39年)12月31日までに後継者に一括贈与した場合に、その贈与税の全額を納税猶予する、というものです。なお、この間に相続が発生した場合には、自社株式の評価額に対応する相続税額が納税猶予されます。

 

 

 「特例」事業承継税制とある通り、この制度は今までの制度(=現事業承継税制)を残しつつ、時限措置として新たに「創設」された制度です。要するに、贈与税を猶予する10年間(2027年12月31日まで)に、自社株式を贈与して事業承継を完了させてください、という趣旨です。

 


つまり、この特例制度を受けるためには、

 

 

@2023年(平成35年)3月31日までに承継計画を提出

A2027年(平成39年)12月31日までに自社株式を贈与

 

 

することが絶対条件です。

 

 

 2027年、といってもピンと来ないかもしれません(平成ではないことは明らかですね)。しかし、2027年は今から9年後。その時の自分の年齢を考えればイメージしやすいのではないでしょうか。

 


 なお、仮に承継計画を期限内(2023年3月31日)に提出したが、計画通りに事業承継が進まず、その結果2027年12月31日までに贈与を行わなかった場合であっても、特に罰則等はありません。従って、今後10年以内に具体的な承継計画がなくても、少しでも可能性があれば承継計画を提出する、という選択肢もありそうです。

 

 

 では、特例制度には具体的にどのような効果があるのか?また、現行制度との違いは何か?次回以降解説します。

 

 

 

→カテゴリ:実務編・事業承継税制

 

 

  

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特例事業承継税制(2)〜「猶予」と「免除」の違い〜

vol.169(since 07/01/07〜) 

18/07/09

 

 

前回の記事では、

 

 

この特例制度を受けるためには、

@2023年(平成35年)3月31日までに承継計画を提出

A2027年(平成39年)12月31日までに自社株式を贈与

することが絶対条件です。

 

 

と書きました。そして、

 

 

この制度の基本的な仕組みは、先代経営者が、その所有する自社株式を、2027年(平成39年)12月31日までに後継者に一括贈与した場合に、その贈与税の全額を納税猶予する、というものです。なお、この間に相続が発生した場合には、自社株式の評価額に対応する相続税額が納税猶予されます。

 

 

とも書きました。

 

 

ここで、納税猶予という言葉に注意が必要です。
猶予とは、実行の時日を延ばすこと(BY広辞苑)。似た言葉に「免除」がありますが、免除とは「義務を消滅させること」で、「猶予」とは異なります。

 

 

両者の決定的な違いは、

 

納税猶予の場合=一定要件を満たさなくなった場合納税義務が復活する

 

のに対し、

 

納税免除の場合=納税義務が完全に消滅する

 

という点にあります。

 

 

事業承継税制の基本は納税猶予。つまりこの特例を受けても、贈与税や相続税の納税義務が直ちに「免除」されるわけではないのです。

 

 

では、いったん猶予された納税義務はいつ復活し、あるいはいつ免除されるのか?
これこそが、事業承継税制のキーポイントなのです。

 

 

特例を受けた場合の具体的な流れを見てみましょう。

 

 

@1代目経営者が、その所有する自社株式を2代目経営者に一括贈与

→本来は2代目経営者に贈与税が課税されるが、その贈与税を納税猶予

 

 

A1代目経営者が死亡

→@で猶予されていた贈与税が免除

 →1代目経営者の相続税のうち、贈与した自社株式に係る部分を納税猶予

 

 

B2代目経営者が、その所有する自社株式を3代目経営者に一括贈与

→Aで猶予されていた相続税が免除

→本来は2代目経営者に贈与税が課税されるが、その贈与税を納税猶予

 

 

おわかりいただけましたか?

 

基本的には、

 

贈与税猶予→贈与税免除&相続税猶予→相続税免除&贈与税猶予

 

というループが続いていくのです。

 

 

ここで、ひとつ疑問が生じませんか?
Aで「1代目経営者の相続税のうち、贈与した自社株式に係る部分を納税猶予」と書きました。
しかしそもそも、株式は既に後継者に贈与してしまっているのだから先代経営者の相続財産ではなく、従って相続税の課税対象にはならないはずです。

 

 

実は、ここが事業承継税制の大きなポイントです。
この税制の適用を受ける場合、先代経営者から贈与された自社株式は、先代経営者の死亡時に、先代経営者から相続(又は遺贈)により取得したものとみなされて相続税が課されるのです。

 

そしてAの通り、先代経営者の死亡時点で贈与税は免除、自社株式に係る相続税は猶予、となるので、結果として贈与税及び自社株式に係る相続税の納税はないことになります。

 

