vol.196(since 07/01/07〜) 

20/10/08

前回の記事

ところで課税庁は訴訟等を起こされた場合、「税務上妥当」な金額がいくらで、「不相当に高額」な金額がいくらであるのかを主張立証しなければならず、これらの訴訟等の中で「税務上妥当な金額」の計算方式をいくつか示しています。
そして、実務上はこれらの計算方式を「役員退職慰労金規程」に採用して支給額を計算する、という方法が一般的となっています。
そのうち最も多く採用されているのが「功績倍率方式」ですが、詳細は次回解説します。

と書きました。今回は「功績倍率方式」について説明します。
功績倍率とは、以下の算式で計算される倍率を言います。

功績倍率=退職給与額÷(退職時の報酬月額×役員勤続年数)

例えば、役員退職金1億円、退職時の報酬月額100万円、役員勤続年数35年の場合の功績倍率は
1億円÷(100万円×35年)≒2.8となります。

課税庁は税務調査等で、調査法人の役員退職金の「税務上妥当」な金額を算定する際、「その法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員退職給与の支給状況」のデータを収集して「功績倍率」を算定し、それを基に支給額が妥当かどうかを判定するのが一般的です。
それならば、企業側も同様のデータを収集して類似法人の功績倍率を算定し、役員退職慰労金規程に採用して支給額を計算すれば「不相当に高額」な部分の金額はないことになります。



つまり役員退職慰労金規程において、支給額を以下のように定めます。


役員退職金支給額=退職時の報酬月額×役員勤続年数×功績倍率



仮に功績倍率を「2.0」と定めた場合、退職時の報酬月額100万円、役員勤続年数35年の場合の役員退職金額は



100万円×35年×2.0=7000万円



となります。



そうすると、この功績倍率」をいくらにするか、ということが問題となります。
これは「その法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員退職給与の支給状況」のデータを収集すればよいのですが、一般の会社が同業種同規模の非公開会社の内部情報を収集するのは極めて困難です(TKCなどの団体から一定の統計データを入手することは可能ですが、どこまでが「類似法人」にあたるのか等々判断に苦慮します)。



そこでこの功績倍率について、過去の裁判(昭和55年東京地裁判決)で課税庁が主張し、最終的には最高裁で支持された以下の役職別功績倍率を規程に取り入れるケースがあります。

社長  3.0
専務  2.4
常務  2.2
平取締役1.8
監査役 1.6


これは社長が3.0であること、役職別に定められていることなどから基準としてわかりやすく、「課税庁が主張している数値だから大丈夫だろう」という安心感(?)もあります。

しかし「不相当に高額な金額」であるかどうかの判断基準は、法令上「その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の状況」です。この判例で課税庁が主張した功績倍率は、あくまでもこの裁判の原告(不動産業)の類似法人として収集した数値であり、会社の規模、会社の所在地域、退職金支払時期などの諸条件はこの裁判に限られたものです(事実、その後の役員退職金に関する訴訟で功績倍率3.0で計算した退職金が「不相当に高額な金額」であるとされたケースは多数存在します)。



実務上は、役員退職慰労金規程において、この功績倍率方式により計算した金額を「支給限度額」とし、支給時の会社の財務状況や類似法人の収集データ等を考慮して実際の支給額を決定する、といった方法が採られています。


役員退職金の税務(8)に続く

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