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19/03/05

上場企業の多くは「従業員持株会」という組織を作っています。
その一般的な形態は、

・従業員は持株会に加入し、持株会に一定の金銭を拠出する

持株会は、企業の自社株式を一定数取得する

というものです。
従業員は、持株会を通じて間接的に株式を保有することになります(税務上は、直接保有しているのと同じ取扱いとなる) 。

これにより従業員は、株式の配当を受けられます。また将来株価が上昇すれば、株式を売却することによる利益が得られます。
企業としては、持株会という安定株主が得られ、従業員のモチベーションアップに役立ちます。

この従業員持株会を、非上場会社が導入するケースがあります。
その形態や目的は上場企業の場合と同じですが、非上場会社の場合、これらのメリットは上場企業に比べて少ないと思われます。
非上場会社が従業員持株会制度を導入するメリットは、主にオーナーの「相続税対策」にあります。

つまり、

オーナーの所有する自社株式を、少数株主である従業員持株会に低額(配当還元価額)で譲渡し、自己の保有する株式数を減少させる

というものです。

以前の記事で、

配当還元方式とは、おおまかにいうと少数株主の所有する非上場株式に対して適用される評価方法です。少数株主は会社に対する支配権がないため、会社の資産内容ではなく配当額を基準にして評価する、との考え方によります。
中小企業で毎年多額の配当を行っている会社は少ないので、その評価額は原則的評価方式による評価額に比べて低くなるのが一般的です。

と書きました。

つまり、オーナーが所有していると「原則的評価方式」という高い評価額で評価されてしまう自社株式を、「配当還元方式」という低い評価額で従業員持株会に譲渡することにより、オーナーの所有する財産の価額を減少させる、というものです。

この方法により自社株式の譲渡を行った場合、税務上はどのように取り扱われるのでしょうか?

以前の記事で、

時価より「著しく低い価額」で譲渡を行った場合、時価と実際の対価との差額は贈与があったものとされ、買主に贈与税が課されます。

と書きました。

同族株主等から少数株主へ自社株式を譲渡する場合、配当還元価額は「著しく低い価額」にあたらないので、買主である少数株主に贈与税は課されません。
また個人間の売買である限り、売主である同族株主等にみなし譲渡(時価で売ったものとみなして譲渡所得の計算をする規定)の適用もありません。

ということで、税務上の問題はなさそうです。

では、他にどのような注意点があるのでしょうか?

従業員持株会は、オーナーからすると「他人=第三者」です。オーナーとの関係が良好なときは問題ありませんが、例えば経営状況の悪化などの理由で従業員との関係が悪くなることも考えられます。
従業員持株会は議決権を有しているので、経営に一定の影響を与える可能性があります(従業員持株会に発行する株式を無議決権株式にすればこの問題はクリアされますが、株主である以上影響はゼロとは言えません)。

また、従業員持株会制度を導入する場合に最も気を付けなければならないの会員規約の内容です。
株式の散逸を防ぐため、入会者は会社の従業員とすること。また在職中の他人への譲渡を禁止し、退職時には退会して株式を手放す仕組みを作る必要があります。

そうすると、退会時に株式を誰が、いくらで買い取るか?という問題が生じます。
一般的には、持株会を通じて他の従業員が買い取ることになりますが、その場合の税務上の価額は配当還元方式により評価します。
しかしそれができない場合、オーナーが買い戻す可能性もあります。そうすると、上記と異なり税務上の価額は原則的評価方式による価額がベースとなるので、配当還元方式による価額で買い戻した場合はオーナーに贈与税の課税関係が生じます。

従業員持株会によっては、会員規約で売買価額を固定するケースもあります。この場合、上記の課税関係に十分注意する必要があります。

従業員持株会に自社株式を所有させることは「自社株式の分散」を意味します。一度他人が所有した株式を、オーナー一族が再び集めるのは容易ではありません。同族会社が従業員持株会を導入する場合は、オーナー側のメリットだけではなく従業員側のメリットが明確であること、会員規約を作成し厳格に管理運営すること、が大前提と考えます。

→カテゴリ:実務編・自社株式

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