 

従って、この特例を受けたほうがよいかどうかは、その自社株式の価額によって左右されることになります。
自社株式の価額がそれほど高額でなく、通常の贈与で多額の贈与税を負担することなく自社株式を移転できる場合は、この特例を使うメリットは少ないといえます。

 

 

以上の通り、この税制の基本は「免除」ではなく「猶予」です。
そして「猶予」を受け、また継続するためには様々な要件があり、その要件を満たさなくなった場合は猶予打ち切りとなるのですが・・・・・次回は、その「猶予の打ち切り」について話したいと思います。

 

 

 

→カテゴリ:実務編・事業承継税制

 

 

  

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特例事業承継税制(3)〜5年間要件を継続しないと、猶予取り消し!〜

vol.170(since 07/01/07〜) 

18/08/08

 

 

前回の記事では、

 

 

事業承継税制の基本は納税「猶予」。つまりこの特例を受けても、贈与税や相続税の納税義務が直ちに「免除」されるわけではないのです。

 

 

と書きました。そして

 

 

猶予」を受け、また継続するためには様々な要件があり、その要件を満たさなくなった場合は猶予打ち切りとなるのです

 

 

とも書きました。

 

 

ここで重要なのは、たとえ納税猶予を受けられたとしても、その後「一定の要件」を満たさなくなった場合、猶予が打ち切りになってしまう、ということです。

 

 

具体的には、贈与税(又は相続税)の申告期限から5年間(この期間を「事業承継期間」といいます)の間に、「一定の要件」を満たさないこととなると納税猶予が取り消され、その満たさなくなった時点で猶予税額の納税が必要となってしまうのです。

 


では「一定の要件」とは何でしょうか?

主なもののみ掲げます。

 

 

1報告・届出を怠ったとき(毎年、都道府県及び税務署への報告及び届出が必要)

2後継者が、代表者でなくなったとき(障害者等になった場合を除く)

3常時使用従業員数が8割を下回ったとき(雇用確保要件)

4会社が倒産・解散したとき

5後継者が自社株式を譲渡・贈与したとき(譲渡・贈与した部分について猶予取り消し)

6「資産保有型会社」又は「資産運用型会社」となったとき(5年経過後においても猶予取り消し)

7総収入金額が零になった場合

8先代経営者が代表者に復帰した時

 

 

これらの「要件」は、従来の事業承継税制においても定められていました。
特に3の「雇用確保要件」は、人材確保がままならない現在の経済環境においては非常にハードルが高く、この要件があるために従来の事業承継税制は活用されなかった、と言われています。

 

 

そこで今回創設された特例事業承継税制では、この要件が実質的に撤廃されました。
どういうことかと言うと、

 

 

・雇用確保要件を満たさない場合であっても、認定経営革新等支援機関の意見が記載されている「雇用確保要件を満たせない理由を記載した書類」を都道府県に提出すれば納税猶予の取り消しはないものとする

 

・雇用確保要件を満たせない理由が「経営状況の悪化である場合」又は「正当なものと認められない場合」には、認定経営革新等支援機関からの指導及び助言を受けた旨及びその内容を上記書類に記載すればよい

 

 

こととされたのです。

 

つまり「要件」自体は残っているが、認定経営革新等支援機関の協力があれば事実上パスできるようになったことから「実質的に撤廃」となったのです。(認定経営革新等支援機関→前々回の記事参照)

 

 

従来ネックとなっていたこの要件が事実上なくなったことで、特例事業承継税制は格段に使いやすくなった、と言われています。

 

 

その他の要件を見ると、基本的には「後継者は5年間、会社を事業承継したままの状態で、経営を続けてくださいね」ということを要請しているといえます。

 

 

もっとも、要件の中には6のように、5年経過後も継続しなければならないものもあります。また将来会社の売却、合併消滅、解散をした場合は税額の一部が減免される措置はあるものの、基本的にはその時点で猶予税額を納税しなければなりません。
この税制を適用するか否かは、様々な事態を想定したうえで判断する必要があります。

 

 

ところで、6で「資産保有型会社」「資産運用型会社」という用語が出てきました。実は事業承継税制は、全ての会社に適用されるわけではありません。その適用されない会社の代表例が「資産保有型会社」「資産運用型会社」なのですが・・・・・次回は、これらの会社について記します。


 

 

→カテゴリ:実務編・事業承継税制

 

 

  

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特例事業承継税制(4)〜「資産保有型会社」「資産運用型会社」とは?〜

vol.171(since 07/01/07〜) 

18/09/05

 

 

