役員退職金の税務(15)〜M&Aと役員退職金〜

vol.213(since 07/01/07〜) 

22/04/06

 

 

以前の記事「事業承継・後継者をどう選ぶか」で、

 

 

中小企業の場合、最も多いのが社長の子供など「同族関係者への承継」次に考えられるのが「社員の中から後継者を選ぶ」ケース、それができない場合取引先や同業者など「外部から後継者を呼び入れる」という方法があります、



と書きました。

 

 

上記以外の方法として、「M&A」があります。一言で言うと「会社の売却」です。
M&Aが上記の方法と違うのは、オーナーが会社の経営権及び所有権を完全に手放して現金化する、という点にあります。

 


オーナー社長の高齢化に伴い、中小企業で後継者を探すのは年を経る毎に困難となっていて、M&Aの件数は年々増加しているものと思われます。

 

 

中小企業のM&Aは、具体的には「オーナーの所有している自社株式を、買い手に譲渡する」という形で行われるのが主流です。
この場合、オーナーの会社の譲渡価額は「1株当たりの譲渡価額×オーナーの所有株式数」となります。
オーナーは株式を譲渡し会社の所有権を手放します。と同時に代表取締役(及び取締役)を退任し、経営からも退くのが通常です。



なお以前の記事で述べたとおり、自社株式を同族関係者間で売買する場合は、その価額が「時価」であるかどうかが税務上問題となります。しかしM&Aの場合は通常第三者間での取引となるため、その両者で合意した価額は「時価」そのものであり問題はないものと考えます。
自社株式売却時のオーナーの課税関係は、株式の譲渡益(譲渡価額−取得費−譲渡費用)に対し、20.315%の税金(所得税15.315%+住民税5%)が課されます(申告分離課税)。

 

 

ところで役員が退任する場合、退任するオーナー社長に対し「役員退職金」を支払うのが通常です。
M&Aの場合でも、株主総会の決議を経て、役員退職慰労金規程に基づき支給額を決定・支給することにより、会社は支給額を損金とし(不相当に高額な部分の金額の判定は別途必要)、オーナー社長は退職所得として取り扱うことになります

この場合、オーナー社長は「株式譲渡代金」+「役員退職金」得ることになります。



そうすると、M&Aの対価を「株式譲渡代金」のみとして受け取るか、又は「株式譲渡代金」+「役員退職金」として受け取るかにより、オーナー社長に課される税金(所得税+住民税)は異なることになります。
M&Aの目的は、「会社をいくらで売買するか」ということです。売り手であるオーナーからすると、「できるだけキャッシュ(=税引き後の手取り額)が手元に多く残るように」売ることを目的に交渉します。
M&Aの対価を交渉する際は、上記のようなタックスプランニングを行ったうえで具体的な方法を決定することになります。


 

なお役員退職金を支払う場合は、その金額が過大役員退職給与にならないかどうかという点に注意が必要です。
オーナー社長の税対策を考慮して役員退職金を多額に支給したが、その支給額のうちに税務上「不相当に高額な部分の金額」があると判定された場合、その部分の金額は会社の損金に算入されません。これに伴う税負担はM&Aの買い手が負うことになります。


 

 

→役員退職金の税務(16)に続く

 

 

 

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