自社株式:投資育成会社から出資を受けると、株価が下がる???

vol.185(since 07/01/07〜) 

19/11/08



経営者の皆様は、中小企業投資育成株式会社をご存知ですか?



東京中小企業投資育成株式会社→https://www.sbic.co.jp/



その名の通り、中小企業に投資(具体的には第三者割当増資による出資)し、株主としてその企業の経営安定・体質強化をサポートすることを目的としています。
中小企業投資育成株式会社法に基づき、地方公共団体等が出資する公的機関です。



この投資会社から出資を受けるメリットは、次の通りです。



・資金調達の際、借入金(負債)ではなく資本金(純資産)として取り扱うので、自己資本が充実する。

・増資で得た資金は、無担保・無保証の長期安定資金として活用できる。



他方デメリットとして考えられるのは、投資会社から出資を受けることによりオーナーの持株割合が低下し、オーナーの株主としての議決権=発言力が低下してしまうことです。つまり、新たな第三者株主がオーナーの経営方針に異を唱えることにより、今まで通りの機動的な経営ができなくなってしまうのではないか、という点です。



この点に関し、投資会社は



・経営の自主性を尊重しており、役員の派遣等も行いません。

・長期安定的な与党株主となり、他方、社外株主等の持ち株比率は下がり、結果的に現在の経営者の経営権が強化されます。



などとしていて、基本的にはオーナー側の立場で会社に携わるようです。



なお投資会社からの会社に対する要求は、毎期安定的な配当を期待していること、また定時株主総会への出席や決算・議案の事前説明が求められます。



さて、本題はここからです。
投資会社が引き受ける株式の価額は、いくらになるのでしょうか?



以前の記事で書いたとおり、第三者割当により時価と異なる価額で株式を発行した場合、その第三者や既存株主に対し贈与税の課税関係が生じることがあります(記事では自己株式の処分価額について書きましたが、増資の場合も同様です)。
つまり第三者が株式を引き受ける際の株価は、税務上の時価(実務上、相続税評価額を準用して計算した価額)となります。



ところが投資会社の引受株価は、同社HPによると、



「投資育成がお引き受けする株式の価額は、国税庁と中小企業庁が合意した算式(1株当たり予想利益をもとにした、収益還元方式)により算定します。この株価での投資育成による引き受けは、税務上も適正な時価によるものとして取り扱われることになっています。」



となっていて、一般的に計算する方法とは異なる方法で計算することが認められています。
(国税庁ホームページ個別通達→https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/731120/01.htm



そうすると、仮にこの方法により計算した株価が税務上の時価(相続税評価額を準用して計算した価額)より低い場合、この会社から増資を受けることにより、自社株式の評価額が低下する、ということが起こり得るのです(逆の場合、上がることもあります)。



その場合、オーナーの所有する自社株式の評価額が減少する、ということになります。



投資会社から出資を受ける目的は会社の資本政策にあり、また投資会社が出資するにあたっては審査があります。従って、オーナーの相続対策のために投資会社を利用する、ということは通常考えられません。
しかしこの通達が有効である限り、結果として自社株式の評価額が下がるケースはあり得ます。今後の会社経営や事業承継を考える際、このような制度があるということは頭に入れておいてよいと思います。




→カテゴリ:実務編・自社株式

 

 

 

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