前回の記事では、

 

 

この税制は、贈与税(又は相続税)の申告期限から5年間(この期間を「事業承継期間」といいます)の間に、「一定の要件」を満たさないこととなると納税猶予が取り消され、猶予税額の納税が必要となるのです。

 

 

と書きました。

 

 

そして、その「一定の要件」のひとつに、

 

 

資産保有型会社」又は「資産運用型会社」となったとき(5年経過後においても猶予取り消し)

 

 

と挙げたうえで、

 

 

実は事業承継税制は、全ての会社に適用されるわけではありません。その適用されない代表例が「資産保有型会社」「資産運用型会社」なのですが・・・・・。

 

 

と書きました。

 

 

今回は、その「資産保有型会社」「資産運用型会社」について記します。

 

 

1 資産保有型会社

 

 「特定資産」の価額の総額が、全財産の70%以上を占める会社をいいます。
なお、判定は帳簿価額により行います。

 

 

2 資産運用型会社

 

 総収入金額に対して、「特定資産」の運用収入の合計額が75%以上を占める会社をいいます。 

 

キーワードは「特定資産」です。

 

特定資産」とは、

・有価証券
・現に自ら使用していない不動産(第三者へ賃貸しているものも含む)
・ゴルフ会員権、絵画、貴金属等
・現預金
・代表者や同族関係者に対する貸付金、未収金
などをいいます。

 

 

特定資産」の運用収入とは、

・有価証券の受取配当、譲渡収入
・預貯金の受取利息
・賃貸不動産の受取地代、家賃、譲渡収入

などが挙げられます。

 

 

わかりやすい例が、不動産賃貸業です。
賃貸不動産は「特定資産」に該当します。賃貸不動産を所有している場合、

賃貸不動産の帳簿価額+現預金等≧全資産の帳簿価額×70%
又は
賃貸不動産収入≧総収入金額×75%

となると、資産保有型会社又は資産運用型会社に該当し、この税制は適用できません。

 

 

さらに注意が必要なのは、これらの会社に該当しない状態を、贈与や相続の時のみならず、5年経過後も、それ以後も、極端に言うと未来永劫保たなければならないということです。

 

 

現在は小売業をやっているけれども、30年後に転業して不動産賃貸業に転換する・・・・・などといったケースは十分に考えられます。このようなケースが将来生じた場合、現行法令上は転換時点で猶予打ち切りとなってしまいます。

 

 

なお、「資産保有型会社」「資産運用型会社」に該当した場合であっても、次のすべての要件を満たす場合にはこれらの会社に該当しないものとみなされ、この税制を適用することができます。

 

 

・商品販売・資産の貸付け(同族関係者に対する貸付けを除く)等を3年以上行っていること
常時使用従業員※(後継者・生計一親族を除く)が5人以上であること
常時使用従業員※の勤務場所(事務所・店舗・工場等)を所有又は賃借していること

  ※常時使用従業員とは、以下の通知書に記載された従業員をいいます。
   ・厚生年金保険の標準報酬月額決定通知書(70歳未満)
   ・健康保険の標準報酬月額決定通知書(70歳以上75歳未満)

 

 

 つまり、例えば不動産賃貸業であっても、第三者に対して賃貸を行っていて、かつ、社会保険に加入している第三者従業員が5人以上いれば、「資産保有型会社」「資産運用型会社」とはみなさない、ということです。

 

 

不動産賃貸業等を行っていても、これらの要件を満たす場合は、この税制の適用について検討する余地があります。

 

 

 

→カテゴリ:実務編・事業承継税制

 

 

  

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特例事業承継税制(5)〜第三者への贈与も可能。その注意点は?〜

vol.172(since 07/01/07〜) 

18/10/10

 

 

このテーマの最初の記事で、

 

 

この制度の基本的な仕組みは、先代経営者が、その所有する自社株式を、2027年(平成39年)12月31日までに後継者に一括贈与した場合に、その贈与税の全額を納税猶予する、というものです。

 

 

と書きました。

 

 

ところで、贈与の方法には

 

@ 暦年贈与
A 相続時精算課税贈与

 

の2種類があります(以前の記事参照)が、事業承継税制を適用するにはA相続時精算課税贈与を選択するほうが有利とされています。

 

 

しかし、Aの方法は受贈者が20歳以上の推定相続人及び孫のケースしか適用できません。つまり親族間の贈与にしか適用されないため、後継者が第三者の場合は対象外となります。

 

