vol.174(since 07/01/07〜) 

18/12/13

前回まで6回に分けて、特例事業承継税制について記載しました。

この6回でテーマとしたのは主に留意点(=リスク)です。なのでこの税制の基本的な要件である

・適用対象となる会社の要件

・先代経営者の要件

・後継者の要件

については記載していません。


これら基本的な要件については、国税庁のパンフレットhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201804/01.pdf

などに詳しく記載されているので参照してください。

あえてリスクを中心に記載したのは、「この税制をいったん使ったら、もう後戻りができない」からです。


第2回の記事でも書いたとおり、特例事業承継税制を選択すると、基本的には

贈与税猶予→贈与税免除&相続税猶予→相続税免除&贈与税猶予

というループが続いていくことになります。


後継者(2代目)は、先代経営者(1代目)から贈与を受けた株式を、次の後継者(3代目)に、この税制の要件に適合するように一括贈与しなければなりません。そして、もし次の後継者(3代目)が自社株式を譲渡したり、この税制の要件から外れた贈与をしたときは、譲渡・贈与した部分について猶予取り消しとなり、贈与税の納税をしなければなりません。。

つまりこの税制を一度適用したら、後継者(2代目)のみならず、次の後継者(3代目)の資本政策をも拘束する、ということになるのです。


さらに言うと、次の後継者(3代目)がさらに次の後継者(4代目)に株式を贈与する際は、自動的にこの税制が適用されるわけではない、という点に留意する必要があります。


この特例事業承継税制で手当てされているのは、「3代目が支払うべき贈与税・相続税を猶予する」ところまで。
つまり、3代目→4代目の株式の贈与・相続に関しては、現時点では特例事業承継税制の適用はないこととなります。


では、4代目はどうすればよいのでしょうか?
現時点で考えられるのは一般事業承継税制の活用ですが、この制度は特例事業承継税制に比べて適用範囲が制限されているため、一般制度を使ったとしても猶予税額の一部は納税となる可能性が高いです。

一般制度を使わなければ通常の贈与・相続で承継することになりますが、そうするとその贈与・相続の時点で猶予税額の全部または一部を納付することになります。
将来まで保証されているわけではない制度を使ってしまって、果たして大丈夫なのでしょうか?

しかしよく考えると、3代目→4代目の事業承継は、いったい今から何十年後に行われるのでしょう?
その時の日本経済は?会社はどうなっているのか?そもそもその時にどのような税制が手当てされているのか?
無責任かもしれませんが「今が大事。その時は、その時だ。」という考え方もありそうです。

そうすると、現時点で確実に実行しておいたほうがいいことが見えてきます。


ひとつは、「納税猶予の対象となる株式数をあらかじめ減らしておく」ということです。
納税猶予の適用を受ける前に、一定数の株式を、通常の贈与や譲渡により後継者等に引き渡したのちに特例事業承継税制を活用すれば、「納税猶予の対象となる株式数」は減少します(もちろん、特例事業承継税制の持株数要件等を満たす必要があります)。


もうひとつは、「納税猶予の対象となる株式の評価額を低くする」ことです。
非上場株式の評価方法は複雑怪奇であり、また改正も頻繁に行われます。株式評価の仕組みを理解したうえで、評価額が下がったタイミングで特例事業承継税制を活用するのが最適です。


なぜこれらの対策が有効なのでしょうか?
特例事業承継税制を活用するのであれば、猶予対象となる株式数や評価額にかかわらず、その贈与税または相続税の全額が猶予されます。しかし将来、予期せぬ事情で、株式の一部又は全部の猶予が取り消しとなる可能性はあるのです。その際は猶予税額を納付しなければならないのですが、この猶予税額を可能な限り引き下げておくことにより、将来の税負担リスクを軽減することになります。


以上、特例事業承継税制について、現時点でのまとめを書きました。
特例は、あくまでも「特例」です。「特例」を使う前に、まず通常の贈与(暦年贈与・相続時精算課税贈与)や譲渡により無理なく株式を承継できないかを検討し、そのうえで「特例」の適用を検討する、というのがセオリーです。

→特例事業承継税制(8)に続く

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