vol.146(since 07/01/07〜)
16/08/15
皆様ご承知の通り、消費税の増税(8%→10%)及び軽減税率の導入は先送りとなりました。
その一方で、ひっそりと改正になった項目があります。
高額特定資産を取得した場合の中小事業者に対する特例措置の適用関係の見直し
(国税庁HP「消費税法改正のお知らせ」)
簡単に言うと(といっても十分複雑ですが・・・・・)、
・事業者が、消費税の一般課税(=免税でも、簡易課税でもない)により申告をする課税期間中に、
・高額特定資産(=一式1000万円以上の固定資産又は棚卸資産)を購入し、仕入税額控除を行った場合、
・その課税期間後の2年間(原則として、翌期と翌々期)は、一般課税により申告しなければならない(=免税及び簡易課税は選択できない)
・平成28年4月1日以後に取得した高額特定資産より適用
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
・不動産賃貸業(事業用)で、毎年課税売上が2000万円
・消費税は、例年簡易課税を選択
・例年の消費税年税額は、2000万円×8%×(1−みなし仕入率0.4)=96万円
・当年度に、5000万円で事業用賃貸建物(=高額特定資産)を取得(これにより、翌年度以後の課税売上は年1000万円増加するものとする)
・当年度に建物取得に係る消費税の仕入税額控除を受けるため、前年度に「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出
・課税売上割合は100%、建物取得以外の課税仕入は便宜上0円とする
そうすると、当年度の消費税は、
・売上に係る消費税 2000万円×8%=160万円
・仕入に係る消費税 5000万円×8%=400万円
・差引 160万円ー400万円=△240万円(還付)
ここまでは改正前と同様ですが、改正後は翌年度と翌々年度の計算方法が一般課税に限定されます。
(翌年度)
・売上に係る消費税 3000万円×8%=240万円
・仕入に係る消費税 0万円
・差引 240万円(納付)
(翌々年度)
240万円(A+1事業年度と同じ)
翌々年度中に「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、翌々々年度以後は簡易課税により計算できることとなります。
(翌々々年度)
3000万円×8%×(1−0.4)=144万円
改正前は、当年度中に「簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、翌年度以後は簡易課税により計算することができました。
こうなると、わざわざ当年度に簡易課税を取りやめて還付を受けるメリットがあるのかどうか、慎重な判断が必要になります。
日本の消費税法上、「事業者免税点制度」と「簡易課税制度」があるために、これを悪用する事業者が後を絶ちません。この「法の穴」を埋める改正を国が実施すると、また新しい穴を探す事業者が現れる・・・・・といったイタチごっこが続いています。
その結果、消費税法はきわめて複雑になってしまいました。一般の納税者にはとても理解できないような条項だらけです。
もともとこれらの制度(「免税点制度」や「簡易課税制度」)は、平成元年の消費税導入時に、中小企業者の事務負担軽減を目的に定められたものです。
消費税導入後28年経ちました。中小企業の皆様のお叱りを受けることを承知で言えば、もうその役目は十分に果たしたのではないでしょうか?
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