事業承継税制は第三者承継においても適用可能ですが、第三者に対する贈与は相続時精算課税制度を適用できないとすると@の暦年贈与となります。暦年贈与の場合、仮に事業承継税制の適用が取り消されると承継者が多額の贈与税を負担しなければならず、第三者承継の場合の大きなネックとなっていました。

 

 

これを踏まえ、特例事業承継税制では、第三者に対する贈与でも相続時精算課税贈与が適用できるようになりました。これにより、後継者が親族でも親族以外でも同じ条件となり、税制上の差はなくなったといえます。

 

 

しかし、ここで注意しなければならない点があります。
相続時精算課税贈与は、文字通り、贈与財産の価額を相続時に加算して精算する制度です。つまり、第三者に贈与した自社株式は、先代経営者の相続時に相続税の課税対象となり、事業承継に無関係の他の相続人は自社株式の価額を加算した財産に対する相続税を支払わなければなりません。

 

 

ケーススタディで説明しましょう。
先代経営者Aの相続人が子2人BCで、Aが経営する会社を第三者Dが承継し、Dが自社株式を相続時精算課税制度により贈与を受けたとします。
この贈与に関して特例事業承継税制を適用した場合、Dは贈与税の納税を猶予され、贈与時の贈与税は0円です。

 

 

さて、Aが死亡した場合はどうなるでしょうか。
Dが贈与時に猶予されていた贈与税は免除されます。
また、DはAの相続税の納税義務者となりますが、今度は相続税の納税猶予を受けることにより相続税は0円となります。

 

 

ところが、BCはそうはいきません。
Aが所有していた自社株式以外の財産は、BCが相続します。BCはその相続分に応じた相続税の納税をするのはもちろんですが、相続税の計算の際、Dに贈与した自社株式も相続財産に加算して相続税の計算をしなければならないのです(相続税は累進税率のため、財産の総額が多くなると税率が高くなる)

 

 

既に贈与した自社株式に係る相続税を、事業承継と無関係の相続人が支払わなければならない・・・・・第三者承継の落とし穴、といったところでしょうか。このことに関して、事前に相続人の同意を得られるのか?が第三者承継の適用のポイントになります。

 

 

 

 

 

→カテゴリ:実務編・事業承継税制

 

 

  

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特例事業承継税制(6)〜複数の株主から、複数の後継者への贈与について適用可能に。その意味は?〜

vol.173(since 07/01/07〜) 

18/11/05NEW

 

 

従来の事業承継税制の対象となる贈与は、基本的に
 

 

 1人の先代経営者→1人の後継者

 

 

への相続・贈与を対象としていました。

 

 

特例事業承継税制では、

 

 

 複数の株主→複数の後継者

 

 

への承継が対象となりました。

 

 

これを2つに分解しましょう。

 

 

@先代経営者以外の複数の株主(親族外を含む)から代表者である後継者への贈与・相続も対象
 

 

 株式は先代経営者のみが所有しているとは限りません。先代経営者の配偶者や兄弟、また幹部従業員など、複数の株主が少しずつ株式を所有しているケースはよくあります。
 特例事業承継税制では、後継者への株式の集中を促進するため、これらの株主からの贈与についても特例の対象とされました。
 

 

 注意点は、

 

 

・先代経営者の贈与が最初でなければならない
・その他の者の贈与は、先代経営者の贈与年から5年の間に行わなければならない
・先代経営者以外の者からの贈与についても、その都度認定手続きが必要

 

 

 などです。

 

 

A複数の後継者への贈与・相続も対象

 


 前にも書いたとおり、この税制の適用を受けるためには、2023年3月31日までに都道府県に対し「特例承継計画」を提出しなければなりません。そして計画には、株式の贈与を受ける後継者を記載することとされています。
 しかし、この時点までに後継者が一人に絞られているとは限りません。また、当面は代表者を二人に任せたいというケースもあるでしょう。

 

 

 特例事業承継税制では、後継者を最大3人まで可能とし、それぞれ特例を受けることが可能とされました(ただし、特例承継計画に全員の後継者を記載する必要があります)。

 

 

 注意点は、

 


・贈与の時までに、それぞれが代表権を有していなければならない
・議決権割合の10%以上を有し、かつ、議決権保有割合上位3位以内の者でなければならない

 

 

 などです。

 

 

 以上の通り、特例の適用を受ける贈与者と受贈者の範囲は拡大されたのですが、特にAの複数の後継者への贈与については注意が必要です。後継者を複数とすることで、経営権を巡る争いが起きる可能性があるためです。これでは本末転倒です。複数の後継者への贈与は、税制の適用以前の問題として捉えるべきでしょう。

 

 

 

→カテゴリ:実務編・事業承継税制

 

 

  

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