vol.163(since 07/01/07〜) 

18/01/19

以前の記事で、役員の退任及び役員退職慰労金の支給について、

一口に「退任」と言っても、退いた先代が、その後会社でどのような立場に就き、どの程度経営に関与するかにより、退任後の状況が異なってきます。
パターンとしては、
 ①代表取締役及び取締役を退任し、完全に会社を退職する
 ②代表取締役及び取締役を退任し、非常勤の「相談役」「顧問」になる 
 ③代表取締役は退任するが、代表権のない(平)取締役に留まる
が挙げられます。
 そして退いた先代には、退任に併せて「役員退任慰労金」を支給するのが一般的です。

と書きました。

さて、この退任のパターンですが、①②は代表取締役退任と同時に取締役を退任しているのに対して、③は平取締役に留まっています。


ここで問題になるのが、役員退職金の支給です。
いうまでもなく、退職金は「退職」を原因として支給します。役員の「退職」とは、取締役や監査役であった者がその地位を退くことをいい、登記を伴うことになります(①②のパターン)。


これに対し、代表取締役は退任するが引き続き取締役にとどまる、というパターン(③のケース)の場合、登記上取締役としての地位に変更はないので、取締役を「退職」したことにはなりません。


役員退職金を支給するにあたって、①②のパターンは、役員を退任したことに伴い退職金を支給するのだから問題はありません。しかし③のパターンは、取締役を退任していないのだから退職金を支給することはできないのではないか、との疑問が生じます。


中小企業で、前社長が代表取締役を退任後、しばらくの間平取締役に留まる、というのはよくある話です。中小企業の場合、社長=会社です。前社長が退任と同時に完全引退するというのでは、取引先や金融機関に不安を与え、退任後の会社の経営に支障をきたすかもしれません。そこで代表取締役退任後も、「会長」等の名称でしばらくの間平取締役に留まる、というのは一般的に行われています。


このように、同じ役員の地位にありながら、その職務や責任が大きく変わることを「分掌変更」といいます。そして代表取締役が、代表を辞して平取締役になり、以後日常業務に関与しなくなるような場合は、この「分掌変更」に該当します。


そうすると、「分掌変更」により役員の職務や責任が大きく変更するような場合は、実質的には役員を退職したのと同様の事情にあると考えられます。中小企業では、この「分掌変更」を原因として役員退職金を支給するケースがしばしば見られます。


仮に①②のパターンを「完全退職」、③のパターンを「みなし退職」と呼びます。どちらのケースでも、役員退職金を支給することは慣行として行われています。


ただし、「みなし退職した役員に対して役員退職金を支給するためには絶対的な条件があります。まず、役員退職慰労金規程に、「みなし退職」した場合に役員退職金を支給することができる旨の支給条項が定められていること。これがなければそもそも支給する根拠がありません。

次に、みなし退職」した後は会社の経営に関与しないこと。分掌変更は「実質的な退職」なので、単に代表の登記のみを抹消しただけで事実上の経営権は変わらない、というのでは退職したことにはなりません。


このみなし退職」を原因として役員退職金を支給した結果、課税庁側が「事実上退職していない」などとして役員退職金を損金として認めず、裁判にまでもつれ込むケースが多々あります。役員退職金は、その支給額が多額になるので税務調査の際しばしば論点になりますが、「みなし退職」の場合必ずその実態を確認されることになるでしょう。

役員退職金を支給する際は、税理士等の専門家のアドバイスを得ながら慎重に検討することをお勧めします。

→役員退職金の税務(2)に続く

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