vol.202(since 07/01/07〜) 

21/04/05

前々回の記事で、死亡退職金がオーナー社長の所有する会社株式の評価額への影響を述べた際、

・役員の死亡により会社が受け取る死亡保険金(契約者及び受取人:会社、被保険者=死亡した役員)がある場合、その死亡保険金は②の純資産価額の計算上財産(未収入金)として計上します(この保険契約にかかる保険積立金等がある場合は、マイナスする)。

と書きました。

ところで、中小企業でこのような形態(契約者及び受取人:会社、被保険者=役員)の生命保険契約に加入することは珍しくありません。
その目的は、役員退職金の原資を確保する」ことにあります。



役員に対する退職金は通常多額になります。功績倍率方式で限度額を計算すると数千万円になることも珍しくありませんが、ここで役員退職金の原資を、中小企業が常に現金で用意しておくことができるのか?」という問題があります。
特にオーナー社長が不慮の事故で死亡した場合などは、役員の遺族に対して死亡退職金を支払うのにとどまらず、売上の減少等により会社の経営・存続に重大な影響を与えることも想定され、数か月分の運転資金を直ちに確保しなければなりません。



そこで、その役員を被保険者とする生命保険契約を締結し、役員が死亡した場合に会社が保険金を受け取る、という仕組みを構築しておくことにより、そのリスクを回避することができるのです。



上記の目的で会社が生命保険契約を締結する際の注意点は、以下の通りです。

<保険の種類>

生命保険の種類は、その目的により様々な区分の方法がありますが、会社契約という観点から重要なのは中途解約した際の返戻金の有無」となります。
ざっくり言うと、

返戻金なし=定期保険(いわゆる掛捨て 被保険者の死亡以外を原因として保険金が支払われることはない)

返戻金あり=終身保険・養老保険・一定の定期保険(被保険者の死亡により保険金が支払われるほか、保険期間中に解約すると一定の解約返戻金が支払われる)

に分けられます。
そして支払保険料の税務処理は、



定期保険(掛け捨て)=全額損金算入

終身保険・養老保険・一定の定期保険=全額又は一部資産計上



となります。
さらにこれらの保険の受取保険金を同額とした場合、支払保険料の金額は



定期保険(掛け捨て)< 終身保険・養老保険・一定の定期保険

となります。

保険の目的を「役員の死亡への備え」とするならば、保険金は役員が死亡したときのみ支払われればよいことになります。そうすると、少ない保険料で多額の保険金を得られる、解約返戻金のない定期保険に加入するのが最適です。

<保険金に対する課税>

保険金受取人は会社であることから、受取保険金は会社の益金となり課税対象となります。
仮に受取保険金が1億円、役員死亡退職金が6000万円とし、同一事業年度に益金及び損金計上した場合、残額4000万円(1億円-6000万円)は課税対象となり、運転資金等に回せるのは税引き後の2800万円(4000万円-4000万円×実効税率30%)となります。

会社で保険契約を締結する際、「月々いくら支払うか」という支払保険料の観点から保険金額を設定する傾向があります(事実、多くの保険会社はそうした設計書を作成・提案します)。
しかし保険の目的を「役員の死亡への備え」とする限り、まず「役員退職金」「運転資金」の必要額を計算し、「受取保険金に対する法人税」を考慮したうえで、「受取保険金額をいくらにするか」という順序で設計するのがセオリーです。



なお契約の際は、保険金の受取方法として「一時受取」「分割受取」を選択できるようにしておくことが肝要です(受取時の会社の状況によっては、分割受取にした方が財務上、税務上有利となる場合がある)。

 

 

 

→役員退職金の税務(14)に続く

 

 

 

 

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