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vol.249(since07/01/07~)
26/09/01NEW!
以前の記事「相続税:遺産分割前に相続人が死亡してしまったら?」で、
「相続の遺産分割が完了する前にその相続人が亡くなってしまうことを、一般的に「数次相続」といいます」とし、
「数次相続」の状態となった場合、
・第1次相続の遺産分割に、本来相続人ではなかった第2次相続の相続人が参加することになる
・第1次相続の相続税の申告期限は、第1次相続の本来の相続人と第2次相続の相続人とでは異なる
と書きました。
またこれに続く記事「相続税:遺産分割前に相続人が死亡してしまったら?~特例は適用可能?~」で
死亡した配偶者の相続人と第1次相続の相続人との間で遺産分割が行われ、死亡した配偶者自身が取得したものとして確定させた財産がある場合、その財産は分割により死亡した配偶者が取得したものとして取り扱うことができる、とされています。
と書きました。
最近当事務所への相続に関する相談で、この「数次相続」のパターンが増えています。
具体的には、父A、母B、長男C、長女Dの家族関係で、Aが死亡→その数か月後Bが死亡、というケースです。
以下のケーススタディでは、
A=令和8年1月1日死亡(1次相続)
B=令和8年5月1日死亡(2次相続)
とし、B死亡時にはAの遺産分割協議は終了していないものとします。
この場合、
1次相続の相続人 亡B(=その相続人C、D)、C、D
2次相続の相続人 C、D
となり、現実的には1次・2次共C、Dになります。
さて、1次相続、2次相続それぞれについて、CとDは財産目録を作成し、遺産分割及び相続税の計算を行うわけですが、ここで疑問が生じます。
「A、Bの財産はいずれにしろC、Dのものになるのだから、1次相続でわざわざ亡Bに相続させる必要はないのではないか?」
つまり
1次相続→Aの財産はC、Dで相続(亡Bに承継させない)
2次相続→Bの財産はC、Dで相続
とすればよいという考え方です。
遺産分割の手間という点では、この考え方は妥当です。
仮にAの不動産を亡Bに相続させる場合、遺産分割協議書に亡Bが取得したことを記載し、不動産登記簿に亡Bに所有権が移転したことを記録した後、Bの相続で最終取得者であるC又はDへの所有権移転が記録されます。であればAの相続でC又はDが直接取得させたほうが手間がかかりません。
しかし、「1次相続と2次相続でCとDが支払う相続税額の合計額」という観点で見ると、この分割方法が必ずしも最善とは限りません。
なぜなら「1次相続で亡Bに財産を取得させたほうが、CとDが支払う相続税額の合計額が少なくなる」ケースがあるからです(「常に少なくなる」わけではありません)。
以下のケースで確認しましょう。
1次相続時のAの財産の課税価格5400万円、2次相続時のBの財産の課税価格1500万円とします。
①1次相続で亡BにAの財産を取得させず、CとDで各2分の1ずつ取得した場合
1次相続の税額 60万円
(課税価格5400万円ー基礎控除4800万円=600万円、CDの税率10%)
2次相続の税額 0万円
(課税価格1500万円<基礎控除4200万円 ∴0円)
相続税額計 60万円
②1次相続を法定相続分で取得(亡B2分の1、CとD各4分の1)した場合
1次相続の税額 30万円
(課税価格5400万円ー基礎控除4800万円=600万円、CDの税率10%※1)
2次相続の税額 0万円
(課税価格4200万円※2ー基礎控除4200万円=0円)
相続税額計 30万円
※1 亡Bに取得させた財産2700万円については配偶者の税額軽減の特例が適用され、亡Bの相続税額は0円になります。その結果相続税額は、相続税の総額60万円×C、Dの按分割合各0.25=各15万円×2=30万円となります。
※2 亡Bの財産は固有財産1500万円+Aから相続により取得した財産2700万円=4200万円となりますが、基礎控除の範囲内のため税額は発生しません。
結果、①>②となりました。
このケースでのポイントは「配偶者の税額軽減の特例」と「配偶者の固有財産の多寡」にあります。
配偶者の取得した正味の遺産額のうち、1億6000万円(又は法定相続分のいずれか多い金額)までは相続税は生じません。この税額軽減の規定は、遺産分割前に配偶者が死亡した場合であっても、遺産分割において死亡した配偶者自身が取得したものとして確定させた財産がある場合には同様に取り扱うとされています(過去の記事参照)。
また2次相続では、「1次相続により配偶者が相続した財産+配偶者固有の財産」が相続税の課税対象となります。つまり1次相続で配偶者にいくら財産を取得させたらよいかを決定する要素として、配偶者の固有財産の多寡が影響することになります。
上記のケースでは、①は1次相続で配偶者の税額軽減の特例の適用がないのに対し、②はそれを適用して配偶者に財産の一部を取得させたところ2次相続は基礎控除の範囲内であったため、1次2次の相続税額合計は②の方が少なかった、ということになります。
では、1次相続でAの財産のすべてを亡Bに取得させた場合はどうでしょうか?
③1次相続で亡BにAの財産をすべて取得させた場合
1次相続の税額 0万円
(課税価格5400万円ー基礎控除4800万円=600万円、CDの取得財産なし)
2次相続の税額 305万円
(課税価格6900万円ー基礎控除4200万円=2700万円、CDの税率15%)
相続税額計 305万円
Aの正味の遺産額が1億6000万円以下の場合、すべて亡Bに取得させることで相続人全員の相続税額は0円となり、1次相続のみ考慮するとこの分割方法が最も相続税が少なくなります。
しかしその結果、2次相続でCとDはABの財産合計額に対し相続税が課税されることになります。そして累進税率の適用により①②よりも合計相続税額が多額になってしまいました。
なお今回の「1次相続税額だけでなく、2次相続税額を考慮した遺産分割が必要です!」というテーマは、数次相続に限った話ではありません。Aの相続の分割協議がBの元気なうちに終わったとしても、近いうちにBの相続の発生が見込まれるような場合はAB併せて相続税のシミュレーションを行い、それをAの遺産分割に反映させることが大事です。
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