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vol.178(since 07/01/07〜)
19/04/10
会社は、自分が発行した株式の一部を所有することができます。この株式のことを「自己株式」、別名「金庫株」と呼ばれています。その名の通り、自分で発行した株式を自分で保有し、金庫にしまっておく、というイメージです。
なぜ自分で発行した株式を、わざわざ自分で保有する必要があるのでしょうか?
いくつか理由が考えられますが、同族会社で多いのが「オーナーの代わりに、会社が買い取る」というものです。
具体的には、
・同族会社のオーナー社長が、他の株主から株式を買い取ろうとしている
・しかし株式の価額が高額で、社長に買い取り資金がない
・そこで資金に余力がある同族会社に、株式を買い取ってもらう
というケースです。
これとは別に「会社がオーナーに株式買取資金を貸し付ける」という方法があります。
しかし、会社がオーナー個人に多額の資金を貸し付けるのは財務上問題があるでしょう。特に会社が金融機関から融資を受けている場合は、金融機関は「融資した資金が目的外に流用されている」と捉えることになります。
そこで、会社に直接買い取ってもらうわけです。
そうすると、「株式を、いくらで買い取るか?」という問題が生じます。
以前の記事で、
・自社株式を売買するときの価額は、「時価」を用いる
・譲渡の場合の自社株式の価額=時価の算定は、相続税評価額を計算する方法を準用する
と書きました。また、
税務上の時価は、
同族株主 →原則的評価方式
同族株主以外→配当還元方式
により評価します。
と書きました。
配当還元価額は一般的に低額となります。そのため株主が同族株主以外の場合、売買価額が低額であっても税務上の問題は基本的には生じません。
しかし株主からすると、税務上の時価は低額であったとしても、価値のある株式を安い価額で売りたくはないはずです。
そのため実務上は、原則的評価方式による価額を参考にして売買価額を決定することになります。
ではこの場合、誰に、どのような税金が課されることになるでしょうか?
課税関係は以下のようになります。
・売主(株主)
「資本金等の額に対応する部分を超える部分」の金額は、みなし配当(総合課税)として所得税が課される
・買主(同族会社)
課税関係なし(資本等取引と考えられる)
・他の株主
売買価額が「著しく低い価額」の場合、株式の価値の増加した部分に対し贈与税が課される
売主からすると、
・個人(オーナー)に譲渡した場合
譲渡益に対して所得税が課される(分離課税・15.315%)
・発行法人に譲渡した場合
みなし配当として所得税が課される(総合課税・5〜45%)
となり、譲渡する相手によって、また譲渡金額や売主の所得の多寡によって、納税額が異なることになります。
また、「著しく低い価額」で譲渡した場合、「他の株主」に対して「贈与税」が課税される、というロジックは、極めて分かりにくいと思います。
例えば、株主が発行会社に対し、時価100円の株式を10円(著しく低い価額とする)で譲渡したとします。そうすると、会社はその株主から90円(100円−10円)の利益を受けたことになります。
会社からすると、受けた利益(90円)分の自己資本が増加したことになります。
それは間接的に「他の株主」の所有する株式の価値が増加することを意味します(実際に、譲渡後の株価は譲渡前の株価に比べて上昇します)。
この株価が増加した部分の金額を、「譲渡株主」から「他の株主=既存株主」への贈与と捉え、既存株主に贈与税を課す、というわけです。
オーナー社長に株式の買い取り資金がないような場合、「金庫株」は有効な手段となります。しかし売買価額によっては思わぬ課税や、不利な課税がされることもあります。
事前のシミュレーションが大切です。
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