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vol.144(since 07/01/07〜)
16/06/14
相続が発生して、被相続人が遺言を残していない場合、基本的には相続人全員で「遺産分割協議書」を作成し、誰がどの財産を取得するかを決定することになります。
そして、被相続人の主な遺産が「不動産」の場合、この「分割」が難しくなることがあります。
例えば、
被相続人=父
相続人 =子2人(長男二男 母は既に死亡)
財産 =土地建物(父の自宅 評価額5000万円)
現金預金(1000万円)
とします。
この遺産を、子2人が法定相続分である2分の1ずつ取得します。
すると、その分割方法は、
<パターン1>
土地建物→共有持分各2分の1ずつ取得
現金預金→それぞれ500万円ずつ取得
となります。
この分け方のメリットは「公平に2分の1ずつ取得している」という点です。取得財産の割合については、兄弟どちらからもケチはつかないでしょう。
しかし「不動産の共有」は、後々問題を引き起こす可能性があります。
後日不動産を処分したいと考えた時に、兄弟2人の意見が一致するとは限りません。兄が「売却してキャッシュにしたい」と考えても、弟が「売却不要」と考えれば売却できません。
この状態が続き、将来兄や弟に相続が発生すると、もう手のつけようがありません。兄や弟の持ち分はそれぞれの「配偶者」や「子」のものとなり、不動産はますます細分化され、かつ縁が薄い人同士の共有状態となっていくのです。
こうして不動産は「塩漬け」となり、不良財産となっていきます。
このようになるのを避けるため「不動産は一方が単独相続する」という方法があります。
<パターン2>
土地建物→兄が取得
現金預金→弟が取得
このように分割すれば、パターン1のような懸念は避けられます。
しかしこの場合「取得財産の価額が違いすぎる」という問題が生じる可能性があります。上記の例では、兄が5000万円の財産を取得し、弟が1000万円しか取得しないのであれば、弟は納得でしないでしょう。
この問題を解決するのが「代償分割」という方法です。
代償分割とは、「現物財産を取得した相続人が、他の相続人に対して債務(=相続すべき財産の価額と現物財産の価額との差額)を負担する」分割の方法をいいます。
代償分割によった場合、以下のようになります。
<パターン3>
土地建物→兄が取得(5000万円)
代わりに、弟に代償金を支払(現金△2000万円)
(取得した財産の価額 5000万円ー2000万円=3000万円)
現金預金→弟が取得(1000万円)
兄より代償金を受取(現金2000万円)
(取得した財産の価額 1000万円+2000万円=3000万円)
一方が不動産を取得したいと考えているのに対し、もう一方は取得の意思がない場合、この方法は有効です。
この例では、兄は望み通り不動産を取得し、弟はその価格差に相当する現金を得ることができるのですから、お互いに文句はないでしょう。
ただし「代償分割」には、以下の点に注意が必要です。
1 遺産分割協議書に何の記載もなく兄から弟に現金を渡すと、単なる「贈与」となり多額の贈与税が発生します。この現金が代償分割に伴う「代償金」であることを証するため、代償金の金額、支払方法等を遺産分割協議書に記載する必要があります。
2 上記のケースでは、兄は代償金である2000万円を、自分が今持っている自分の財産、又は将来自分が稼ぎ出す財産の中から用意しなければなりません。つまり、現物財産を取得した人に支払能力がなければ代償分割はできないこととなります。
被相続人の主な遺産が「不動産」の場合、「代償分割」は相続を円満に解決する有効な方法のひとつです。ただし、ひとつ手続きを間違えると法務上・税務上大きな問題を生じることとなります。代償分割を検討するなら、弁護士・司法書士・税理士等の専門家に十分相談することをおすすめします。
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