vol.179(since 07/01/07〜) 

19/05/10

前回は、

「なぜ自分で発行した株式を、わざわざ自分で保有する必要があるのでしょうか?」



としたうえで、



いくつか理由が考えられますが、同族会社で多いのが「オーナーの代わりに、会社が買い取る」というものです。」



と書きました。



次に考えられるのが、「後継者が相続した株式を、会社が買い取る」というものです。

具体的には、


・同族会社のオーナー社長が死亡し、後継者である長男が株式を相続した

・しかし株式の評価額が高額であるため相続税が高くなる

・長男には納税資金がなく、相続税が納税できない

・そこで資金に余力がある同族会社に、相続した株式を買い取ってもらう

というものです。


相続税は「現金一時納付」が原則です。
後継者は通常、オーナー社長の保有する同族会社株式の大半を相続することになりますが、価値の高い株式には多額の相続税が課されます。
そして、非上場株式は市場で換金できません。後継者は相続税の納税資金に窮することになります。



そこで会社に株式を買い取ってもらうわけですが、問題となるのが「売買価額」「税金」です。

前回述べた通り、発行法人に株式を売却する場合は

売買価額=原則的評価方式をベースに算定した時価
税金=資本金等の額に対応する部分を超える部分の金額は、みなし配当(総合課税)として売主に対し所得税が課される



ことになります。

しかしこの場合、「所得税が高額になる」という問題があります。


例えば、1株の時価1,000,000円、資本金等の額50,000円、取得価額50,000円の株式100株を、発行会社に売却した場合の通常の課税関係(他の所得、諸控除はないものと仮定)は、


収入金額 1,000,000円×100株                                                =100,000,000円
みなし配当(配当所得)の額=(1,000,000円−50,000円)×100株     =95,000,000円
所得税額 95,000,000円×45%-4,796,000円-5,750,000(配当控除)  =32,204,000円


となります。
更に、住民税を概ね所得の8%(配当控除後)とすると、この事例では収入金額の約40%は税金として支払わなければならず、手取り額は残額の約6000万円となってしまいます。


そこで、相続により取得した株式については特例が設けられています。



相続により取得した非上場株式を、その相続等のあった日の翌日から相続税申告書の提出期限の翌日以後3年(=死亡日から3年10か月)以内に、その発行会社に譲渡する場合には、みなし配当課税(総合課税)は行わず譲渡所得として課税(分離課税)することとされています。


上の事例にあてはめると、


収入金額 1,000,000円×100株         =100,000,000円
譲渡所得=1,000,000円×100株−50,000円×100株=95,000,000円
所得税額 95,000,000円×15.315%                    =14,549,200円
住民税額 95,000,000円×5%                            =  4,750,000円
となります。



特例の適用により、税金は収入金額の約20%、相続税の納税資金に充てられる金額は約8000万円となります。

また、上記期限内に相続財産を譲渡した場合は、相続税の取得費加算(=支払った相続税のうち一定額を、譲渡所得の計算上取得費として控除する)の適用が可能です。そうすると、譲渡所得税は更に低くなります。


昨年このブログで「事業承継税制」を特集しましたが、この税制を適用すれば、後継者がわざわざ会社に相続株式を売却して資金を得る必要はありません。
しかしこの税制が全ての事業承継に適用されるわけではなく、また適用がふさわしくないケースもあります。
金庫株を利用して後継者が納税資金を得るこの方法は、事業承継に当たっての有力な選択肢といえます。

 

 

 

→金庫株(3)に続く

 

 

 

 

 

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