vol.231(since07/01/07~)

24/05/13

 

以前の記事「相続税:遺産分割前に相続人が死亡してしまったら?」の中で、

 

長男Cは父Aの遺産分割協議が完了する前に死亡しましたが、死亡により父Aの相続人としての地位を失うわけではありません。長男Cの父Aの相続人としての地位は長男Cの相続人E、Fに継承され、父Aの遺産分割協議には長男Cの相続人としてE、Fが加わることになります。

 

と書きました。
今回はこの「数次相続」と「相続税の特例」の関係について記します。
 

 

上記のケース(長男Cは父Aの遺産分割協議が完了する前に死亡、これをケース①とします)で、父Aは不動産(生前居住していた家屋とその敷地)を所有していて、長男Cは父Aと同居していたとします
E、Fを加えた相続人全員の遺産分割協議の結果、この不動産は亡長男C(実質的には、長男Cの相続人E、F)に相続させることとしました。

 

ここで相続税上、一つ疑問が生じます。
それは「父Aが所有していた宅地について、小規模宅地等の特例が適用できるのか?」ということです。

 

以前の記事「相続税:未分割の場合の特例不適用」の中で、小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例という制度があることを述べ、

 

被相続人の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で、相続人等が取得したもののうち一定の要件を充足するとして選択したものについては、通常の評価額の20%又は50%で評価します。
平米当たりの評価額が高い宅地等に適用することにより大きな節税メリットが得られますが、申告期限までに分割されていない宅地等には適用されません。

 

と書きました。
もし長男Cが死亡していないとすると、長男Cは父Aと同居しているので、他の要件を満たす限り長男Aの取得した宅地は特定居住用宅地等」としてその評価額の80%が減額されます(330㎡が限度)。

 

ただし上記のケース①では、長男Cは遺産分割前に死亡しています。
そうするとこの土地は
申告期限までに分割されていない宅地等」となるため特例の適用はない、とも考えれられます。

 

他方「長男Cは申告期限前に死亡したが、遺産分割協議は死亡前に完了していた」というケース(ケース②とします)ではどうでしょうか?
このケース②では上記土地は申告期限までに分割されていた宅地等」となります。
そうすると他の要件を満たす限り、長男Cの相続人E、Fが取得した土地は
特定居住用宅地等」としてその評価額の80%が減額されることになります。

 

ケース①②共、相続税の申告期限前に長男Cは死亡しています。
それなのに遺産分割前に死亡したケース①では特例は適用されず、遺産分割後に死亡したケース②では特例が適用されるのは「アンバランスだ」とうことなのでしょう。通達では、

 

・遺産分割前に相続人が死亡した場合(ケース①)であっても、

・「第2次相続の相続人(長男Cの相続人E、F)」と「第1次相続の相続人(父Aの相続人で、長男C以外)」との間で遺産分割が行われ、

・特例の対象となる宅地を第2次相続の被相続人(長男C)自身が取得したものとして確定させた場合

・この宅地は分割により死亡した者(長男C)が取得したものとして取り扱うことができる

 

とされています。

 

この「第2次相続の被相続人自身が取得したものとして確定させた」という部分がわかりにくいのですが、実務上遺産分割協議書において、既に死亡している「第2次相続の被相続人(長男C)が取得する」旨記載することを要すると考えられます(その協議書に実際に署名するのは第2次相続の相続人(E、F)となる)。
この場合、土地の登記簿には「●年●月●日(第1次相続の被相続人(父A)の死亡日)、相続により第2次相続の被相続人(長男C)が取得」した旨記載されます。

 

なお以前の記事「相続税:未分割の場合の特例不適用」では、小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例のほかに、配偶者の相続税額の軽減の規定も、申告期限までに分割されて配偶者が取得した財産のみに適用される旨説明しました。
そうすると小規模宅地等の特例の場合と同様、遺産分割協議前に配偶者が死亡した場合は軽減が受けられないのではないか?という疑問が生じます。

 

これについても小規模宅地等の特例の場合と同様、通達により、死亡した配偶者の相続人第1次相続の相続人との間で遺産分割が行われ、死亡した配偶者自身が取得したものとして確定させた財産がある場合、その財産分割により死亡した配偶者が取得したものとして取り扱うことができる、とされています。

 

 

→カテゴリ:相続&贈与

 

 

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