持株会社は、本当に事業承継対策となるのか?(7)〜会社分割による設立@〜

vol.192(since 07/01/07〜) 

20/06/03

 

 

前回までは2回にわたり株式移転により持株会社を設立するケースの効果を検証しました。
そしてこのケースでは、オーナーに一定の相続税対策効果が見込まれるが、近い将来後継者に事業承継を行おうと考えている場合は不向き、と書きました。

 

 

ところで株式移転と同様に、組織再編の手法の一つである会社分割(分社型分割)の手法を用いて、適格要件を満たすことにより移転資産等の譲渡益課税を繰り延べて、課税されることなく持株会社化することが可能です。
では、会社分割による持株会社設立の効果を検証してみましょう。


 

1 持株会社設立後直ぐに相続が発生した場合



@前提条件

 

 

・A(B社の代表取締役社長)は、B社(非上場・資本金1000万円・全額Aが金銭出資により設立)の発行済株式のすべてを所有する100%株主です。

・B社株式の簿価純資産額(諸資産帳簿価額-諸負債帳簿価額)は9000万円です。

・B社株式の時価総額(第三者間での売買適正価額)は10000万円です。

・B社株式の相続税評価額※は7500万円です。

 ※B社は中会社(Lの割合0.75)とし、類似業種比準価額7000万円×0.75+純資産価額9000万円(1-0.75)=7500万円とします。
 ※純資産価額9000万円は、評価差額に対する法人税額相当額が控除されているものとします。
  なお控除しない場合の純資産価額は10000万円とし、その場合のB社株式の相続税評価額は7750万円(類似業種比準価額7000万円×0.75+純資産価額10000万円(1-0.75))です。

・B社はC社を設立し、B社が行っている全ての事業※をC社に承継させます。
 ※他のケースと比較する都合上、B社を純粋持株会社とするために、B社が有するすべての資産及び負債をC社に承継させることとします。

・C社は事業を譲り受けた対価として、その発行するC社株式すべてをB社に割り当てます。これによりC社はB社の完全子会社となります。またAは、会社分割後も引き続きB社の100%株主です。



AB社株式の相続税評価額(会社分割直後の純資産価額)



 資産10000万円(C社株式10000万円※)ー負債0円−法人税額相当額370万円※=9630万円

※B社は株式保有特定会社に該当するため、原則として純資産価額で評価します。
※C社は開業後3年未満の会社に該当するため、純資産価額で評価します。
※非上場株式の相続税評価額(純資産価額)を計算する際、評価差額(相続税評価額-帳簿価額)に対する法人税額相当額(37%)を控除します。
 このケースでは、
(B社が所有するC社株式の相続税評価額10000万円−同帳簿価額9000万円)×37%=370万円
 となります。
 ただしこの規定は、評価会社(B社)が所有する非上場株式(C社株式)の純資産価額の計算にあたっては適用されません。よってC社株式の相続税評価額は10000万円となります。


 

BAの所有財産の価額(相続税評価額)



・C社設立前

 7500万円(B社株式)

・C社設立後

 9630万円(B社株式)



C効果



 会社分割前、Aの相続財産はB社株式7500万円(相続税評価額)であるのに対し、会社分割後はB社株式9630万円(相続税評価額)となり、相続税評価額が大幅に上昇してしまいました。これは

・C社が新設法人のため純資産価額方式により評価されること
・C社株式の純資産価額の計算にあたって評価差額に対する法人税額相当額控除の規定は適用されないこと、及び
・B社が株式保有特定会社のため純資産価額で評価されること

  によります(もっとも会社分割の手法を用いる場合、実際は全ての事業を分割会社に承継することはないと思われます。そうするとB社が株式保有特定会社に該当せず、B社株式の評価に類似業種比準価額を用いることにより相続税評価額が低減する可能性はあります)。
  よって持株会社化の目的がオーナーの相続税対策のみとすれば、株式移転の場合と同様、この時点で効果は全くありません。むしろ会社設立や事業移転に係る費用が発生し、ランニングコストが増加し、さらに評価額が上昇してしまうことがあるのですから、この手法を用いた場合は「分割直後の相続発生」という大きなリスクを抱えることになります。

 

 

 

持株会社は、本当に事業承継対策になるのか?(8)に続く

 

 

 

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