vol.188(since 07/01/07〜) 

20/02/06

前回の記事では、持株会社を設立し、現事業会社の株式を借入金により買い取るケースで、持株会社設立後直ぐに相続が発生した場合の効果を検証しました。

そして、前回の記事で設定した条件下では、持株会社設立はオーナーの相続税対策になっていないと書きました。



では次に、現事業会社の株式を借入金により買い取るケースで、持株会社設立後10年後に相続が発生した場合の効果を検証します。


2 持株会社設立後10年後に相続が発生した場合

 


①前提条件(前回の前提条件も参照してください)


 ・持株会社C社設立後10年の間、B社の業績は順調に推移し、B社株式の相続税評価額は15000万円※となりました。
  ※B社は中会社(Lの割合0.75)とし、類似業種比準価額14000万円×0.75+純資産価額18000万円(1-0.75)=15000万円とします。
  ※純資産価額18000万円は、評価差額に対する法人税額相当額が控除されているものとします。
   なお控除しない場合の純資産価額は20000万円とし、その場合のB社株式の相続税評価額は15500万円(類似業種比準価額14000万円×0.75+純資産価額20000万円×(1-0.75))です。

 ・B社は親会社であるC社に毎年600万円の配当を行い、C社はこれを原資に金融機関借入金の返済を行いました。その結果、C社の借入金残高は5000万円になりました(配当はすべて借入金返済及び経費支払いに充て、現預金の蓄積はないものとします)。

 ・C社は純粋持株会社であり、B社株式以外の資産は所有していません。

 ・この結果、10年後のC社の貸借対照表(帳簿価額)は以下のようになりました。

  資産(B社株式)10000万円 / 負債(借入金) 5000万円

 ・Aの財産はC社株式及び現金8200万円(B社株式譲渡代金)とします。

C社株式の相続税評価額(純資産価額※)
 ※C社は株式保有特定会社に該当するため、原則として純資産価額で評価します。


  資産15500万円(B社株式15500万円)ー負債(借入金5000万円)ー法人税額相当額2035万円※=8465万円
  ※非上場株式の相続税評価額(純資産価額)を計算する際、評価差額(相続税評価額-帳簿価額)に対する法人税額相当額(37%)を控除します。
   このケースでは、
   相続税評価額10500万円(15500万円-5000万円)-帳簿価額5000万円(10000万円-5000万円)×37%=2035万円
   となります。





Aの所有財産の価額(相続税評価額)


・持株会社C社を設立しなかった場合

 15000万円(B社株式)

・持株会社C社を設立した場合

 16665万円(C社株式8465万円+現金8200万円)


④効果



 持株会社を設立したことにより、Aの所有する非上場株式の相続税評価額は減少しました(B社株式15000万円→C社株式8465万円)。
しかしAは、C社設立直後にB社株式を10000万円で売却し、売却代金8200万円(税引き後)を得ています。これを加えると、Aの所有財産の総額(相続税評価額)は持株会社を設立したことにより高くなってしまいました(15000万円→16665万円)。



 「持株会社設立がオーナーの相続税対策になる」と言われる理由の一つは、「非上場株式の相続税評価額(純資産価額)を計算する際、評価差額(相続税評価額-帳簿価額)に対する法人税額相当額(37%)を控除する」という規定を適用するためです。
 しかしこのケースではその効果が不十分であり、持株会社を設立することにより逆にオーナーの相続財産が増加してしまいました。結果として何もしなかった方がよかったことになり、持株会社設立は無意味だったことになります。



 なお、以下の点に留意が必要です。



・このケースでは純粋持株会社を想定していますが、この場合相続税評価額の計算上株式保有特定会社に該当し、その株式は原則として純資産価額で評価することになります。
 非上場株式の評価額は基本的に「類似業種比準価額」と「純資産価額」とをミックスして決定しますが、実務では類似業種比準価額よりも純資産価額の方が高額になることが多いです。
 従って持株会社が事業持株会社として一定の事業用資産を所有し、株式保有特定会社の要件に該当しない状況となれば、その株式の評価額に類似業種比準価額が反映されるようになり、一定の評価額の引下げとなる可能性はあります。



・上述の通り、C社株式(持株会社)の評価にあたっては、「非上場株式の相続税評価額(純資産価額)を計算する際、評価差額(相続税評価額-帳簿価額)に対する法人税額相当額(37%)を控除する」という規定を適用しています。
 ただしこの規定は、評価会社(C社)が所有する非上場株式(B社株式)の純資産価額の計算にあたっては適用されません。
 Aから見ると、B社株式を直接保有している場合はB社株式に37%控除の規定が適用されるのに対し、持株会社C社を通じて間接保有する場合はB社株式にこの規定は適用されないことになります(C社株式には当然に適用されます)。

→持株会社は、本当に事業承継対策となるのか?(4)に続く

 

 

 

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