vol.194(since 07/01/07〜) 

20/08/12

前回まで8回にわたって持株会社は、本当に事業承継対策となるのか?」というテーマで、主要な3つのケース

① 持株会社を設立し、現事業会社の株式を借入金により買い取る

② 株式移転

③ 新設会社分割(分社型分割)

を挙げ、それぞれのメリット、デメリットを述べてきました。
ここでは最後に、持株会社は、本当に事業承継対策となるのか?」に対する結論を示したいと思います。

答えは「ケースバイケース」です。
事業承継対策になることもあるし、ならないこともある。
つまりこれは「結果論」でしかない、ということです。

「それを言っちゃあおしまいよ」とお思いでしょうが、事実なのですから仕方ありません。
設定した前提条件がおかしいとか、前提条件が違っていたらそのような結果にはならないとかetc.....いう意見もあると思います。
でも前提条件を設定しなければ話が進みません。また条件によって結果が異なるから「ケースバイケース」なのです。

そもそも僕はなぜ、8回にも渡って、こんなしんどいテーマについて触れてきたのか?
その動機は第1回目で書きました。

「ところで近年、この持株会社方式が中小企業でも導入される例が見られますが、その主目的は上場企業とは全く異なるものです。それはオーナーの相続税対策です。持株会社方式にすると、オーナーが所有する自社株式の評価額が減少する、という理由から、一部の大手税理士法人が、金融機関等を通じて中小企業に対し積極的に勧めている手法です。では持株会社方式にすると、本当に自社株式の評価額は下がるのでしょうか?次回以降検証してみましょう。」



もっと直接的な理由を、別の回に記しました。

「蛇足ですが、このスキーム提案の多くは金融機関が融資先企業の情報を大手税理士法人に提供することにより行われているようです。両者がどのような契約を締結しているかは知りませんが、金融機関及び大手税理士法人それぞれに営業上のメリットがあっての提案であることは当然でしょう(そもそも金融機関が大手税理士法人に企業情報を提供することに関して、融資先企業に対するコンプライアンス上の問題はないのでしょうか)。」



これを見ればお分かりだと思いますが、僕はこういった金融機関や大手税理士法人の営業手法に懐疑的です。
彼らの提案は目新しく、今まで顧問税理士からこんな話を聞いたことがないであろう経営者にとってはとても魅力的に映ります。
しかし僕の目から見ると、彼らの提案の主目的はあくまでも「節税」であり、そのスキームが今後の企業の経営に与える影響を軽視(あるいは、無視)しているケースが多い、と言わざるを得ません。
その典型がこの「持株会社スキーム」です。



持株会社の意義は、第1回で書きました。

「この持株会社(ホールディング・カンパニー)方式は、多くの上場企業で採用されています。その目的は、複数の事業を事業会社毎に分離して採算及び経営責任を明確化し、事業のスクラップ&ビルドを迅速に行うことにあります。」



つまり持株会社方式を採用する企業は、一定程度の規模があり、複数の事業を行っていて、かつ財務上の体力があること、が前提となります。だからこそ、持株会社方式にするためのコストが相対的に少なく、また失敗したときのダメージも限定的で済むのです。
このスキームを小企業のオーナーの相続対策を主目的として導入するのは、コストや失敗時のリスクを考えると見合わない。これが僕の基本的な考え方です。



もちろん、クライアントから依頼があれば最善手を検討します。
しかしクライアントには、各手法で述べてきたメリットデメリットに加え、以下のリスクを伝えたうえで実行の可否を決めて頂く、ということになります。


1 相続税法64条による否認リスク



相続税法には、「同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合にはその株主等の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長はその行為又は計算にかかわらず、その認めるところにより、課税価格を計算することができる。」という規定があります。
これは課税庁からすると何でもできてしまう「伝家の宝刀」であることから、実際にこの規定が使われることは滅多にない、と言われてきました。
しかし近年、あまりにも行き過ぎた節税策に対して、この規定を適用してスキーム自体を否認するケースが増えています。
その行為が単に節税を目的として行われたもので、経済的合理性が乏しいと判断された場合、この規定を用いて否認されるリスクは十分にあります。



2 税法改正リスク



法律はいつでも改正される可能性があります。特に税制改正は近年頻繁に行われていて、節税スキームが生み出されるとそれを封じるための改正が行われる、といういたちごっこが続いています。
折角コストと時間をかけてスキームを構築しても、税制改正によりそれが水泡に帰すこともあり得ます。



3 相続は、いつ起こるかわからない

シミュレーションではいずれも持株会社設立後直ぐに相続が発生した場合」持株会社設立後10年後に相続が発生した場合」の効果を比較しました。そして相続発生時期によって効果は全く異なることをお伝えしました。
リスクといえば、これが最大のリスクでしょう(もっとも、「だから早く対策をとらないといけない」という考えもあるのでしょうが・・・・・)。

「持株会社は、本当に事業承継対策になるのか?」は、これで終了します。
金融機関や大手税理士法人から持株会社スキームを提案されている方、どうぞお気軽にご相談ください。

→カテゴリ:実務編・持株会社

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