vol.138(since 07/01/07〜)
15/12/09
「国外財産調書」「国外転出時課税」「国外居住親族の扶養控除」と続いた海外シリーズ、まだまだ続きます。
今回は消費税、いわゆる「リバースチャージ方式」の話です。
国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について(国内事業者の皆さまへ)
(国税庁HP)
消費税は、基本的に「国内取引」に対して課税され、「国外取引」には課税されません。
では、「国内取引」と「国外取引」の線引きはどこにあるかというと、取引の内容により個別に定められています。
例えば、貴社がある会社からサービス(=役務)の提供を受けて対価を支払う場合、その「サービス提供をする者」の事務所の所在地が
国内にあれば 国内取引=課税対象
国外にあれば 国外取引=課税対象外
となります。
今回の改正のポイントは、
①サービス(=役務)の提供のうち、「電気通信利用サービス(=電子書籍・音楽・映像などのデジタルコンテンツの配信や、クラウド利用等のサービス)の提供」を受けた場合、
②その取引が国内か国外かの判定は、「サービスの提供を受ける者の住所等」による
とされたことにあります。
例えば、貴社(国内事業者)が、facebook(国外事業者)に広告料を支払いネット広告を掲載した場合、その取引は消費税法上
改正前:国外取引=課税対象外
改正後:国内取引=課税対象
となってしまったのです
さらに、「電気通信利用サービス(=役務)の提供」は、
・事業者向けのもの
・消費者向けのもの
に区分され、
・事業者向けのもの(=特定課税仕入れ)については、消費税の課税対象として申告が必要となります。
これがとてもわかりにくいのですが、仮に上記のfacebookに対するネット広告料が10万円とすると、10万円を課税標準額に加算すると同時に、同額(10万円)を仕入税額控除に加算して申告するのです(これを「リバースチャージ方式」と言います)。
つまり、本来は国外事業者であるfacebookが支払うべき消費税を、facebookに代わって支払う、という理屈になります。
この金額は仕入税額控除の対象となるので、納税額は増加しないと思われるかもしれませんが、全額控除できるわけではありません。
なお、この規定が適用されるのは、「一般課税で、課税売上割合が95%未満の事業者」に限られます。つまり、簡易課税適用者や、免税事業者は適用外です。
次に、「電気通信利用サービス(=役務)の提供」のうち「消費者向けのもの」については、国外事業者に申告納税義務を課すと同時に、支払側は当分の間、仕入税額控除ができないこととされています。
例えば、amazonによる電子書籍の販売は、改正後は「国内取引」に該当し、かつ「消費者向けのもの」であることから、リバースチャージの適用はなく、仕入税額控除が可能、とも思われるのですが、これができないのです。
ただし、サービス提供者が「登録国外事業者」である場合は、仕入税額控除が可能とされています。
上記事例では、amazonが「登録国外事業者」であるかどうかを確認する必要があるわけです。
→登録国外事業者名簿 ※平成27年12月31日現在のもの
なお、この改正は平成27年10月1日以後行う取引からすでに適用されています。
この改正は、国外事業者を通じたデジタルコンテンツの配信や、クラウド利用等の取引が近年増大していることに伴い、この取引に消費税が課されていないことに対応したもの、とされています。
貴社がインターネットを利用した取引をする際、相手が「国外事業者」であるか「国内事業者」であるかは殆んど意識しないと思います。ところがこの改正により、貴社の消費税申告に思わぬ影響を及ぼす可能性があるのです。まずは貴社の取引のうちに「電気通信利用サービス」があるかどうか、を確認することから始めましょう。
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