vol.182(since 07/01/07〜) 

19/08/06

前回は、自己株式の「保有」について述べました。
そして保有を続けることに特にデメリットがないことを挙げたうえで、



そのため非上場会社の場合、金庫株を取得するとそのままにしておく、というのが一般的です。



と書きました。

今回は、保有している金庫株を処分、つまり売却した場合の取り扱いです。

ところで、金庫株を処分する目的とはなんでしょうか?
それは会社がキャッシュを手に入れること、つまり「資金調達」に尽きるでしょう。
しかもその原資を、返済が必要な「借入金」ではなく、株主からの払込である「自己資本」として調達することが可能なのです。
新株発行(増資)に比べると手続きも簡易で、財務や税務に与える影響も少ないと言えます。

では前回同様、留意点を「会社法」「会計」「税務」の視点から整理します。

1会社法 

自己株式の売却は、市場で行うことはできないため、「株主割当」「公募」「第三者割当のいずれかの手続きにより処分することになります。 

株主割当とは、株主に対してその持ち株比率に応じて均等に株式を割り当てることを言います。
また公募は不特定多数の者に対して株式の募集をすることを言います。 

これに対して第三者割当とは、特定の者(株主であるかないかを問いません)に対して株主を割り当てることを言います。 

例えば複数の株主のいる会社で、オーナー社長や後継者など「特定の者」に株主を割り当てる場合はこれに該当します。
非上場会社の場合、「第三者割当」のケースが多くなると思います。 



2会計 



前回の記事で、 



自己株式は、通常時価により取得します。そして貸借対照表上、自己株式の価額は取得価額により表示します。 



と書きました。 



これは自己株式「処分」の場合も同様です。処分価額は、処分時の時価により売却します。 



そうすると、取得価額と売却価額の差額が生じます。
この差額(自己株式処分差額)は、貸借対照表上その他資本剰余金の増減として処理します。  
事例を挙げましょう。

      資本金      10,000,000(払込金額1,000円/株×10,000株)    
      その他資本剰余金     0   
      自己株式    △1,000,000(取得価額1,000円/株× 1,000株) 

 この状況で、自己株式1000株を、1株2000円(時価)で処分します(計2,000,000円)。 
   自己株式処分差額は、2,000,000円−1,000,000円=1,000,000円(差益)となり、貸借対照表上の表示は以下のようになります。

     資本金           10,000,000   
     その他資本剰余金    1,000,000

3税務 

自己株式の処分は、税務上「資本等取引」に該当します(処分価額が「資本金等の額」の増加として取り扱われる)。 
よって自己株式を処分して処分差損益(取得価額と処分価額との差額)が生じたとしても、会社の損益に影響はありません。 

前回の記事では、「資本金等の額」の増減が税務に与える影響として、 

主なものは「寄附金の損金算入限度額」で、資本金等の額の減少=損金算入限度額の減少、となります。  

と書きましたが、処分の場合は逆に、資本金等の額の増加=損金算入限度額の増加、となります。 

また、これも前回書きましたが、資本金等の額≠資本金の額のため、法人税率や地方税均等割の判定への影響はありません。  

ところで、自己株式の処分は処分時の時価によること、また自己株式の処分は会社の損益に影響を与えない、と書きました。
そうすると、自己株式は「時価ではなく、いくらで売ってもよいのではないか?」との疑問が生じます。
しかし、会社が自己株式を時価より低い価額で特定の株主に売却した場合、その特定の株主等に課税関係が生じる場合があるので注意が必要です。


その解説は、次回のブログで。

→金庫株(6)へ続く

 

 

 

 

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